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ラジオ番組「飛ぶ教室」〜カミュ「ペスト」

NHKのラジオ番組 高橋源一郎の「飛ぶ教室」4月24日から始まりました。金曜日夜21時5分から50分間の教室です。小野文恵アナウンサーが伴走者です。

らじるらじるから聴き逃し番組を選んで一ヶ月と一週間くらいは聞くことが出来ますよ。0時間目は3月20日(金)に配信されました。4月30日(木)午後10時55分までです。

「飛ぶ教室」の名前の由来。そしてテーマ曲の紹介。それから、前半は「秘密の本棚」のコーナー、高橋さんが選ぶ本を巡りお話されます。後半はゲストを迎えて源一郎さんも生徒として聞き役。

今回の「秘密の本棚」。アルベール・カミュの「ペスト」(1947年)でした。新型コロナウィルスで混乱している今、売上急増中の話題の本。テレビの「100分で名著」でも紹介されたところなので、お読みになった方も多いかもしれません。作者のカミュは、1957年44歳でノーベル文学賞を受賞しました。

フランス領アルジェリアオラン市で起きたペスト流行(架空のお話です)の中の人々の様子を描いたこの作品は、1945年に終わった第二次世界大戦のことを描いたとも言われています。

登場人物たちがペスト流行にどう立ち向かって行くかが描かれています。ベルナード・リューという医師はある日ネズミの死骸を見つけ、そのあとペストが流行します。医師会が開かれますがまだ決まったわけではない、と、ペスト流行宣言は見送られます。孤軍奮闘頑張る医師リューはその中で謎の風来坊タルーと出会います。タルーはリューに尋ねます、なぜそんなに頑張るのか?と。リューは「僕は人が死ぬことに慣れない」。そしてペストについて「際限なく続く敗北です」と語りながら、しかし彼は闘い続けます。タルーはリューを助けます。タルーは市の機能が崩壊しそうになった時に民間の防衛隊を作ります。命懸けのボランティアです。

そんな中、タルーは「誰でもめいめい自分の内にペストを持っているのだ」「他の者に病毒を吹きかけているのだ」と言います。この言葉は、今の私たちに深く響きます。今コロナウィルスに向かっている私たちの中の心はうっかりすると人をせめる方向にばかり進んでいきます。

ペストは終息に向かうのですが、タルーはその時にペストにかかって亡くなります。リューは「タルーは勝負に負けたのであった」と言います。しかし、リユーは「ペストを知ったこと、友情を知ったこと、愛情を知ったこと、そしていつの日かそれらを思い出すことを得た」と考えます。つまり「知識と記憶」をかち得たのだと考えるのです。

つまり、作者は、人間を陥れる不幸(例えば戦争、例えば感染症)を経験した、その経験を忘れないことが、とても大事なことなのだと、私たちに伝えています。また不幸はやってくると預言するのです。

後半に登場する「今日の先生」は、ヤマザキマリさんです。17歳でイタリアに渡り、油絵を学び、30歳で漫画家となり、テルマエロマエ、で一躍有名になった方です。

イタリアのコロナ禍は、3月末の時点で世界1位となる大変な状態になりました。家族がバラバラになってしまったマリさんは、この時点での日本とイタリアの緊張感の違いを語ります。呑気な日本の状況に対して「メディアに騙されるな」とイタリアにいるマリさんの夫君は言います。「命さえあればやり直せる」

わずか三週間前の日本は呑気だったなあ、と思い返します。私も美しい桜を見ながら会食を楽しんでいました。

マリさんは、「ペスト」の、終息したと思った時にお祭り騒ぎになる、その記述に言及します。人でごった返した桜の美しい渋谷を通ったマリさんは「この差異は一体なんなのだろう」と語ります。イタリアの悲惨な状況と日本の呑気さとの間で揺れ動いているマリさんの気持ち、今の日本の状況を知って聞くと、実感として感じられます。

まとめに入る・・・時間が短いと感じます。

マリ先生「記録を読んでおくことはヒントを得られる。よく考えなきゃいけない。メディアではなく本から得るものの方が質感がある」

まだ喋り終わっていないのに、終わってしまいました。もっと聴きたかったです。

皆さんも聴いてみてください。             2020.4.25