manabimon(まなびもん)

「生きる教育で心はぐくむ」大阪生野南小学校〜NHKかんさい熱視線

校内暴力にあふれ学校崩壊に陥っていた過去を乗り越えた、大阪市立生野南小学校。

今は学力テストでも国の平均を上回るようになり、学校はすっかり穏やかになり、全国から視察の人が絶えません。国も来年度からこの学校の取り組み「生きる教育」の一部(これがダメなんですがね)導入を検討しているそうです。

生野南小学校での4ヶ月(昨年10月〜今年1月)の記録が今日2月5日(金)19時半からのNHKかんさい熱視線で放映されました。

学校がもっとも荒れていた10年前、校内での暴力は100件以上ありました。貧困や親子関係(虐待・離婚など)の問題など複雑な事情を抱えた子どもたちの心の傷から暴力が生まれていると先生方は考えました。暴力が表現手段になってしまい相手の痛みを感じられないこころのありようにどう向き合うか?議論の末に辿り着いたのが、子どもたちの生い立ちや心の傷に踏み込んだ教育が必要だということでした。

7年前から「生きる教育」を始めた生野南小学校。「人で傷ついた心は人で埋める」「人を信じる力」「今が幸せになって欲しい」先生方の願いです。

1年生「大切な心と体」2年生「みんなむかしは赤ちゃんだった」3年生「子どもの権利」4年生「生いたちと将来の夢を語ろう」5年生「愛?それとも支配?」6年生「“心の傷”を考えよう」〜〜人でついた傷は人で癒える〜〜が根底に流れる精神です。

4年生で行う「生いたちと将来の夢を語ろう」は過去の経験や現在の状況を整理し、未来を思い描く授業です。4ヶ月をかけるこの授業の軸となるのは1対1の面接です。

まず、子どもたちは、自分の過去を紙にまとめていく作業をします。クラスに書くことができずにいる、かいりくん、がいました。「なに書くかわからんし」「書きたくないねん」「書くのめんどくさいから色塗りしとこ」先生はかいりくんが活躍した運動会のことを話しかけますが、かいりくんは「うん」と言いません。得意なことを前向きに受け止められないのです。先生はかいりくんのペースに合わせようと決めました。

ある日、席替えをすることになりました。席替えは班長会議で決めています。「自分は誰を助けることができるか。話したいなと思う子は。」という先生の問いかけに「かいり」と応える子がいました。また、自分の仲良しの「かいと」くんと隣の席になったじゅんたくんはぴょんぴょん跳んで喜びますが、前が見えない子がいて「かいと」くん替わって、ということになり、じゅんたくんは怒って教室を飛び出します。仲良しのかいとくんが迎えにいき、じゅんたくんは教室に戻ります。先生から「ごめんな。ただ後ろで目が見えなかったらあかんやん。ごめんな。」「偉いな、去年やったらガラスの1枚くらいわっとったな、それは大げさか。」といわれて頰が緩み、直後に友達から拍手されました。先生から抱きしめてもらい、かいとくんから「まだ斜め後ろにおるから。」と言われじゅんたくんはニコニコ。

じゅんたくん、昨年両親が離婚、心が荒れ、学校生活も荒れました。「学校嫌いで何回も学校辞めると言ったり、授業ボイコットしたり、遊べないことがあったんですけれど、先生がコツコツやってくれはって、友達が変わらず向き合ってくれて、我慢できるようになった。」と母は語ります。

「ライフストーリーワーク」では現在の自分と向き合う授業が行われていました。二人での対話という形で行われます。じゅんたくんは自分の困り事について語ります。「仲良くなりたいけれどついついいらんことを言ってしまう。」対話の相手の素敵な子(多分あいくん)は「まあそうやなあ、その相手の嫌がることをなんとか言わんほうがいいけれどそれがなかなか難しいなあ、結論などうする?どうしたらいいんやろなあ。つい言ってしまうんやろ?」と言い、メッセージ「友達へのせっし方を考えたらいんじゃないでしょうか」を書いてくれました。インタビュアがじゅんたくんに「どう思いましたか?」と聞きます。「秘密のことを初めていうからどきどきした。聞いてもらってスッキリした。あおりを止めれる人になりたい。」素敵な子「じゅんたくん優しいからできる。」じゅんたくん「うれしい。」

「低学年は大人から褒められることで心が豊かになっていきますが、3年生くらいになると、みんなからすごいな頑張ってるな、と言われることが、大人から言われるよりうれしいし大きい。」と先生。

12月、かいりくんは授業で自慢の料理を紹介することになった時、かいりくんの作業は進みません。そんな時、てんまくんが声をかけます「キムチ鍋やったらさ、この汁真っ赤にせな。」積極的に声をかけるタイプでないてんまくんですが、友達との対話を重ねる中で、相手の気持ちを考えるようになり、かいりくんに声をかけるようになりました。

「かいりくんはてんまくんの隣になって、やろうという気持ちがものすごく出てきた。自由勉強をすっごい頑張ってやってくる。」と先生。

そして、かいりくん自身も周りの子に働きかけていくようになります。運動の得意なかいりくんは中国からの転校生かいしゅうくんがやったことがなく慣れないで困っている前転の手伝いをします。「かいしゅう頑張れ」「かいしゅう出来た!」

「自分ができないことはできる人が担えばいい、恥ずかしいのではなく。自分ができることは頑張ってやる、そんな風に思える人になって欲しい。」と先生。

2021年1月19日、4年生の「生きる教育」最後の日。「未来の自分への手紙」10年後の自分を想像し、書き進めていきます。感情を抑えるのが苦手だったじゅんたくんは「僕はこの10年間で一番楽しい環境にいます。未来の自分はどうですか?苦しいですか?苦しい時は10年前の自分を思い出してがんばってください。」と一心に書いていました。(・・・ダメだ、涙が出ます・・・。)

「友達がおったから頑張れることが増えた。」

ああ、手紙を読みながら、先生も泣いています。「頑張らなくていいのに頑張りを強いられてきた子どもたちに、みんなといれたら楽しいと思える場所を作っていきたい。」(また涙が出ます・・)

先日の「逆転人生」で紹介された西成高校の「貧困学習」と繋がる授業だと思います。今の自分の置かれた状況に向き合い、友達と語り合う。世の中はいい人ばかりではないけれど悪い人ばかりでもなくて、いい人がいっぱいいる、友達がいる。「人でついた傷は人で癒える」

素晴らしい番組でした。でも同じことを繰り返し言いますが、先生方の努力なく形だけ真似ても、この授業は「生き」ません。それには先生方が工夫し目前の子どもたちに合わせる努力が絶対に必要で、そのためには「加配」(先生の数を増やす)が、必要です。「先生になりたい」と思う人が「先生になってよかった」と思えるような、きちんとした待遇を抜きにして、先生方に「努力」だけを強いるのは間違っています。

2021・2・5(金)光の春の到来です。