manabimon(まなびもん)

睡眠〜ヒューマニエンス40億年のたくらみ

テレビの話ばかりでなんなんですが・・・「ヒューマニエンス40億年のたくらみ」今日は「睡眠・ヒトは眠りで進化した?」でした。面白かったです。

https://www4.nhk.or.jp/P6897/x/2021-06-24/44/17700/2385010/

長く眠る才能を持っている「ヒト」。ゲストの東京大学理化学研究所の上田さん(時間の観点から脳について研究)は、ヒトが知性を発達させたのは「睡眠」の長さと関係あるとおっしゃいます。

1953年、人の睡眠には、ノンレム睡眠とレム睡眠のに種類があることが発見されました。今や常識ですよね。ではこの2種類の睡眠はどんな働きをしているのか?

12歳の陽介くんが協力してくれました。陽介くん夜9時35分にベットに入ります。眠りに入って45分後の10時20分、陽介くんは盛んに寝返りをうっています。11時には、動かなくなりました。15分後、陽介くんはまた動き出し50分には寝返りを打ちます。

動いている時と動いていない時、どちらがレム睡眠でどちらがノンレム睡眠かわかりますか?確かレム睡眠の時に脳波が動いているはずだから・・・

実は動かないでじっと寝ている15分間が、脳波が小刻みに動くレム睡眠で、動いている時が脳波が動かないノンレム睡眠なんだそうです。レム睡眠中、脳は起きている状態に近いけれど体は深く休んでいる状態だということです。

上田さんのチームは、2018年レム睡眠を引き起こす遺伝子を発見しました。M1とM3という神経伝達物質の受容体を作る物質です。

進化的にはレム睡眠は新しい眠りで古い時代にはノンレム睡眠しか持っていなかったのです。二つの眠りを持った私たちの祖先は、人への歩みを進めていったのです。レム睡眠とノンレム睡眠があること、この二つのバランスを保つことは、ヒトの知性という高度な脳を育むために必要なのだろうと上田さんはおっしゃいます。

レム睡眠の時は、体と脳がバラバラの状態になって、脳は覚醒状態に近く、体は深く休んでいる。レム睡眠は浅い睡眠と言われていましたが、活発に動いているのです。脳の中の細胞があっちもこっちも活動している。みんな喋っているような状態。

深い眠りである、ノンレム睡眠には浅い深いの段階がある。みんな同じハーモニーで演奏しているオーケストラのようなイメージ。ゆっくりで振れ幅が大きいのでそれによって体が動くのではないか。この振れ幅が大きいほど深い睡眠=質の良い睡眠といわれています。

人の眠りは、ノンレム睡眠→レム睡眠、が、4・5回繰り返されて、約8時間後にレム睡眠から目が覚めるということです。人の眠りの始まりは、浅い睡眠ではなく、深いけれど体が動く眠り(ノンレム睡眠)。眠ってすぐは体を動けるようにしておかないと危険なのです。金縛りにあうのは、間違ってレム睡眠から入っちゃった時、体が動かない、ということなんだそうです。

トカゲから人まで、レム睡眠とノンレム睡眠を持っていることがわかっているそうです。人とマウスの睡眠を比べると、マウスは、睡眠1時間の間にノンレム睡眠、レム睡眠、ノンレム睡眠、覚醒、ノンレム睡眠、覚醒、ノンレム睡眠、レム睡眠、覚醒、ノンレム睡眠・・・を細かく繰り返しています。人は覚醒することなく8時間近く眠るのです。大きな違いがあります。

レム睡眠中に活発に働いている脳は何をしているのか?名古屋大学の山中さんは2019年、レム睡眠に関する画期的な発見をしました。レム睡眠が脳の海馬の記憶を消している可能性が高いということ。体験したことはまず海馬に送られ、一時記憶として止められから、大脳皮質に転送されて長期記憶として保存されています。この海馬での記憶の選択にレム睡眠が深く関わっていると考えられるのだそうです。ヒトはレム睡眠中に積極的に記憶を消すのです。

なぜレム睡眠中に記憶を消すのか?レム睡眠中の脳活動の記憶(夢などの)を消す為、また起きているときの情報を消すことで新しい情報を取り込めるようにしている、と考えられるそうです。一方で、レム睡眠中に忘れるだけではなく、強い記憶は増幅されているという研究もあるそうです。

京都大学の林先生は、レム睡眠とノンレム睡眠の関係をマウスを使って行っています。レム睡眠を断つとマウスはノンレム睡眠の後レム睡眠を長時間取ろうとすることがわかりました。レム睡眠には重要な役割があるのです。さらに、レム睡眠を取れなくしたマウスはノンレム睡眠の質が悪くなり、レム睡眠を取るとノンレム睡眠の質も上がる、ということもわかりました。

度々レム睡眠が入ることがノンレム睡眠の質をあげているのです。この、人の睡眠を「毎晩起こる進化のプロセス」だと上田さんはおっしゃいます。レム睡眠を十分とった後はより質の良いノンレム睡眠がやってくる。ノンレム睡眠は、ただ脳を休めるだけではなく、細胞と細胞をつなぐ構造体シナプスを作っているのです。レム睡眠の時にあえて古いものを壊したり補強したりして、ノンレム睡眠の時に道路工事をしているようなイメージです。

解けないような難題を、寝ている間に脳が解決している可能性があります。睡眠中に脳は、スクラップ&ビルド、何回も作ったり壊したりを繰り返しているのです。

悩んでいる若者に教えてあげたい、「寝ろ」「自分を信じろ」「睡眠は十分に取らないと勿体無い」「短い眠りは大チャンスを逃している」、と織田さんは叫びます。まさしくその通り!!

睡眠中の大イベント「夢」は単なるイメージではなく映像を見ているそうです。

夢は記憶の中から引き出されている。東洋大学の松田さんは、私たちの脳の中に蓄積した記憶情報がランダムに引き出されて、荒唐無稽な夢のストーリーを生じさせると言います。夢にはレム睡眠中に関わっている。広島大学小川さんは、レム睡眠の時に急速眼球運動が起きていることを突き止めました。先ほどの陽介くん、レム睡眠中目が動いていました。Rapid eye movementの短縮形が「REM」

眼球運動と夢の鮮やかさとの研究から、眼球運動の回数と夢の鮮やかさは一致するということがわかっています。レム睡眠中に急速眼球運動が起きると、脳の視覚野という領域が活動し、起きている時に何かを見ている時と同じ活動となります。眼球運動と夢との関係は、夢の映像を目で追いかけている、目が動いた後に鮮やかな夢を誘導する、という二つの仮説があるそうです。

夢と心理について研究している東洋大学松田さん(臨床心理士)が登場しました。織田さんは、大人になってから夢を見たことがない、と言います。毎日必ず夢は見ている。夢をよく覚えている人は、神経質、不安が高く、芸術家タイプでクリエイティビティが高い人が多い、と松田さん。おおらかで日常生活をコンプリートしている時は夢はあまり覚えていない・・・そう織田さんは他の人が普段体験しないような、夢のような出来事を日常的に「ドラマ」で体験しているから夢を見る必要がないのですね。

飛び降りる夢の話題。飛んでいる夢をみる人と着地の仕方を考えている人と色々あるようです。

心理相談を受けている松田さんのところには、嫌な夢を見てしまって、夢か現実かわからなくなるという相談があるそうです。悪夢の筋書きに決まりがあって、それをポジティブな方に変えるとしたら・・・とお話しし、イメージの中でリハーサルしておくと、実際に夢を見た時にポジティブな方に誘導できる。今まで恐怖で目が覚めていたものを、認知的に書き換えたことができたと自信も出る。レム睡眠中にネガティブな情報を消しているのではないか、夢は心のお掃除、というイメージを持っている、と松田さん。涙の浄化作用と同じものがあるのでは?と織田さん。

京都大学神谷さんは、ブレインデコーティング(脳の解読)=脳が出す信号をAIが可視化することに取り組んでいます。ヒトが見ているものの可視化、この技術にはスタジオ中が大興奮。この技術を生かして神谷さんは夢の解読に挑んでいます。近いうちに、イメージするだけでロボットを操作できるようになるかもしれない・・・。

上田さんは、睡眠の情報を病気の予防や治療に役立てたいと考えているそうです。心や脳の病気にかかると、ほぼ必ず睡眠に異状が出る。早く捉えることができると治療や予防に役立つと考えられるということです。

「夢」って人とシェアできない、分け合えない、個的ものだから大事だと考えていたけれど、夢をビジュアライズできる、分析することで不調を調整することができるかもしれない、という点に驚いた、といとうさん。

本当にびっくりしましたΣ(・□・;)。頭の中の何もかもを裸にするのではなく内緒はつくっておきたいと織田さん。確かに。

2021・6・24(木)