manabimon(まなびもん)

本「正体」〜BS特集「正義の行方・飯塚事件30年後の迷宮」

亀梨くんファンの友達に勧められた本「正体」。WOWOWでドラマ化され亀梨くんが主役。ドラマもいいけれど原作を読むのが絶対先がいい、という言葉に従い、染井為人さんの原作をまず読みました。

ある夫婦の殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑を宣告された鏑木慶一が脱獄。逃走する彼の表れた場所での人々との関わりを通じて鏑木という人間の本質が明らかになっていく・・・。

主に新幹線の中での移動中に集中して読んだせいか、すっかり物語の世界に浸ってしまいました。最後のシーンにはため息が・・・作家の染井さんには多くの結末に対する意見の投書があったそうです。

そして見始めたWOWOWのドラマ(オンデマンドで観ました)。亀梨くんはイケメンすぎて、こりゃすぐに逃亡犯とバレるだろう・・・。市原隼人・貫地谷しほり・上川隆也・黒木瞳・若村麻由美・音尾琢真・高畑淳子・・・とオールスターキャストの贅沢な布陣で、引き締まったドラマに仕上がっていました。

朝ドラで頼もしいおばあちゃんを演じている高畑さんが、夫の父を介護しながら感謝もされず、夫に言われるがままの生活をしていて宗教に傾いていく女性を演じていて、その振れ幅を演じ分けるところがさすがだなあと感じました。

https://www.wowow.co.jp/detail/171492/002/01

そんな時に、BS特集「正義の行方・飯塚事件30年後の迷宮」が放映されていました。https://www.nhk.jp/p/bs1sp/ts/YMKV7LM62W/episode/te/W5RPKK7N98/

何気なく見始めたのですがずっとみいってしまいました。1992年小学校1年生の女の子2人が登校途中に行方不明となり、遺体となって発見された飯塚事件。1994年犯人として逮捕された久間三千年さんは一貫して無実を訴え続けましたが、1999年福岡地裁が死刑判決を下し、控訴も2001年高裁で、2006年最高裁で棄却されました。その決定の大きな根拠がDNA鑑定の結果でした。

しかしそのDNA鑑定は、別の殺人事件足利事件(冤罪と確定)の時に使われた技術、携わった人員が同じで、正確さに欠けるものであり、様々な問題点をはらんだものでありました。2008年10月足利事件のDNA再調査が報じられました。しかしその一週間後、久間さんに対する法務大臣の死刑執行の命令が下り、判決確定からわずか2年あまりという異例の速さで死刑が執行されたのでした。

https://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/deathpenalty/q12/enzaiiizuka.html

久間氏の遺族は、2009年、福岡地裁に再審を請求しました。再審請求では、足利事件のDNA再鑑定を行った大学教授による鑑定書が新証拠として提出されました。しかし、2014年3月31日、福岡地裁は再審請求を棄却し、2018年2月6日、福岡高裁も即時抗告を棄却し、2021年4月21日、最高裁は特別抗告を棄却しました。2021年7月9日、久間氏の遺族は、新たな目撃証言に基づいて、福岡地裁に第2次再審を請求し、現在審理中です。

この事実と、立場の異なる当事者たちの証言を積み重ねたのがこの番組です。証拠を作り上げたかのように感じられる手法、DNA鑑定の信頼性の低さ、その後証拠が消えてしまったという事実・・・などから、冤罪の可能性も感じられます。しかし真実はわからない。真実がわからないならば、「疑わしきは罰せず」のはずなのに・・・圧倒的な検察側有利のこの国の有り様、が浮かび上がってきます。

犯人に仕立て上げられ生活を破壊される、挙句の果てに殺される・・・という冤罪に沈んでしまった悲劇。真実を明らかにしたい、真実はわからないけれど、おかしなことをおかしいと指摘したい、という人々の善意によって、久間さんの再審請求が2021年に提出されました。ドラマの中でも人々とのつながりによって鏑木さんの汚名が晴らされていきます。

冤罪・・・あってはならないことですが、あるのです。真実は見えにくいものですが、物事をフラットにみる(法律の女神は目隠しをしている、と番組内で弁護士さんがおっしゃっていました。目隠しをして、黒人だから、女性だからという偏見を持つことを防ぐのです。でも日本の裁判所にある法律の女神は目を開いて「よく見る」女神だそうです)ことへの努力は惜しまないようにしたいと思います。

2022年11月23日。雨雷の後夕焼け。W杯日本対ドイツがこれから始まります。頑張れ日本!

追記)冤罪繋がりで、「国家の罠」佐藤優さんを次に読むつもりです。