人生設計

本二冊 光文社新書 「家族の幸せ」の経済学 と 「家事のし過ぎ」が日本を滅ぼす

光文社新書より二冊チョイス。

まず『「家族の幸せ」の経済学』〜著者は東京大学経済学部・政策評価研究教育センター教授の山口慎太郎さん。

「赤ちゃんには母乳が一番」「三歳までは母親がつききりで子育てすべき」・・・などの、エビデンス(科学的根拠)を一切無視した「思い込み」が幅を利かせているこの世のありように対し、経済学の手法で反論してゆくという本。全てが「なるほど・・・」とはいかないのですが(どこが経済学の手法?というところがある)、筆者の山口さんの考え方に私は共感するところが多かったです。

例えば「母乳育児を行うかどうかについてはお母さん個人の選択が尊重されるべき」で「過剰なプレッシャーや罪悪感を煽るような一部の人々の行動は行き過ぎでしょう」という言葉。また、「子どもにとって育つ環境はとても重要であるけれど、育児をするのは必ずしもお母さんである必要はない。きちんと育児のための訓練を受けた保育士さんであれば子どもを健やかに育てることができる。・・・質の良い保育園が増えるように政治家や関係者の方々には頑張っていただきたい。」「お母さんの就業と子どもの発達を考えるならば、保育の充実にお金を使うべき。給付金の充実よりも保育園の充実を。」「育休改革にともなうお父さんの育休取得が、夫婦関係の安定に繋がる。」

さらに、「幼児教育によって得をするのは、教育を受けた本人だけでなく、社会全体である。・・・社会全体が得をするのだから、社会全体がその費用を負担するべきだ。」「離婚の手続きを難しくするよりも離婚が生み出す貧困の悪影響を避けるような社会の仕組みが必要。」

あとがきで、筆者は述べています。「科学的根拠を知った上で、ご自身と家族の幸せを考えてみていただきたいと思います。」そして信頼性の高い研究が、日本のデータを用いて行われているわけではない現状について述べ、「調査を依頼されるようなことがあればぜひ協力を」とお願いしておられます。私も、もっと日本で信頼できるデータが集められ、それを元に、政治や因習を変えるような研究がもっと多く出てきて社会の仕組みの改善に繋がって欲しいと思います。

二冊目は『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす』〜著者はナチュラルクリーニングの講座を多く開いておられるという佐光紀子さん。

「なぜ女性だけが、新卒の就活のときから結婚や育児について考えなくてはならないの?」という大学4年生のユウカちゃんのつぶやきからこの本は始まります。三十数年前に筆者(同世代の私も)が思っていたそのままの疑問が、変わらず、ユウカちゃんから発せられる日本の混迷とも言える現状〜〜〜先日の森元首相の発言が、JOCの委員会ではスルっと通ってしまい、後から関係者が慌てているという、残念な現状と繋がりますね。

「日本は世界一『夫が家事をしない』国」・・ダントツのビリです・・(2012年国際社会調査委員会)。「専業主婦になりたい女性が34.2%」「未婚女性で結婚後働きたくない人が3分の1だった」(2013・平成25年三菱綜合研究所・厚生労働省)という結果には、世界中から驚きのコメントが多く寄せられたそうです。・・例えばフィンランドでは職業欄に「専業主婦」はありません。

完璧な家事を求めることが、家族一人一人の成長を阻むという視点。こどもも男たちも全く家事ができない状況下、コンビニがないと餓死する・・・なんてことになります。まずいですよね。

「男女同権が憲法に明記されて、昭和30年以降、女性の社会的進出に伴う食文化や核家族化が進行し、それに対し様々な白書を通じて批判し続けた国のありよう」を筆者は読み解きます。「女性という家事労働者を家庭にキープすることに熱心」な政治・世の中の仕組みの方向性はいまだに続いていると言えるでしょう。どこででも、女性は低賃金労働者として便利使いされているのです。

後書きの「女が家事ができないことは恥ずかしいことでもなんでもない。できません、といって誰かに手伝ってもらえれば、気持も体もずいぶん楽になるのではないだろうか。」という言葉が印象的です。

これって先日の「NHK かんさい熱視線」での生野南小学校の先生の言葉と同じですよね。「できないことを恥じるのではなく、助けてもらえる人になって欲しい。」そして「できることで誰かを助けることができればいい。」のですよね。自分が得意なことで居心地の良い空間を作っていき人と繋がっていけるように生きていきたいものですね。

二冊の本、どちらもずっと続く日本の「変」について取り上げた本でした。「変」が変わらないのって本当に「変」。

2021.如月9日 今日は冷えましたね。三寒四温。

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たつこ
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今でも手元にある「長くつ下のピッピ」「やかまし村のこどもたち」が読書体験の原点。「ギャ〜!」と叫ぶほかない失敗をたび重ねていまに至ります。

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