高岡市万葉歴史資料館を出て、越中国国守館跡を訪ねると、そこは高岡市伏木気象資料館になっていました。大変趣のある建物です。
明治16年藤井能三さんらの手によって、日本初の私立測候所として設立され、この地に移転され、庁舎と測風塔が有形文化財に登録されたそうです。世の中には知らない凄い人がたくさんいるのだと改めて実感。この地では発掘調査が行われ、越中国国守館が置かれたと考えられています。家持はここに住んでいたのですね。
遙(はる)かに江(かわ)を泝(さかのぼ)る船人の歌を聞ける歌一首
朝床に 聞けば遙けし 射水川 朝漕ぎしつつ 歌ふ船人 (万葉集巻十九 4150)
あさどこに きけばはるけし いみずかわ あさこぎしつつ うたうふなびと
朝の寝床に聞いていると、遠くから歌が聞こえてくる。射水川で、朝、船を漕ぎながら歌っている船頭よ。
春の朝は寒い、寒い中を川を渡してゆく船頭のことを思う歌です。春霞の立ち込める朝の射水川の美しい風景が浮かび、船頭を思うあたたかな心が伝わる歌です。
近くに勝興寺があります。立派な境内。ここは越中国国府が置かれた場所です。
ひっそりと歌碑が立っていました。なんと書いてあるのかその場では読み取れなかったです。
あしひきの 山の木末の 寄生木取りて かざしつらくは 千年寿くとそ(巻十八4136)
あしひきの やまのこぬれの ほよとりて かざしつらくは ちとせほくとそ
山の梢(こずえ)のやどりぎ(樹木に寄生する常緑樹、尊重された)を取って髪に挿すのは千年の寿を祈ってのことよ。
天平勝宝二(750)年正月二日の宴での作です。
お寺門前の家持像に別れを告げて気多神社(越中国総社跡)へ向かいます。
大伴神社も併設されていました。
高岡に別れを告げ、富山市に向かいます。旅の最後の目的地は高志の国文学館です。
2020.9.2(水)満月が雲間より美しい姿を表しています。