manabimon(まなびもん)

月の舟=七日の月(上弦の月)〜万葉の月①〜5月30日(土)次は6月28日(日)

5月30日(土)今日の月は観ましたか?美しい半月。

七日の月(なのかのつき)上弦(じょうげん)の月、弦(ゆみはり)月、弓張(ゆみはり)月と呼ばれてきました。また「月の舟」とも表現されます。

日が沈んで星の見え始める南の空に舟の形であらわれ空を昇っていくのです。

 

天の海に 雲の波立ち 月の船 星の林に 漕ぎ渡る見ゆ     柿本人麻呂

                          万葉集巻七 巻頭

あめのうみに くものなみたち つきのふね ほしのはやしに こぎわたるみゆ

                       かきのもとのひとまろ

「天の海に雲の波が立ち、月の船が星の林に漕ぎ入って、隠れていくのが見えるよ」と訳を書くまでもなく、美しい月が星たちの間を浮かび上がり、また、群雲に隠れていく情景が思い描けるわかりやすく、美しい歌です。柿本人麻呂は万葉集を代表する歌人。謎の多い人ですがスケールの大きな素晴らしい歌をたくさん残しています。

ピーター・マクラミランさんは「これこそ日本人の歌心の真髄だと思います。」と絶賛し、英訳をつけておられます。 https://www.1101.com/gakkou_ml/2019-03-14.html

  Cloud waves rise     

    in the sea of heaven.

    The moon is a boat 

    that  rows till it hides

    in a forest of stars

英語の方がわかりやすいという人もいるかもしれませんね。

 

天の海に月の舟浮け桂楫かけて漕ぐ見ゆ月人荘子     作者未詳 万葉集 巻十

あめのうみに つきのふねうけ かつらかじ かけてこぐみゆ つきひとおとこ 

「天の海に月の舟を浮かべ、月の若者が桂の舵を取り付けて漕いでいる」

中国に次のような月桂樹伝説があるそうです。「月に桂があり、ヒキガエルがすんでいる。桂の高さは500条(850m)あり、下に一人の男がいて、いつもこの木を切っているが、切り口はすぐにふさがってしまう。その男は仙術を学びながら過失のために罪をえて月に流され、永遠に桂の木を切らされているのだ。」万葉の時代の人は皆この伝説を知っていたのでしょう。月の若者は桂の木を切って楫にして舟に取り付けて煌く天の川を渡って空に昇って行くのです。

美しい万葉の歌二首を口ずさみながら、ぜひ、6月28日の上弦の月が出て昇っていくのをご覧になってください。

2020・5・30(土)