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本 かぐや姫の結婚 日記が語る平安姫君の縁談事情

「殴り合う貴族たち」がとても面白かったので、同じ著者の本の中から題名に惹かれて「かぐや姫の結婚」を読みました。期待通りとても面白い内容でした。

平安時代の貴族たちの日記などの資料を紐解くと、当時「かぐや姫」と称せられていた藤原実資の娘「千古(ちふる)」の生涯が浮かび上がります。50年以上記し続けた実資の日記は「小右記」として一級資料となっており、社会科の教科書にも載っていますね。藤原道長と対抗し得る人物として語られる実資ですが、年老いてできたこの娘にメロメロで、彼女は母の身分がそれほど高くないのですが、手中の玉として育てられます。彼の娘の中で唯一20歳を超えて生きた娘でもありました。

その彼女がどのように結婚適齢期を過ごし、過ぎ、やっと(彼女はそれを望んでいたのかどうかは一切分かりません)結婚し、出産、そして若くして亡くなった様子が生き生きと語られます。さらに、権力闘争の中翻弄される姫たちの在りようの哀しさも伝わってきます。

そして娘に先立たれた実資が、判断力を失って衰え、利用されていく様子も語られます。

あとがきで、筆者は、「藤原千古」の生涯をたどることで、源氏物語に登場する「葵の上」の心情が理解できたと書いておられます。身分の高い家に生まれたがゆえに「天皇」の妻になることしか考えられなかった「葵の上」にとって臣籍降下した源氏との結婚は屈辱以外の何物でもなかった、しかし彼女は源氏に惹かれていき、不器用だからそれをうまく表すことができなかった・・・。

「千古」を取り巻く事情はわかっても、彼女自身の気持ちを、資料から伺うことはできません。彼女はどのように自分の幸せを考えていたのか?それは同時代を生きた菅原孝標女の「更級日記」から想像することができるといいます。源氏物語を夢中になって読み、源氏物語の登場人物に自分を重ねて想像を膨らませていた孝標女は当時の女性の有り様の一つのタイプでありました。孝標は「千古」の家人として仕えたという記録がありますが、残念ながら更級日記には一切その記述はありません。孝標女にとって、「千古」は感情移入できないお姫様だったのかもしれません。

それぞれの時代のそれぞれの立場でのたくさんの物語があるのだということを改めて感じさせられた一冊でした。「千古」「孝標女」を登場させた小説がかけそうですね。

男も女も関係なく幸せを探して人は生きている、当たり前のことですが、改めて感じました。

https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-70288-9

2022・1・13(木)

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たつこ
たつこ
今でも手元にある「長くつ下のピッピ」「やかまし村のこどもたち」が読書体験の原点。「ギャ〜!」と叫ぶほかない失敗をたび重ねて今に至ります。心理し(士・師〜〜この二つの「し」の違いは何だろう?)です(臨床心理士・公認心理師)。喜びも多かった教員経験の中、一方で、えも言えぬ息苦しさも感じ、心理しの資格をとって、今は相談活動を行なっています。

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