映画「ハニーランド〜永遠の谷」を観ました。圧倒的な作品の力に驚嘆しました。
広大な茶色の野が映し出され、そこを歩く人が初めは点として、だんだん緑色のスカーフと黄色のブラウスと茶色のスカートを身に纏った女性として、登場します。彼女が険しく細い道を登って行き、その山の岩にかぶさった石の蓋を開けると、ブーンとこの作品のもう一人の主人公である蜂たちが現れます。この始めのシーンから一気に映画に引き込まれまるでそこにいるような気持ちで彼女の暮らしに入り込んで行きました。
彼女が暮らすのは、北マケドニア(と聞いてどこかわからなかったです。世界史で、マケドニア王国ってあったよな〜、相当古い時代だよな〜という程度。⇨調べてみると、東ヨーロッパ・バルカン半島にあって、南はギリシャ、東はブルガリア、西はアルバニア、北はセルビアとコソボ、に囲まれた内陸国、元ユーゴスラビア連邦の構成国の一つ、ということです)。
北マケドニアで、地域のネイチャー・ドキュメンタリーを撮影しようというプロジェクトプランを持っていた撮影隊は、水道も電気もない人里離れた村で母の介護をしながら暮らす彼女=ハティツェ・ムラトヴァと出会い、プランを変更して、彼女の暮らしを追うことになったそうです。
ひっそりと暮らす彼女の家の隣に、突然キャンピングカーがやってきます。子沢山の牛飼の一家。子どもたちはハティツェになつき、彼女も孤独を癒されます。ハティツェは、彼らに養蜂を教えましたが、仲買人にそそのかされた父親は、ハティツェが繰り返し言っていた「蜂蜜の半分は自分に、半分は蜂に残す」という掟を破り、悲劇的な結果を招きます。
ハティツェは、養蜂家としての知恵を尽くします。彼女の教えは少なくとも子どもたちには伝わったに違いありません。かなしくも美しいラストシーンには再び蜂たちが登場します。私たちは「半分は自分に、半分は自然に残す」という教えを実行するべきなのだと、実感し、同時に、ハティツェのこれからの暮らしがとても心配になりました。
http://honeyland.onlyhearts.co.jp/
三年間の取材の中で起きた本当の物語。この映画の監督の一人タマラ・コテフスカはまだ20代の女性です。ハティツェは子を持ちませんでしたが、タマラによってその生き様を残すことができて幸せだったと思います。タマラの今後の活躍もとても楽しみです。
ぜひ多くの人にこの映画を見ていただきたいと思います。
2020.9.22 今日はきっと三日月が綺麗に見えます。