先日、映画「はちどり」を観た時にもらったスケジュール表を見ていると、「精神0」という文字が目に入りました。確認すると、想田和弘監督のものに間違いない。思わず『やった〜!』・・・実はこの春から、想田和弘監督の「精神」という映画をDVDで観たくてもっとも手近な図書館に頼んだりしたのですが、手に入らなかったのです。
私は、斎藤環さんの著書「オープンダイアローグがひらく精神医療」で、映画「精神」を知りました。「心の病」とともに生きる人々が織りなす悲喜交々を鮮烈に描いたこの映画の中の、医師山本昌知さんのあり様を斎藤環さんは取り上げていました。山本さんのモットーは「病気ではなく人を看る」「本人の話に耳を傾ける」。
残念ながら「精神」を観ることはできていませんが、10年後を描いたこの作品を上映しているうちにぜひ観たいとおもい、早速映画館にやってきました。
想田和弘監督が「期せずして純愛映画になった」とおっしゃっている様に、この作品は、山本医師と妻・芳子さんの愛の記録となっています。精神科医療から引退することになった山本さんの傍らには、これまで彼を助け支えてきた芳子さんがニコニコと穏やかに、彼の助けを待っています。患者さんたちから頼られ生命線とされていた山本さんが、頼り生命線としてきた芳子さん。芳子さんはもう語りませんが、芳子さんの足跡を親友が語る時、芳子さんがはっきりとその風景を思い出していることが映像からわかります。
82歳のお二人の、厳しいけれど気品ある暮らしを、カメラはとらえます。優しさ溢れる人との関係を作ってこられたお二人への尊敬と慈愛の心もちが、私の中にも湧き上がりました。
映画館のカウンターでは、想田和弘監督のいくつかの興味深い作品のDVDは売っていたのですが、「精神」はありませんでした。残念。
2020.7.20
追記 2022年10月15日金曜日、映画「日本原牛と人の大地」を観ていたら、山本昌知医師夫妻が登場しました。びっくりすると同時にお元気そうなご様子にホッとしました。よき人々は繋がるんですね。