詩の世界

今日は七夕③〜光源氏の涙〜

源氏物語の中で七夕の歌は一首だけだそうです。(友達からの受け売りです)

第四十一帖 幻 紫の上の一周忌間近の七月七日。

たなばたの 逢ふせは 雲のよそに見て 別れのにはに 露ぞおきそふ

七夕の牽牛と織女の逢瀬は雲の上の別世界のことと見て、その後朝の別れの庭の露に悲しみの涙を添えることよ。地上の人私は涙の露に濡れているのだ。

七月七日も例年と違う七夕たなばたで、音楽の遊びも行なわれずに、院(光源氏)は、寂しい退屈さをただ感じる日であった。星合いの空をながめに出る女房もなく、未明に一人しの床から起きて妻戸を押し開けると、前庭の草木の露が一面に光っているのが渡殿わたどのの戸から見渡された。光源氏が縁の外へ出て詠んだ歌。

独り悲しく亡くなった妻を思いながら詠じるシーンにだけ、七夕の歌を配した紫式部、さすがですね。

源氏物語のことを田辺聖子さんは次のように述べておられます。

「私が感動するのは藤原定家が、もの凄い戦乱の中で『源氏物語』を守ったという話ね。やはり定家みたいな男の人がいたから後に残るのね」男も女もなく皆が源氏物語に涙する素晴らしさを聖子さんは語ります。そしてその作者である紫式部について「『源氏物語』に長いこと付き合って考えたことは、作者の紫式部のことですね。細かく読めば読むほど面白い、素晴らしい女の人と思います。女の心理もよく書けていると思いますけど、男の心理・生理も見事に捉えていますね、それも多種多様な。」「想像ですけど、紫式部は男友達を年代別に沢山もっていたんじゃないかと思うの。」とも述べておられます。(新源氏物語 下 田辺聖子 新潮文庫)https://www.shinchosha.co.jp/book/117522/

あんなに素晴らしい小説を書ける人は性格のかなり悪い人に違いない、と、紫式部日記に書かれた多くの悪口なんかを引き合いに、よく彼女のことを評しますが、さてさて、紫式部ってどんな人だったのでしょうね。

2020.8.25(火)旧暦七夕。月は赤く光りながら沈もうとしています。コロナ禍の早い終息を月に願います。

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たつこ
たつこ
今でも手元にある「長くつ下のピッピ」「やかまし村のこどもたち」が読書体験の原点。「ギャ〜!」と叫ぶほかない失敗をたび重ねていまに至ります。

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