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本 ムーライト・イン 中島京子

昨夜の満月美しかったですね。隣に木星がこれまた美しく輝いていました。

「ムーンライト・イン」中島京子作をご紹介するのにちょうどいい月加減です。

仕事を失い、自転車旅行の最中に雨に降られた拓海くんは、美味しい匂いにつられて『NN』の看板を『INN=ペンション』と思い込み、とある家の呼び鈴を鳴らします。NNはその家の持ち主、中林虹之助さんの名前の表札でした。虹之助さんに迎えられたその家には3人の女性(かおるさん、塔子さん、マリ・ジョイさん)と虹之助=虹サンが、暮らしてしていました。虹サンは屋根の修理をしてもらうために拓海くんを招き入れます。そして拓海くんは、屋根から落ち怪我をします。

虹之助さんに迷惑をかける・・・と落ち込む拓海くんに、マリー・ジョイは言います。「あなたも、ムーンライトフリット=夜逃げ、でしょ。」「居候すればいいじゃない。」

登場人物5人とも、当然のことながら、それぞれのこれまでがあります。

拓海くんは、派遣の仕事を急に首になりました。塔子さんは介護士です。拓海くんに食事を運んでくれた塔子さんは語ります。「頭がはっきりしている。体力もある。だけど年だけとっている。こういうタイプは怖いわけ。」「たとえばちょっと目が悪いとか、耳が遠くなっているとか、肺や心臓に持病があるとか、だけど頭がはしっかりしているってのがくせ者よ。」「お相手してくれる女の人との関係しか作ったことがない人たちは、家の中で掃除をしたりごはん作ったりする女というのは自分の妻か愛人みたいに思ってしまうみたいなのね。」「拓海くんは、違うわよね。静かで人当たりがよくて、あんまり男っぽくないっていうのかな。うちの息子もそんな感じ。」

塔子さんは、実は「逃亡中」です。くせ者に襲われそうになりその人を殺してしまったのです。かおるさんにそのことを打ち明けた時、かおるさんから誘われて、ここにきたのです。塔子さんは、夫だけでなく息子さんを巡っての心の葛藤も抱えています。

かおるさんは、一見幸せ(そう)な専業主婦でした。しかし夫も息子も彼女のことを、能力も気力もない馬鹿者扱いするばかり、彼女の幸福は空想の中にあって、目の前の現実にはありませんでした。夫が亡くなった時に虹サンに手紙を書き、また、妹を亡くした虹さんから手紙を貰い、ここにきたのです。

マリー・ジョイの父は日本人、日本で介護福祉士になる、と思って来日したけれど、国家試験はとても難しくて(母国フィリピン🇵🇭では立派な看護師なのに)通らない上に、職場のケアホームが潰れてしまいました。運転手として声がかかったのを幸い、かおるさんと塔子さんと一緒にここにきたのです。

虹サンは、40年以上前に脱サラして、ここにペンションを建てました。脚の悪かった妹さんとふたりで暮らしてきたのは、想い人がいたからです。彼女には家庭がありました。妹さんが亡くなった後、彼女に手紙を書きました。そして彼女がやってきた、二人の女性を伴なって・・・それぞれに屈託を抱えながら、上手く調和のとれた生活が始まりました。そこに突然拓海くんがやってきたのです。

5人の暮らしの中での、それぞれの心や環境の変化がユーモアを交えて展開していきます。稀代のストーリテラー、中島京子のマジックにはまり、一気に読み終えてしまいました。

「不思議な再生の物語」と帯にありましたが、その通りでした。夢物語?いえいえ、実際にこういうことあるんだろうな、と思う物語でした。傷ついた心を抱えているときはどうしようもなく孤独ですが、一人で傷を抱え込むよりも。とにかくだれかを頼ってみる、ということは良いことなのだ、と思いました。

中島京子さんの本では、直木賞受賞作「小さいおうち」、河合隼雄賞・柴田錬三郎賞をとった「かたづの!」、中央公論文芸賞をとった「長いお別れ」が有名です。どれも抜群の面白さでした。

それから2016年刊「彼女に関する十二章」。60年前の文豪伊藤整と50歳の主婦の生活との響き合いが素晴らしい。

この本を読んでから二週間、バタバタ忙しく暮らしていて、図書館への返却期間を過ぎてしまい慌ててこれを書いています。すいません、次をお持ちの方。この本絶対期待を裏切りません、オススメ💌です。

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2021・7・25(日)向日葵が咲きました。

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たつこ
たつこ
今でも手元にある「長くつ下のピッピ」「やかまし村のこどもたち」が読書体験の原点。「ギャ〜!」と叫ぶほかない失敗をたび重ねて今に至ります。心理し(士・師〜〜この二つの「し」の違いは何だろう?)です(臨床心理士・公認心理師)。喜びも多かった教員経験の中、一方で、えも言えぬ息苦しさも感じ、心理しの資格をとって、今は相談活動を行なっています。

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