Eテレ今夜10時からのこころの時間、「己の影を抱きしめて」。
清水真砂子さんが登場なさいました。
「ゲド戦記」の訳者としてお馴染みの方。素敵な方です。
周りと何かしらの距離を常に感じ、自分の中の暗い面を自覚していた彼女は、大学時代、魔女狩りについての授業を聞きながら「私は魔女を殺せという人と反対側にいる人間になりたい」と思ったそうです。
清水さんは、「ゲド戦記」に出会い、訳することを決意し、仕事を辞めます。その決意のおかげで、私たちは素晴らしい作品を素晴らしい訳文で読むことができました。
「影を抱きしめるゲドに涙が出た。影を排除するのではなく抱きしめる行為が素晴らしい。」と「ゲド戦記」に出会い清水さんは思ったそうです。
物語は長く続きます。…ゲドはその後魔法の力を失い無名をかちとります。有名な魔法使いになることを目指していたゲドは、「無名」であることの素晴らしさを手に入れるのです。
「本当に生きている人たちは、私が私が、と言わないの」と清水さんはおっしゃいます。教える大学の授業でも、名もない、しかし、素晴らしい仕事をしている人を招いて講義をしてもらい、それが学生たちにとても人気だったそうです。
「ゲド戦記」の中の「世界に希望が残っているとしたらそれは名もなき人の中にある」という言葉が一番好きだという清水さん。学生たちが「一人でいること」を恐れ、恥じることに対して、一人でいる時間を大事にして、自分と向き合ってほしいとおっしゃっています。
この清水さんの考えに私は長い間支えられて来ました。清水さんの著書三冊ご紹介します。
「子どもの本の現在」1984年https://www.iwanami.co.jp/book/b270269.html
「幸福に驚く力」2006年http://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/ka/0044.html
いずれも素晴らしい本です。
2020.6.11
追記(2021.4.20) 清水さんのエッセイが、高校の教科書に掲載されているようです。どこの出版社のものかわかる方がおられたら教えてください!!