12月9日、池田のルークカフェで長年続いている土曜朝ヨガに久々に参加し、美味しいコーヒーをいただき、それから仲間たちと続けている源氏会(今は宇治十帖・宿木を読んでいます、楽しいよ)、そのあと皆で村木厚子さんの講演会「つながりあう力、豊かな社会」(箕面市民人権フォーラム)に行きました。
村木厚子さんは、厚生労働省在職中、2009年6月、虚偽公文書作成・同行使の容疑で逮捕され(みなさんご存知のように冤罪でした)、5ヶ月間拘置されました。この時に彼女は「人はだれでも一夜にして支えられる存在になる」ことを痛感したそうです。「職業人として、母として、自立している=支える存在である」ことを無意識に自負していたけれど、一人の人間が「支える側・支えられる側」の両面を持っていることに気づいたのです。
警察に拘束され、拘留された時、人は「自分が信じてもらえない」「食べることができない眠ることができない」と感じた時に心が折れ、やってもいない罪を認めてしまうことがままあるそうです。
村木さんは、弁護士、家族、職場の仲間たちから、「信じている」という「支援」を得て頑張ることができました、しかし、本当に元気が出たのは「高校生の娘のために」という気持ちが起きた時だそうです。「だれかのために」と思うことができる時、人は強くなれるのですね。
拘置所を出た後、裁判に臨んだ村木さん、大阪のお好み焼き屋さんで、見知らぬ人々から、さりげなくかけられたあたたかい声によっても支えられたと言います。そこで彼女は世間の大切さを感じたそうです。冷たい海に投げ出されたら体温を奪われて弱ってしまいます。
無罪を勝ち取り、職場復帰して6ヶ月後、東日本大震災が起き、村木さんは大臣のお供で郡山の避難所に赴きます。その時「村木さん、頑張ってね」という声をたくさんかけられたそうです。村木さんは恥ずかしいと感じたそうですが、さわやか福祉財団会長の堀田力さん(ロッキード事件で田中角栄元首相に論告求刑をしたなどで有名)から「人は人を励まして元気になるんだよ」と言われ、「そうだ、自分も娘のために頑張れたんだ、私を励ますことでみなさん元気になっておられるんだ」と思い返したそうです。
拘置所で村木さんは、女性受刑者たちが貧困や性暴力の被害の果てに薬物や売春の罪で受刑していること、や、正月に刑務所でおせち料理を食べたくて万引きなどの軽犯罪を繰り返す人が少なくないこと、を目の当たりにします。
受刑者の90%は男性で、年齢は40台が(男女共)一番多いという資料、また知能指数が80〜90の人(70未満の人が知的障害とされます)が最多であり、学歴にも恵まれないという資料、を提示し、彼らが「コミュニケーションが苦手なゆえに、取り調べや裁判で自己主張をできないこと」、また、出所後も「支援もなく、家族関係も崩壊し、世間からも冷たくされ居場所を消失している」ことが再犯につながっているのです。
そのような経験を経て、村木さんは、NPO法人を立ち上げ、社会的弱者にとっての刑事司法プロセスを保障し、社会復帰を進める仕組みを研究、提言、機能させるための基金を設立します。
そして「女の子たちがS0Sを出せていない」「支援団体が苦労している」という視点から、若草プロジェクトを立ち上げ、「①生きづらさを抱えた若い女性、支援者、社会をつなぐ。②現状を理解するために学ぶ。③問題の深刻さを広める」という三つの視点に基づいた活動を行なっています。
「相談すること」って本当に難しく、ハードルの高いこと。困難を抱えている人たちの多くは、「自分が悪い」と思い込まされていて、「もっと頑張ることができるんじゃないか」という言葉に常に晒されています。女の子たちは、「支援しますよ」と看板を掲げている公的支援の場所には行かず、まちかどで優しく声をかけてくれ、働く場所を提供してくれる「JKビジネス」のおにいさんたちに軽々とついていってしまう。
学校では成績や評価から縁遠い保健室が多く利用されている。そのように、まちの中に保健室があればいいね、という発想で2020年7月秋葉原に「まちなか保健室」が設置されました。
複数の困難が重なり、社会とのつながりが切れてしまっている人に対し、必要なものは「『安心できる居場所』『味方』『誇り』(大隈由紀子さん)」であり、「たくさんのものに少しずつ依存できるようになる『自立』(熊谷晋一郎さん)」なのです。
世界では『包括的成長』には「『大きすぎる格差』が妨げになる」・「鎖は一番弱いところで切れてしまうから一番弱いところを放っておかない=誰も取り残さないこと」・「イノベーション」・「公正で持続可能な仕事」・「人間中心の仕事」が必要である、という話し合いがなされています(ここ9年間のG20雇用労働大臣会合のテーマから)。
そのために、行政依存型社会から市民自立型社会にしていく必要がある。「みんなで何ができるか」という視点で人々が動き、他業種同士がつながることで、皆が生きやすくなります。
今、日本の生活水準と生産性は上位のOECD諸国をかなり下回っています。一方で失業率は一番低く、星人の読解力数的思考力もかなり高いです。資料からみると、日本に欠けているのは仲間外(異国、異業種)の人々と繋がる力であることがわかります。
村木さんが九州で聞いたとても印象に残った言葉・・・「風土は風の人と土の人が創る」・・・風の人とは新しくやってくる人のこと、土の人とは長くそこに住む人のこと。
異なる人たちが繋がることで世の中を変えていきたい・・・という村木さんの言葉「世の中は変化している。良くなってきている」に強い感銘を受けました。私には「世の中が良くなっている」という実感がもう一つありませんでした。変わらない様々な差別や暴力などのマイナス面に引っ張られているせいだと、気付きました。「よくなってきている」ところに目を向け、そのための努力を惜しまない村木さんから大きな力をいただいた素晴らしい講演会でした。
そして第二部は、二人の若い女性が登場し村木さんと語り合いました。生活困窮相談に関わっている研究者、と、相談居場所業務にたずさわっているNPO職員、です。
そこでの村木さんの珠玉の言葉。
「若い人と私の違いは、私は世の中が変わってきたことを知っているから、世の中は世の中は変える事ができると信じられるところかな。今理不尽と思うことも変えられる、と思っています。」
「制度は作ったその日から硬直化が始まる。それを防ぐのは現場の力です。学者が理論武装し、企業がお金を払い、公的制度が育てていく。自分は実践して効果のあったものを条文にしたけれどそれはいびつで未完成な法律でした、それを変えていくのは現場からの声なのです。評価を受けるためにデーターは必要、でも、データだけでは足りない。指標の作り方を考え直す必要があります。現場からの声をストーリーとして届ける、言語化することによって、様々な問題点を見直す事ができると考えています。」
「異なる人に見てもらうために考える、異なる人に説明するために考える、その事が世の中を変える力になります。」
時間の関係で途中退席したのが残念でしたが、勇気をもらった講演会でした。世の中を変えるための努力を今なお惜しみなく注いでおられる村木さん、そしてこのような講演会を企画・実行してくださった皆さん、ありがとうございました。
2023年12月11日 師走も早くも中盤・・・早いですね。
先日焼きあがった陶芸作品にグリーンを入れた写真を送ってもらいました。素敵ですね!!1月にグループ展をします。1月20日土曜日10時から16時、メイシアター中ホールにて、吹田市民文化祭に参加します。