9月10日付朝日新聞13面「「有色の帝国」の呪縛(小熊英二インタビュー)」と「ティーンたちの抗議と目覚め くたばったアルゴリズム(ブレディみかこ 欧州季評)」面白く読みました。
国勢調査の季節ですね。かなり細かいことまで問われる調査です。しかし、「日本政府は国内の『民族』統計をとっておらず、日本に人種問題や民族問題は存在しないという立場を取ってき」た、という小熊さんの指摘はその通りのようです。小熊さんは、日本人は千年単位で歴史を共有している「民族」として「団結」し続けてきたというイメージを持ち、「同じ肌の色」の人々を差別しているという自覚なく支配し、分裂を引き起こしたり体制を乱したりする者たちを差別の対象としたといいます。そして「権利を訴える声」を自覚なしに「抑圧」しようとする力は今も続いていると。
確かに、私自身、「権利」を主張するとき、後ろめたさを感じ、「非難を覚悟しなければならない」という気持ちが、長い間、常につきまとってきた〜〜。「差別なんかしていない区別しているだけだ」と言われた言葉は針のように今も突き刺さっています。そして一方で自分を振り返る時、「差別」していないのか?他人を不当に非難していないか?〜〜難しい問題です。小熊さんは「まず、国内に差別があることを認識する。そこから始めてはどうでしょう。」とおっしゃっています。この言葉は「国」に対してでもあり、私たち一人一人の「内面」に対してでもあると思いました。
その下の、ブレディみかこさんの記事。コロナ禍によるロックダウンで、イギリスでは、大学入試のための、また義務教育修了時の統一試験が中止され、代わりに、学校での評価に各学校の過去三年間の成績の実績を加えてアルゴリズムで生徒達の評点が算出されたそうです。このアルゴリズムを使うと、公立校が私立校より不利に、公立の中でも貧困区の学校がより不利になっていたことがわかったのです。
アルゴリズムによる採点の不公平に対し、マスクをつけた若者たちが、「くたばれ、アルゴリズム」と、教育省の前で反対運動を繰り広げました。試験結果発表数日後には、採点方式が変更されたというのです。「 AIは人間の差別を反映する。僕たちはそのことをしっかり見て行かないといけないってみんな言っている」と2年後に試験を受けるみかこさんの息子さんの言。政府が決めたことだから仕方がないと諦めず連帯して声をあげ、政府をUターンさせた受験生に拍手!
ブレディみかこさんの「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」、お読みになった方も多いと思います。とても面白く、色々考えさせられる本でした。「僕」が、カトリックの小学校から、地元のいわゆる「底辺校」に入学することになった経緯、そして中学での一年半の出来事が綴られています。社会の分断を転写したような事件にぶつかり、悩み、進んでいく「僕」はたくましい。最後の章は「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとグリーン」です。悩みの中から新しい芽を伸ばしていく「ぼく」に拍手!!
日本でも大学入試制度変革をめぐる怪しさと不可解さに、若者たちが声をあげ、文科省(?)の方針(民間試験導入、記述式問題)が撤回されました。試験制度というのは常に矛盾を孕むものですが、まずは「公平」であることが何より大切です。住んでいる地域や持っているお金で、受験のチャンスが変わってくるという制度〜これは明らかな「差別」です。そこに声をあげた若者たちに拍手!!!
2020.長月 9/23 図書館で「女たちのテロル」ブレディみかこ 借りて読み始めました。これもすごい本です。