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本 心を病んだらいけないの?うつ病社会の処方箋

「ひきこもり」専門の精神科医・斎藤環さんと、「うつ」を体験した歴史学者與那覇潤さん。二人の「前例のない濃密な対話 4時間︎6回」(斎藤さん)をぐっと圧縮した本です。『この本で提案した処方箋はただひとつ、「対話」である。』と与那覇さんは前書きで提示しておられます。(ここから試し読みができます→)https://www.shinchosha.co.jp/book/603855/

この本は、第19回小林秀雄賞を受賞しました。受賞理由は以下の通りです。『書名をはるかに超えた、射程の広い見事な「平成史」。本書自体が「オープンダイアローグ」であり、一方通行ではない言葉の運動から生まれる、現代の俯瞰図である。』https://kangaeruhito.jp/article/16140

対話は、『「生きづらさ」を解きほぐす全9章』に分割されました。そしてそれぞれの章の後に「この章のポイント」がまとめられています。例えば「第一章 友達っていないといけないの?〜ヤンキー論争その後」の、あとがきは『「あなたが〇〇だったら」仲良くしてあげる、という条件をつけて来る人はほんとうの友達じゃない。たとえ相手と価値観が違って、お互いの主張に「同意」することができないときでも、人には「共感」を通じて存在を承認してもらう権利があることを、忘れないようにしよう。』

「第二章 家族ってそんなに大事なの?〜毒親ブームの副作用」の、あとがきは『精神分析のトラウマ論は、これが病気の原因だという「正解」を示すのではなく、家族関係を「見なおす」ためのきっかけを提供するもの。〈標準家族〉のイメージから外れていることをきにするより、自分自身がはつらつと生きられる新しい家族像を考えることの方が、ずっと大事だ。』

元気がもらえるあとがきですよね、全ての章のあとがきだけ集めて、壁に貼っておきたい・・・くらいです。ここで全てはご紹介できませんが、章立てとキーワードだけでもお示ししておきます。

第三章お金で買えないものってあるの?〜SNSと承認ビジネス  『承認は無条件』

第四章夢をあきらめたら負け組なの?〜自己啓発本にだまされない 『諦めは人生の本質』

第五章話でスベることはイタいことなの?〜発達障害バブルの功罪 『ハードルを下げる』

第六章人間はAIに追い抜かれるの?〜ダメな未来像と教育の失敗 『AI万能論は破綻する』

第七章不快にさせたらセクハラなの?〜息苦しくない公正さを『個人の尊厳を守る関係性』

第八章辞めたら人生終わりなの?〜働き過ぎの治し方 『質を問う=多様性こそ解決策』

終章 結局他人は他人なの?〜オープンダイアローグとコミュニズム『対話を通じて作る』

あとがきで、斎藤さんは、『「結論の出ない対話」の価値を対話を通じてさぐることが本書のもろみの一つだった。』と書いておられます。「結論の出ない対話」には「同意なき共感」が必要です。一方で「空気=自然」を大事にすると「その場にいてはっきり反対を表明しなかった」ことが共感=同意とみなされる「共感なき同意」がなされてしまい、非合理的非倫理的な空気が個人を抑圧してしまうのです。(前回取り上げた、「ネガティブ・ケイパビリティを保持する」ことが「結論のない対話」すなわち「同意なき共感」には必須となりますね。)

対話においては「議論や説得やアドバイス」はタブーです。それは相手の存在の「統合性」を否定し、自分と同一の存在であることを強いる行為になりかねないからです。それぞれの「主観」に至る過程に「共感する」ポイントをさがし、「違っていること」を歓迎し、「共存」する。そこにほんとうの意味での個人の主体性がもたらされ、まるで予想もしなかった形で「結論」「解決」がついてくる、と斎藤さんはまとめておられます。

2020年5月に発行され、話題となっているこの本を読んで多くのことを学びました。難しかったけれど。うーんと唸りながら、前回取り上げた本、「ネガティブ・ケイパビリティ 」https://manabimon.com/negative-cpbility/

本 ネガティブ・ケイパビリティ(答えのない事態に耐える力)〜帚木蓬生小説家・精神科医の帚木蓬生さんは、悩める現代人に最も必要なことは「共感力」だと考えておられます。この共感が成熟する過程で併走し、容易に答えの出ない事態に耐えうる力が「ネガティブ・ケイパビリティ 」です。容易に解決しそうにない悩みを持つ人々にお勧めの一冊です。...

と並行して読んだのが良かったと、私としては思いました。「共感すること」「話すこと」「共存すること」を大切にしていこうと思います。

日本人が初めて英語に触れたとき、「Love 」を「お大切」と訳した人の感覚、素晴らしいですね!

2021・5・20(木)上弦の月の日ですが大雨です。