石村嘉成さん。先日展覧会を観に行き大変心動かされたアーティストです。彼の動物の絵は、迫力があるだけでなく、動物たちが抱える辛く厳しい環境をもあらわしながら、しかし圧倒的な明るさで私たちに迫ってきます。
それは彼やご家族の有り様そのものなのだ、と、映画『新居浜ひかり物語 青いライオン』を観て感じました。
https://eiga.com/movie/102243/
1歳2ヶ月までは順調だった成長が、他の子と違った様子になり、嘉成くんと目が合わず呼びかけても応じてくれなくなります。母有希子さんは、さまざまな病院、施設を調べては訪れ、信じることのできる療育者に出会います。映画の中では檀ふみさんが演じています。
「本人にストレスを与えず機嫌良く暮らしましょう」という言葉は、今、あちらこちらで聞かれます(私もよく言います、、、)。でも毎日暮らしを共にしている親御さんが、そのような漠然としたアドバイスを受けても、ちっとも心が晴れず、「それでは成長できないのではないか」と思われるのは当然です。
トモニ療育センターの河島先生は、嘉成くんを、自閉症と診断し、「自閉症は脳の機能の障がいで、それは不治の病ではなく、適切で行き届いた療育をほどこすことで、克服できる」と明言したのでした。(『自閉症の画家が世界にはばたくまで』より)
「両親を奴隷にする子にしてはいけない。それは普通の子育てと同じです。」と河島先生。大暴れしても泣き喚いても、冷たくして、それでは状況は良くならないことを教える必要があるのです。
河島先生の助言もあり、3歳から嘉成くんは保育園に通います。そこの園長先生は「嘉成くんと生活することで、まわりの子どもたちは大人たちが教えられないことを学びます。私たちは、嘉成くんにむしろ来てほしいと思っているのです。」と積極的に嘉成くんを受け入れ増田。そして、先生方は「できない」「わからない」と決めつけず、他のこと同じように嘉成くんに経験を積み重ねさせていきました。
小学校入学が一つのハードルとなりました。しかし小学校も「毎日一緒に登校します」という母・有希子さんの言に、入学を認めてくれます。トラブルがあっても責めるのではなく、嘉成くんが学校を楽しんでくれていることを大事にする姿勢を持っていました。この校長先生を竹下景子さんが演じていました。
とはいえ、実際には、思うようにならないことも沢山あります、有希子さんは、新聞投稿の手段を使って、間接的に学校への要望を伝えることもありました(『自閉症の画家が世界にはばたくまで』より)。
小学校入学前から、嘉成さんは、松山市にある「ココロ発達療育センター」に1時間かけて通うようになりました。「発語プログラム」に定評のあるこのセンターに通うようになって2ヶ月後、嘉成さんは「オアアン(お母さん)」と発語しました。ココロ発達センターの先生たちは、目線と言葉で暴れそうになる子どもを抑制するのです。魔法のテクニックは「感情を消す」ことだそうです(『自閉症の画家が世界にはばたくまで』より)。
有希子さんは、癌と闘い、40歳でこの世を去ります。その無念を思うと、映画を観ながら涙が溢れました。
その後の父、和徳さんの奮戦については映画は多くを語りません。立派に成長し、集中して絵を描く嘉成さん、その嘉成さんを見守る高校の恩師寺尾先生、そして、登山や自転車を楽しむ父子の姿。
映画で語られない細かな点を知りたい方には本がおすすめです。『自閉用の画家が世界に羽ばたくまで 亡き母の想いを継いだ苦闘の子育て』(扶桑社)
https://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594088682
多くのことを教えられる本です。「嘉成さんの自閉症はとても重く、とてつもないエネルギーの子だった。ご両親が手を抜かず、正しい療育に取り組んだ結果なのだ」「正しい療育に取り組めばこれだけ落ち着いた大人に成長できることを広く知ってもらうために、ありのままを世間に伝える義務があるのですよ」、という河島先生の言葉に後を押されて、書かれた本です。ぜひ手に取ってご一読ください。
2024年師走 観たのは十三の七藝。
映画の帰りは、ねぎ焼き「やまもと」、みたらし団子「喜八洲」を楽しみ帰宅しました。 しょんべん小僧はクリスマス仕様になっていました。