先日伊丹の熊谷守一展を観て、大変心を動かされました。(7・22)
友達の勧めもあり、図書館で「熊谷守一 いのちを見つめて」(青幻社)を借りました。
この本は昨年〜今年の巡回展の題名と同じです。残念ながら関西には来なかった。
http://www.seigensha.com/newbook/2019/03/25173452
守一さんの来し方がよくわかる素敵な本です。「モリカズ様式」の萌芽が56歳頃のこと、そして、76歳で軽い脳卒中の発作を起こした後に庭で過ごす時間が多くなり、小さな庭に息づく〝いのち〟を見つめて描くことで、「モリカズ様式」が定着したということです。
以前ミサヲおばあちゃんが60歳の時から笹餅を作り始めたことに驚きましたが、守一さんが自分の様式を見つけた時期についても同様に驚き、元気づけられます。
幾つになっても人間は成長するし、新しいことにどんどん挑戦できるのですよね。
展覧会で大好きな生の絵を見ることからも力をもらいますが、その作者の生き方について丁寧に書かれ、作品を載せた本からも、大いなる力をもらいます。
そしてこの本では、熊谷と同時代に生きた、「青木繁」と「坂本繁二郎」をとりあげ、3人の生涯を重ねることで、重層的に熊谷の生きた時代を表しています。日本の洋画が西洋から学ぶ時代が終わり、新しい日本の洋画を作り上げる時代として明治40年代を示しています。
そのような時代を背景として、守一は、他人から価値づけされた名所的風景を避けて自身特有の感性によって描くべき景色をさがしました。「書生さんたちが『こんなところは二度と来るものか、とても絵にならん』などと言って怒るような場所が私には合います」という熊谷がようやく絵を売って生活ができるようになった頃に第二次世界大戦が始まり、娘を失います。戦後は団体から離れて一人自らの絵を追求し続けて、「モリカズ様式」に辿り着き70歳を超えて開花したということです。
「下品な人は下品な絵をかきなさい。ばかな人はばかな絵をかきなさい。下手な人は下手な絵をかきなさい。」という言葉に励まされて、今日は陶芸で、守一さんの絵からアイデアをいただいて、お茶碗とお皿に猫や花や実の絵をかきました。守一さんのように、自分というフィルターを通しての表現など全くおぼつかない私ですが、描く時間は、とても楽しい時間です。さてどんな風に色を施すか、次回の陶芸も楽しみです。
2020.7.28(火)