津村記久子、好きです。『うどん陣営の受難』を読んでいます。面白いです。
10月25日(金)朝日新聞耕論に彼女の文章が載っていました。
『見くびるな、鼻つまみ一票』、、、拍手!「言いたいことを書いてくれた」という思いです。(10月22日デジタル版では『こいつらは怒らない」と思われてたまるか』という題になっていました。)
https://www.asahi.com/articles/ASSBK02RCSBKUPQJ00GM.html
以下抜き書きです。
かつては一票に「世の中をもう少しマシに」という思いを込めていました。今は「〈その人ではない〉という権利を行使する」という感覚です。投票は(中略)「それをやらないといいようにされるから」という自衛として向かうものになっています。
津村さん、大阪都構想の住民投票が2回も行われ、「投票しなければ自分の納得がいかない方向に物事が進んでいく」という状況に直面したことが、理由として大きいかもしれない、と言います。
フランス選挙戦でデモをしていた人が「マクロンもルペンもどちらも嫌だけど、デモができなくなるルペンは選ばない」と話していたのと同じ気持ちで投票しているとのことです。
『うどん屋陣営の受難』は4年に一回の会社の代表選挙をめぐり、会社の中の派閥争いの、しょーもなさや深刻さや、あれこれ起こる出来事に、まさに今日本の政治の世界で起きているいろいろなあれこれが映し出されています。
例えば
小説の舞台の会社の社則には、〈集会の自由〉の項目に「業務時間外の集会、デモ活動は禁止するものではない」とあります。緑川さんを応援していた主人公ですが、緑川さんは落選し、決選投票でどちらかの陣営を選ばなければならない、あるいは棄権することで意思表明する、という事態になっています。二つの陣営は、お互いを誹謗中傷する怪しい動きがあったり、集会の中でそれぞれの結束をアピールしたりしています。そんな中で、吉川さんが「でも、デモができるのは今のうちかもしれませんよね。ダジャレじゃないけど」「実施予定の施策の最後の方に、〈社内治安の強化〉や〈不要な社則の撤廃〉っていうのが小さく書いてあるんですよ。今は集会の自由があって放置されているけれど、それが撤廃されて禁止される可能性もあります」と指摘します。
これってまさに今の日本の状況を表していると言えますよね。
ゆるーい感じで、うどんを食べるために集まっているような主人公たちが、少しずつ変な流れに絡め取られていきそうになる、その中で彼らはどう動くのか。
『うどん陣営の受難』は、面白くて、恐ろしくて、でも確かにそうだ、鋭い、と思える短編小説で、津村さんらしいな、と改めて彼女の凄さを感じました。
https://publishing.unext.co.jp/book/title/7LVBuN7j7iAZTFB49baOyh
2024年10月26日(土)総選挙前日。(10月25日付朝日新聞耕論には、AIエンジニア安野貴博さん『AI使って建設的に議論』、日本若者協議会代表理事室橋祐貴さん『比例代表重視で多様性を』という提言も載っていました。なるほどそうだな、と思う意見でした。)