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サイエンス・昆虫学における女性研究者 市民参加

9月1日付日経新聞26面「科学の扉」Next Viewsに「産官学で偏見・障害除け」「女性の理系阻む親の思い込み」という見出しの記事がありました。

STEM(科学・技術・工学・数学)分野に進む女性を増やそうと、産学官が躍起になていて、夏休みを利用して理系志望の女子中高生向けのイベントが各地で開かれているそうです。生徒たちの意識は変わりつつあるが、保護者の意識が遅れている、とのことです。東京大学の横山広美さんらの研究によると、男女の性的役割に対する意識が強い家庭だと、子女は理系に進まない傾向があり、「女子は数学が苦手」という保護者の偏見が障害になっているということだそうです。

今朝(9月2日)再放送されていた「英雄たちの選択 津田梅子」の最後で、中野信子さんが次のような話をしていました。頭の中で図形を回すという「メンタルローテーションタスク」を女性にやらせたときに、属性(女)を書かせた場合と、大学名を書かせた場合の、(元々の能力に差がない)二つの群において、有意差があるというのです。女性であるという属性を意識しただけで、メンタルローテーションワークの結果が悪くなるというのです。「その人の能力を制限しているのは、その人自身の中にあるバイアスかもしれない」というのです。

私自身、数学に苦手意識があり(なんとかしようとかなり努力したつもりはありますが)、高校時代の物理に至っては何が何だかわからないという印象がありました。理系に進むという選択が全くなかった自分ですが、ひょっとして、それは自分の中にバイアスをかけていたのかもしれないのかもしれない、という視点はこれまでありませんでした。

8月28日(水)京都国際会館での、第27回国際昆虫会議市民プログラム「サイエンス・昆虫学における女性研究者」「暴れる侵略者、立ち向かう昆虫学者」に参加しました。

3人の女性がそれぞれの立場から、科学分野における女性研究者のあり方について講演、興味深かったです。

CharlotteL ,R,Payneさん、「サイエンスにおける女性の時代」では、社会的、文化的に形成されている女性のライフサイクルにより、特に女性にとって「時間」は貴重な資源になっている、という視点が提示されました。科学分野での女性の活躍を真剣に促進し、支持維持するのであれば、時間とタイミングに配慮する必要があり、科学女性研究者のローモデルを多く作る必要がある、という提言がなされました。

Gabriela Caballeroさん「ギャップを埋める:フランスにおけるSTEM分野の女性」では、目には見えない障壁(glass ceiling)が多くの国で認識されており、その影響を打ち消す努力が必要である、という提言が、さまざまな調査数値を提示して示されました。

原田慶恵さん「日本の未来を担う女性研究者」では、原田さんご自身の経験が語られ、OECD加盟国中最も低い日本の女性研究者の割合(17.5%2021年)を指摘し、特に企業に所属する女性研究者の少なさが問題であり、一方で大学や公的機関では女性研究者は増加しつつある(27.5%)という点を評価し、男女の研究者が協力して成果を上げることが重要であると提言しました。

会場には制服を着た高校生たちや、子ども連れの人も多くいて、これからの社会で、科学の分野でも(もちろんどの分野でも)男女関係なく、それぞれがそれぞれの能力をのびのびと発揮出来る時代が来るといいな、若い人たちに期待したい、と強く思いました。

とはいえ、年齢を重ねた自分自身の、さまざまなバイアスをかけて物を見る癖をなおすことを意識しないとな、とも思いました。

後半のプログラムも大変魅力的でした。てんとう虫、虫こぶ、あり、という、三つの研究テーマにおける市民参加による新しい知見が語られました。SNSには大きな問題もありますが、SNSによって多くの有効な情報が共有され、わからなかったたくさんのことが解明されていることを実感しました。

虫を見ると「ムシ〜きらい〜いや〜」という子どもたちが増えていますが、子どもたちが男女関係なく、自然に虫と仲良くなれる、といいなあ、そのために、自分自身が虫にもっと興味を持ちたいなあ〜という思いを強くした市民プログラムでした。虫めづる姫君(堤中納言物語)読んでみようっと!

2024年9月2日

 

 

 

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たつこ
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今でも手元にある「長くつ下のピッピ」「やかまし村のこどもたち」が読書体験の原点。「ギャ〜!」と叫ぶほかない失敗をたび重ねていまに至ります。

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