映画『TOUCH /タッチ』を観ました。
https://www.universalpictures.jp/micro/touch-movie
アイスランドでベストセラーになったオラフ・オラフソン著の『Snerting』をバルタザール・コルマウクルが映画化、切ないラブストーリーです。
コロナパンデミックが始まった頃、初期の認知症の診断を受けた主人公クリストファー(エギル・オラフソン)は、医師から「やり残したこと」を問われ、50年前ロンドンで愛し合った恋人ミコを探す旅に出ることを決めます。パンデミック下でホテルで最後の客となった彼はおそらくそのおかげで50年前の店で働いていたヒトミ(メグ・クボ この方魅力的でした)と再会し、ミコの居場所を知り日本に向かいます。
エリート大学生のクリストファー(パルミ・コルマウクル)は、大学の不正を許せず、学業に興味を失い。大学を中退し、日本料理店「Nippon」でアルバイトを始め、良い人たちに囲まれた幸せな毎日を送ります。店主(本木雅弘)の娘ミコ(Koki)と恋に落ちたクリストファーの前から、ある日ふたりは忽然と消えてしまったのです。
ミコを求めるクリストファーの旅と、過去の記憶が、交互に展開され、さらに意外な事実をクリストファーは知ることになります。
「ヒバクシャ」という言葉に、深く囚われていた日本人の有りよう・・・今の私たちには窺い知ることの難しいその思いを、アイスランドの映画によって知らされたことに感嘆します。『黒い雨』『父と暮らせば』とはまた違った視点で、戦争の悲惨さを知ることになります。
アイスランドはNATO加盟国ですが、常備軍を持たない唯一の国(歴史上1度も軍隊を持ったことがないそう)です。また、世界で13番目に汚職の少ない国(2021年、デンマーク・フィンランド・オーストラリアが1番、日本は18番目)とされています。
そのようなアイスランドの人にとって日本という国はどのように映っているのか、この映画を見る限りは、その印象は良いように感じました。
若い恋人同士の二人、年老いて再会した二人(ミコ;奈良橋陽子)、が、それぞれにとても美しく魅力的です。有能な料理人なのに、「ヒバクシャ」という言葉にがんじがらめに絡め取られている悲しい父の姿を、本木雅弘さんが、また、経済戦士として戦った末に孤独に苛まれながらも明るいお人好しの男を演じる中村雅俊さん、ミコと同じアパートの堅実な住民を演じる柴田理恵さんが、陰影ある演技を刻みます。
また主人公クリストファーの家族たちの物語も、もっと知りたい、と思いました。父を心配する娘。養女しか持とうとしなかった妻。
アイスランド、を、始めアイルランド、と間違っていました。アイスランドに対して(アイルランドに対しても)無知なわたしですが、この映画を通して少し知ることができました。この物語がアイスランドの人々に愛されている、という事実はとても嬉しいです。
2025年2月5日 寒波到来、小さな花たちが健気に咲いています。クリストファーやミコに重なります。