manabimon(まなびもん)

映画二本(偶然と想像・由宇子の天秤)と展覧会二つ(塙保己一・上野リチ)

みたい映画が二本、「偶然と想像」・「由宇子の天秤」が、同じ映画館(出町座)で上映されていました。朝と晩。年末に京都に行くのが恒例だったのを今年は無理かなあ、と思っていましたが、「よし!行こう!」となりました。

間の時間は、友人からオススメの「おどろきの『群書類従』!〜塙保己一」(京都府立図書館)に決めました。家を出る直前、日曜美術館で「上野リチ」を取り上げていました。これは今日はちょっと無理かな・・・。

出町柳の駅を出ると、比叡山が美しく見えます。

北の山々は冠雪。川には鷺が佇んでいます。

商店街入り口の和菓子屋「出町ふたば」は相変わらずの人気で早くも行列が・・・

出町座に到着。

映画「偶然と想像・浜口竜介短編集」。村上春樹の短編集を一本の長編映画「ドライブ・マイ・カー」にまとめあげた浜口竜介監督が、ご自身で短編集を紡ぎました。

https://guzen-sozo.incline.life/

登場人物はとてもよく喋ります。その会話のリズムがこの映画の一つの魅力です。リズミカルなお喋りの中で日常が語られ、非日常が垣間見えてきます。そして「驚きと戸惑い」の展開。ざらっとした感触・緊張感と、滑らかな感触・ほっとする感覚が会話の中で交互にやってきます。そして「驚きの展開」と「え?なにそれ」という「戸惑い」。その感覚の中でジワリと湧き上がる共感と疑問。心の中が常に波立ちました。リハーサルに時間をとったとありましたが俳優たちの演技は「ここに辿り着いた。これしかない。」感のある確かなものでした。

3話から成る物語の展開に「驚き、戸惑い」ながら浸りつつ、「私なら・・・」と考えることもありましたが、「私なら・・・と考えることは無意味なんじゃないか」と指摘を受けました。映画の中の展開に身を任せるときに「私」を介在させないほうがその中に入り込める・・・確かにそうかもしれません。

2本目の映画「由宇子の天秤」。春本雄二郎監督。女子高校生・教師の自殺事件の真相を追うドキュメンタリーディレクターの由宇子は、権力(テレビ局)に屈することなく、事件をめぐるSNSや報道が引き起こす暴力について暴こうとします。事件の主役となった高校生や、教師の家族の不幸に寄り添い、彼らの本音を引き出そうとする由宇子の前に立ちはだかる「報道側の論理=悪いのは学校という構図」。一方で彼女自身が「事件の主役」になってしまうかもしれない危機が生じます。この物語はシチュエーションとしては古典的な構造を扱っています、が、その物語の展開には、やはり、息をのみ視線が釘付けになります。

長丁場を乗り切るために、カフェ「出町座のソコ」で食事。去年12月11日に「助けてほしい時には、“軽率”に「助けてほしい」と言うのです。」という言葉で天声人語に取り上げられた築地美香さんは、「出町座のソコ」を卒業しご自身のお店を出す準備をしておられるそうです。

助けてほしいときには“軽率”に「助けてほしい」と言うのです。朝日新聞、折々のことば(鷲田清一)で、出町座の静香さんの言葉が紹介されました。 「助けて欲しい時は軽率に助けて欲しいというのです。」 まさしくその通りだとおもいます。 ...

店長が代わっても美味しい「出町座のソコ」でした。目前で料理をしている様子を見られるのも嬉しい、ゆっくり館内用のパンフレットを読めるのも嬉しい。

映画の合間に、京都府立図書館「おどろきの『群書類従』!」に向かいました。

「おどろきの『群書類従』!」は、「アートを通して共生・多様性について考える18日間・CONNECT つながる・つづく・ひろがる」プロジェクトの中の一つです。江戸時代の知の巨人、塙保己一は、7歳(1752年)で失明しました。江戸時代の日本には盲目の人たちをまとめる組織があり、その代表者として「検校」という位がありました。15歳で江戸の雨富検校に入門した保己一は、手先を使う鍼灸・箏、琵琶演奏などには向かず、その抜群の記憶力を生かして学問の道を志します。その後、彼の力を高く評価した官民の厚い支援体制を受けて、日本の歴史・文化を後世に残すために40年の歳月をかけて「群書類従」を編纂、刊行しました。会場ではその版木のレプリカなどが展示されています。すごい人がいるものです!彼を支えた多くの人たちもすごい!

https://connect-art.jp/program/library-01/

この展示は1室だったので、時間が余りました。それでお隣の京都国立近代美術館に行きました。

1893年〜1967年の生涯を、ウィーン・京都で活躍したデザイナー、上野リチ。オーストリア人として生まれ、日本人として亡くなった彼女の足跡を辿り、1900年頃のオーストリア・ウィーンの工芸デザイン界の様子、日本への視線、そして1926年に夫伊三郎の故郷京都に戻ってからのリチを巡る様々なデザインの展開を丁寧に再現しています。色彩豊かなリチのデザインには心が躍りました。

ちょっと残念だったのはショップでの絵葉書の種類が少なかったことです。

ということで、穏やかに温かく過ごしやすい日和となった師走の京都で、あれこれ満喫した一日となりました。2本目の映画を観終わった後、空には美しい月が光っていました。流石に疲れた。でも楽しい一日でした。

2021・師走19日(日)