manabimon(まなびもん)

パパ&ダダ 二人のジョンの子育て日記

2月3日放映のドキュランドへようこそ「パパ&ダダ 二人のジョンの子育て日記(スイス 2021年)」を見ました。あたたかい番組でした。

https://www.nhk.jp/p/docland/ts/KZGVPVRXZN/episode/te/J6GG12XWP6/

冒頭、七人の子供を持つ敬虔なカトリック教徒、マリア・ロンバルド・フレドゥーラが登場し語ります。「会社の弁護士をお願いした縁で、二人のジョンの結婚式(2011年)に参加し、友達になったものの、医学的な障害を乗り越えて家族を持ちたいと願うゲイのカップルと付き合う中では葛藤を抱え、信仰心とバランスを取るのが難しかったです。でも彼らの次男サンティーノの洗礼式で後見人を頼まれた時に、一人の女性として、母として、二人の想いに寄り添う、と決心したのです。彼らの思いにあれこれ言う権利は誰にもありません。」

続いて、二人のジョン、アメリカ・ボストンに住むベトナム系でダンサーのジョン・ラム(ダダ)とイタリア系大家族出身の弁護士ジョン・ルッジェーリ(パパ)、が、二人の子どもとの幸せな暮らしを、丁寧におくっている様子が、描かれます。

結婚を迫られる王子様の前に次々と登場する女性たち、でも王子の胸をときめかせたのはステキな王子様〜〜〜絵本を読みながらパパとダダの恋について子どもたちにさりげなく、愛情深く伝えます。

そして二人の恋の始まりから、結婚、その結婚をめぐる家族の思い、が語られます。初めてのデートで人生や子どもを持ちたいと切り出したジョン・ラム。その思いに打たれたジョン・ルッジェーリ。イタリア系のルッジェーリの家族は二人の結婚を祝福します。しかしベトナム系のラムの家族は、ゲイとしての生き方に馴染めない・・・、しかし、二人のジョンと付き合っていくうちに彼らの関係を理解し愛するようになったのです。

可愛らしく幻想的なアニメーションが、二人のジョンの関係をあらわします。結婚し、子供を授かる・・・しかしそれは彼らには自然な出来事ではなく、航海と洞窟の冒険に象徴されるような、周到な準備と良い協力者と天の助けが必要でした。

全ての障壁を取り除く簡単に代理出産を提供するエージェントを利用するのではなく、もっと自分たちで納得する方法を選択したいと考え、エージェントを選びます。卵子の提供者探しが一番困難だったそうです。最後にドナーの女性たちのリストから選んだベトナム系フランス人の女性の病歴や家族関係や卵子提供のスピードを確認し、申し込み、10個ずつの卵子に二人の精子をそれぞれ受精させました。効率の悪いやり方だったのですが、できるだけ自然な方法で進めたかったのです。準備万端だった代理母に受精卵を一つずつ移植し、双子の誕生を待ちましたが、残念ながら一人の心音が止まり、生き残ったジョバンニを、2013年8月に授かりました。その、一年後、二人目の代理母を探し、凍結保存した受精卵を移植、2015年7月に生まれたのがサンディーノ。

子どもたちはダダとパパをこよなく愛し、すくすくと成長しています。パパとダダは、予定を立てメチャメチャ忙しい中で家族を支えます。

イタリア系のジョン・ルッジー二(パパ)の家族が登場します。姉たちが、ジョンについてゲイだと気付いた時のこと、ジョンに確認したこと、その時父さんと母さんだけには言わないで、って頼んだこと、が語られます。ジョンは11歳の時から自分がゲイであることを自覚し、父に泣きながら話した、でも父は取り合わなかった。27歳でカミングアウトするまでは、女の子とも付き合ったりして本心を隠して暮らしたそうです。ボストン大学に入った時に初めてゲイの人を目の前にし、彼らが一緒に踊って楽しんでいる様子を見た時が大きな変化の始まりだったそうです。帰省したらストレートのジョンを装っていたのですが。父から「彼女がいないのはなんでだ?ゲイじゃあるまいし」と言われた時に「ゲイなんだ」とカミングアウト。その時に父は「死んだほうがマシだ」と言い放ち、しかし一晩考えた後泣きながら謝ってくれたといいます。

二人の友人も登場します。一見自由な両親が自分がゲイであることを受け入れたように見えながら、きょうだいの子どもの前では本当のことを言うな、と言ったことに大きなショックを受けたといいます。

べトナム系のジョン・ラム(ダダ)はカナダに留学した時に、自分らしさを手に入れた。ダンサーだからといって皆がゲイというわけではありません。ラムの両親は、今でも、男女の結婚、女が子供を産み、家族を支えると言う価値観に囚われていると、ラムはいいます。欧米では、同性カップルの結婚が、制度化され、受け入れられつつあります。とはいえまだまだ壁はあります。

子どもたちが大きくなったら、二人は、代理母について本当のことをきちんと話すつもりです。代理母は匿名希望、でも情報は全て知っている。だから彼女を尊重し、だれかはわからないけれど、どこかに存在するはずだと、子どもたちが理解できるように話す、と語ります。

イヤイヤ期、あれも嫌これも嫌といったりする子どもたちに、二人のジョンは丁寧に丁寧に向き合っています。そんな穏やかな子育てを行ない、自然に子どもたちが自身の出生を理解し受け止めるように考えている二人。私は心から尊敬します。

3人目を望むジョン・ラム(ダダ)。びっくりしながらその話し合いに応じるジョン・ルッジー二(パパ)。そんな彼らの素晴らしい生活を知るマリア・フレドゥーラ、「家族とは?一般的とは?」と問いかけます。「それは人間が作り出したレッテルにすぎません。時代は変化するのです」。

ジョン・ルッジーに(パパ)は語ります。「ありのままの自分を出せるようになるなんて考えられなかった。この国は寛容になりつつあり、世の中が変化し、ゲイが結婚できるようになったこと、そして子どもを持ったこと、どれも想像を超えた出来事でした。医学の進歩や人々の価値観の変化によって、大きな幸せを得ることをできた」。ルッジー二の、その穏やかな表情・語り口に、本当によかったなあ、と思いました。思いながら、LGBTについての理解を持っていると言いつつ。のらりくらりと制度変更について具体化しようとしない日本の首相に代表される政権を担う人々の無理解について憤りを感じました。憤りながら、その実際についてあまりに無知な自分、代理母などについてはまだ100パーセント賛成できない自分もいます。

変化する世の中の中、柔らかく自然に愛情たっぷりの生活を営む一家。そんな一家と接することで、さらに、世の中の偏見が解けていく・溶けていく、のだろうと思いました。私の中にあるそういうものもこの番組に解かされた・溶かされた、と思います。

2022年2月17日(金)夜明けが早くなりました。散歩して体操の終わった6時半ごろはもうこんなに明るいです。そして梅が美しいです。