人生設計

NHKスペシャル・パンデミック第9回「子どもたちの学びは守れるか」(大阪市立難波中学校)

去年春の一斉休校では3か月にわたって学びが止まりました。大阪市立難波中学校を定点ルポした番組が4月25日(日)放映されました。(4月28日(水)夜0時25分から再放送)

親の経済力によって子どもの学力格差が起きてしまう「教育格差」。それは自己責任なのか。大阪市立難波中学校は、多くのルーツを持つ生徒が通い、格差の下位にいる生徒たちも少なくありません。先生方は、その対策のために、「学力別クラス」を作ったり、放課後教室を解放しての「生徒同士の学びあい」、に力を入れてきました。(「バカにしないし、する子もおるけど教えてくれる、難中一番やと思う」との言葉が印象に残りました。)

学校休校によってさらに成績上位層と下位層との差が想像以上に広がってしまうという深刻な事態が起きました。「教育格差は広がってしまう」授業は駆け足で進まざるを得なくなります。難波中学校の校区には夜の勉強の場もあります。地域の人や学生ボランティアによるこの場所では、勉強を教えてもらい、また様々な人生の先輩との語り合いから学ぶ力をつけていきます。

周囲の人々との繋がりによって学力に差ができる、という研究があります。(志水宏吉さん)人々との繋がりを作ることによって子どもたちの学力を伸ばすことができる、という確信があります。難波中学校の取り組みの成果は、秋の実力テストで上位層と下位層の成績さが縮まりました。

学校再開後も様々な場面で生徒たちの活動は制限されます。給食も黙って食べる、部活動は縮小。コンクールや試合も中止。生徒たちの繋がりを重視したいと、校内で吹奏楽部の一度限りのコンサートが許されます。

不登校だったIさんは、休校明けの分散登校により、学校に通えるようになりました。人が少なく、短時間で帰れることから、登校が可能になり、皆と一緒に学ぶ喜びも感じました。今でも苦手な科目はあります。体育です。「一緒にやりたいんやけど体が逃げちゃう」

コロナ第三波が忍び寄ってきた大阪、いつ陽性者が出てくるかわからない状況です。万が一そうなった場合学校は何ができるか?受験を前に再び学びを止めるわけにはいかない、とオンライン授業の試行が行われます。「会うからこそ表情でわかることがあるから、会いたいです。これメインというわけにはいかない。」という先生の言葉が印象に残りました。家庭の受信環境により受講できない生徒もいました。

日本はICT環境の遅れが目立っているそうです。国は一人一台端末を配布を決定しました。モデル校を覗くとこんな風景が。AIが一人一人に最適と考えられる問題を用意していきます。グループ討論でもそれぞれが調べたアイデアや資料をクラウドにあげてまとめていきます。(これってコピーアンドペーストに終わる可能性もありますよね。)そして、学びのデジタル化による教師の負担増という大きな問題点もあります。

「平均値をあげて誰一人取り残さないでというこれまでの取り組みに加えて、一人一人の個性を伸ばす教育を」と文部科学大臣は語ります。「労働環境を変えていくという面でもICTは大きな役割を果たすと考えています。」ということです。(ICTを取り入れるだけで、労働環境がよくなるとはとても思えないですよね。)

コロナ禍によって、経済的に逼迫する家庭も出てきています。非正規で働く家庭の子どもたちは、親の収入が減ったり、仕事を失ったりして、進学を諦めないといけないのでは、、、と追い詰められ悩みます。高校授業料無償化の制度を説明し、自己負担しなければならない金額を一緒に考えてくれる学習支援施設の人がいます。きちんと制度を利用し、お金の計算をすれば進学を諦める必要はないのです。同級生や教員、地域の人たちとの繋がりに支えられながら、その繋がりで出会った人を「裏切りたくない。後悔させたくない。」と、頑張る力が湧いてきます。

志望校が決まらない生徒たちも多くいます。高校説明会が相次いで自粛になり高校生活へのイメージが湧かないのです。そんな中、同級生たちとの対話によってイメージが湧いてくるようになりました。様々な背景を持つ生徒が多くいるからこそ多様な価値観を認め合い、多様な視点を持つことができるのではないかと難波中学校の先生方は考えています。

不登校だったIさん。社会科の授業で制服への違和感を語りました。「なんで女の子やからといってスカートを着ないとあかんのか?」それを受けて制服を見直す委員会が作られます(まだなかったんや、というツッコミはしないでおきましょう)。自分を語ることができ認めてもらえたIさんは、学校で友達と語ることに喜びを感じるようになります。

受験に合格した姿、卒業式の姿、生徒たち一人一人、繋がりを確認しあいながら進んでいきます。「繋がり」は揺れ、動き、切れ、また別のものと繋がる力の元となります。彼らのこれからは順風満帆とはならないでしょうが、人とのあたたかい繋がりを信じる力は、彼らを確実に幸せに向かわせると感じました。

この番組のコンセプトは、「“学びの未来”をつかみ取ろうとする15歳の姿を通して、日本の公教育の未来を展望する。」本当の「知性」とは何か、考えさせられる番組でもありました。

2021年4月27日(火)

ABOUT ME
たつこ
たつこ
今でも手元にある「長くつ下のピッピ」「やかまし村のこどもたち」が読書体験の原点。「ギャ〜!」と叫ぶほかない失敗をたび重ねて今に至ります。心理し(士・師〜〜この二つの「し」の違いは何だろう?)です(臨床心理士・公認心理師)。喜びも多かった教員経験の中、一方で、えも言えぬ息苦しさも感じ、心理しの資格をとって、今は相談活動を行なっています。
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