manabimon(まなびもん)

映画「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」(追記あり)

少女時代夢中になって読んだ物語の一つ、「若草物語」。

それぞれに個性的な4人姉妹を巡る物語は何回読んでも飽きなかった〜〜という方、たくさんおられると思います。特に、主人公のやんちゃで小説家志望のジョーに、自分を重ね合わせていた「文学好きで、素直でなくて、生きにくさを抱えていた女子たち」も多くいるのではないでしょうか?

著者の、ルイーザ・メイ・オルコット(1832〜1887)はアメリカの作家です。奴隷制度反対、女性の権利獲得などという革新的な思想を持ち、南北戦争の時の奉仕労働の後遺症である水銀中毒で55歳で亡くなりました。

彼女の自伝的小説で最も知られている作品が「若草物語」。今回初めて第四若草物語まであることを知りましたが、私が読んだのは「第二若草物語」までです。この映画も「第二若草物語」までをベースに作られています。回想シーンとして「第一若草物語」を入れながら、「第二若草物語」が展開されていきます。登場人物像には自分のイメージと違和感を感じたりもしましたが、原作の力をを生かした美しい映像、セリフ、展開、俳優たちの熱演、音楽、などの素晴らしさでぐいぐいと画面にひきこまれていきました。2019年アカデミー賞衣装賞を受賞した衣装ももちろん素晴らしいです。

女性も男性も関係なく、一人一人の登場人物が試行錯誤をしながら、自分らしく生きる道を求めている姿をあたたかく描いています。時代や国の東西を超えた人間のありよう〜〜「はちどり」や「精神0」にも(もちろん古典作品にも)、通じるものがありました。

人は自分らしく生きたいと思いますが、その自分が見えなかったり、世間の「常識」に囚われたり、思うようにならない運命に振り回されたりするものです。

原作にはなかった、ジョーが「若草物語」の結末について編集者と掛け合う部分について。監督のグレタ・ガーウィグは「オルコットはジョーが作家になる夢を諦めて、夫や子供たちを支えることに専念するという結末を描きたくなかったはずです。しかし、オルコットは商業的な成功を望んでいたため、世間受けする結末を書かなければならなかった。もし、この映画でオルコットが本当に描きたかった結末を描き出せたなら、私たちは何かを成し遂げたと言えるのではないでしょうか。」という趣旨のことを語っています。

作者のオルコット自身は結婚していません。ワンパターンな女性の生き方を押し付けてくる世の中に対して常に対峙し、マサチューセッツ州のコンコードで初めて投票権を持つ女性となったそうです。そのような彼女の生き方に、監督は敬意を表して原作になかったシーンを入れたのですね。素晴らしいなと思いました。

若草物語に夢中になったことのある方もない方も、ぜひご覧ください。がっかりはさせません。

https://eiga.com/movie/92285/

追記:(ネタバレありです)

この映画を勧めてくれた友人の一人は、エイミーの役者の力を高く評価していました。「エイミーがあんないいやつになるとは!ローリーと結婚しても許すって思ったわ。」そして若草物語を読んだことのない彼女の相方さんもこの映画はとても気に入りベスの死をこの上なく悲しんでいるそうです。どちらにも同感、エイミー素敵でした。あなたの二番目にはなりたくない、とローリーに言い切るところ大好き。ベスが死を避けられないものとして受け入れていく姿には涙涙。そして、ハーマイオニーがどうしても被ってしまうメグでしたが、メグの弱さ強さを繊細に演じていました。もちろん主演のジョーの強さ弱さ脆さしたたかさも見ものです。学校を作ったジョーにはたくさんの有能な助っ人、素晴らしい指導者たちがいる。好きなものを真剣に学ぶことの大切さを改めて感じました。どうせ頑張ったって無理〜〜〜なんてことは絶対にないのです。

 

2020.7.21