詩の世界

万葉の花 すみれ 〜NHK趣味の園芸〜

今朝3月21日(日)の朝、Eテレ趣味の園芸は、「万葉の花・最終回 すみれ〜野をなつかしむ春の花」です。最終回、ああ残念。

https://www.nhk.jp/p/syumi-engei/ts/WJ9WG8YL24/

日本植物友の会・すみれ博士の山田隆彦さんが京王百草園から登場。すみれの魅力は「愛らしい。冬の寒さを耐え忍び春に一斉に咲き出す豪華な美しさに力をもらう。」とおっしゃいます。ところが可憐な草というイメージのすみれは日本だけと言ってもよく、世界に22属あるすみれ科の、ほとんどは「木」なんだそうです、ビックリしました。スミレ科スミレ属の多年草のみが日本のすみれで、種類がとても多く(細かく分けると200種!)、日本はすみれ大国とも言われているそうです。万葉仮名では「須美禮」と表記されています。

春の野に すみれ摘みにと 来(こ)しわれそ 野をなつかしみ 一夜寝にける 山部赤人

春の野にすみれを摘もうとして来た私は、野があまりに懐かしいので、ひと夜寝てしまったことだ。

この歌のすみれは「タチツボスミレ」だと考えられるそうです。薄紫の日本どこでも見ることのできるすみれ。我が家のすみれもこれです。

茅花(ちばな)抜く 浅茅(あさじ)が原の つぼすみれ 今盛りなり わが恋ふらくは     大伴田村大嬢

茅花を抜いて食べる浅茅の原に生えるつぼすみれは、いま花盛りです。私のあなたにお逢いしたく思うこともまた〜〜。

茅萱(チガヤ)の咲くところはちょっと湿ったところが多く、この歌のすみれはツボスミレと考えられるそうです。タチツボスミレとツボスミレを並べてくださると、その大きさや形状の違いがよくわかり興味深かったです。

山田さんは他に、葉がフタバアオイの形と同じような形の「アオイスミレ」、

大きいのに「コスミレ」、

長野県小諸市で発見された重弁の「コモロスミレ」を紹介してくださいました。

春の野にすみれ摘みにと来しわれそ野をなつかしみ一夜寝にける  山部赤人

山辺赤人は奈良時代の宮廷歌人、聖武天皇の行幸に従い、自然の景色の美を詠じました。それまでの宮廷歌人は天皇を讃える歌を歌うことが多かったのですが、赤人は自然を詠じる叙景歌人に徹します。恋の歌もありません。平城京が建設され都市社会での生活が始まり、都会に住む人々は郊外に出かけることで心の安らぎを得ました。万葉文化館の井上さやかさんによると、「一夜寝る」というのは普通は男女の関係を示すことが多いので、スミレを女性と考える読み方もあるが、赤人の他の歌の特徴を考えると、女性をたとえていると言うよりも「野」そのものを愛してそこで一夜寝ると解釈した方がいい、とのことです。

赤人にとってはすみれは大自然そのものだったのですね。

番組では、「万葉の花シリーズ」を撮影した保山さんが登場。「風景の中にある日本古来の色を、原色が溢れている現代人に伝えたい」という思いで撮影したそうです。朝から晩まで花を見て寄り添っていると、花から「今撮って」という声が聞こえるそうです。「時間をかけて向き合うことで自然の美は見えてくる、万葉の時代の人たちも時間をかけて自然と向き合っていたのでは。」とおっしゃっています。

「花が終わったら植え替えましょう」〜〜あらら、うちのすみれは友達から譲り受けて大きな鉢に植えて以後、植え替えていません・・・植えっぱなしでもどんどん咲いてくれるので放置していました。番組のように小さな鉢に植えるのもいいかもしれないです。

最後に登場したすみれが「イソスミレ」。日本海側の海岸に生えていて、厳しい冬を耐えてのちに春に一斉に咲き出す美しさを見にいく旅行に変えました。すみれ研究家の山田さんは、その昔ハワイに決まっていた新婚旅行の行き先を変えて、イソスミレを見に行ったそうです。(「そのころ一週間まとめて休みを取ることができるのは新婚旅行くらいでしたからね」のお言葉に企業戦士として戦ってこられた山田さんの側面を見る思い。御忙しいお仕事の傍すみれ研究を続けてこられたのです。)

このイソスミレをはじめとして日本の多くのスミレたちは絶滅危惧種となっているそうです。ネットで検索したらたくさんのスミレの名前が絶滅危惧種として出てきました。多くの種類のスミレがあることに改めて驚きました。これらの花々が知らないうちに絶滅して行くのは本当に残念。私の住む大阪府では「アカネスミレ」

と「アケボノスミレ」が絶滅危惧となっていました。

「万葉のはな」シリーズは終了。家持くんと会えるのも最後か・・・。残念。

2021年3月21日(日)昨日はお彼岸でした。御墓参りに行くとお墓にすみれが咲こうとしていました。深い紫色のこのすみれはなんとういう名前なんでしょう?

「万葉のすみれの歌」 もお読みください。

万葉のすみれのうた 春を告げる花すみれ。万葉集の中から4首を抜き出してみました。山部赤人の歌に続く3首からは、大伴家持にとって大切な人々が浮かび上がってきました。偶然なのか意図された配置なのか?...
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たつこ
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今でも手元にある「長くつ下のピッピ」「やかまし村のこどもたち」が読書体験の原点。「ギャ〜!」と叫ぶほかない失敗をたび重ねていまに至ります。

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