ブレディみかこさんの『両手にトカレフ』を読みました。
イギリスのある町、寒い冬の朝、お腹を空かせた14歳のミアは、図書館で、ある日本人女性の刑務所回顧録・カネコフミコの自伝と出会い、「君のような女の子が読んだら面白い本だと思うよ」と上流階級のアクセントの英語を喋る髭ぼうぼうのおじさんに言われます。
ミアは今彼女の周りにいる誰よりも、フミコを身近に感じます。彼女を取り巻く厳しい環境について、彼女は誰にも語ることができないのです。ミアとフミコの、辛く厳しい物語が交錯して進んでいきます。
ミアは自分では気づかないまま、周りとは違う環境の中、彼女ならではの感性を磨いていきます。その感性に惹かれる友人も現れます。同級生のウィルから、ラップのリリックを書いてくれ、と頼まれたことで、彼女の「世界」は少しずつ変わり始めます。
「あの団地の子どもたちは、荒れていく子たちも悲しいけれど、ミアのような子も悲しい。しっかりしている子が傷ついていないというわけではないから。ああいう子たちは身を潜めているから目立たないし、警察や福祉のレーダーには引っかかりにくいけれど、本当は同じように支援を必要としている」。ミアの周りには、そういうことを理解している大人が存在し、現れます。でもミアは、弟のチャーリーと離れたくないから、家を出てロンドンを目指します。
「もう、いっそ本当にここを出て行った方がよいのかもしれない。ここ(祖母の家)にいたら最後には殺される」、そんな考えが、フミコにはよぎりました。・・・・優しい朝鮮人のおかみさんが、「ご飯を食べて」と言ってくれたけれど、でも、フミコは怒られないために祖母の家に戻りました。でも結局フミコは、そこを出ます。「死ねばいいのだ」と。
ミアとフミコの物語が交錯し、共振して、ミアの中から生まれた歌に、ウィルは心を動かされ、迷った末にミアに言葉を送ります。その言葉により、また周りの人々によりミアとチャーリーは生き続けます。
フミコは「死ぬわけにはいかない」と思います。
ミアは「ここは前とは違った世界になっている」と思います。
二人の物語はまだまだ続きます・・・ブレディさんは書いていないけれど、私たちには調べたり想像したりすることができます。
よい本でした。
たった今、多くの子どもたちが辛い辛い毎日を送っている、という動かし難い事実があります。その事実を前にすると、自身の非力さに身のすくむ思いがしますが、ほんの少しのできることを、丁寧にやっていくほかない、ですね。
2024年12月1日(日) とうとう今年も最後の月になりました。Jリーグでは、J2の3位4位5位6位の4チームが、J1を目指して熾烈な争いを繰り広げています。このような一発で勝負が決まるプレーオフ制度はやめて、3位のチームがJ1のチームと入れ替え戦をする、とシンプルな制度にした方がよいと思います。1年間戦った結果に対してもっとリスペクトするべきだと思うのです。