平松洋子さんの『ルポ 筋肉と脂肪 アスリートに訊け』を読みました。
目次と前書きがここから読めます。
https://www.shinchosha.co.jp/book/306475/preview/
「私たちは、身体から離れては生きられない。その究極を表現するアスリートには、自分だけが知る身体の声がある」と、「虚心坦懐を心掛けて取材を重ねていくと」「それぞれのアスリートの立つ地平には、驚きと発見と学びがぎっしりと詰まっていることに圧倒された」と平松さんは書いています。
さまざまなスポーツの世界のアスリートたちを通して、また、サプリメントを作る側の人たち、体脂肪計を作った人たち、栄養を提供する側の人たちを通して、身体を作ることへのさまざまな取り組みを知ることができます。
数ある日本のスポーツ競技のうち、オフィシャルな栄養ガイドラインを発表している組織がは、公益財団法人日本サッカー協会だけだ、という事実もこの本で知りました。サッカーファンとしては少し誇らしいのですが、そんなこと言ってる場合ではありませんね。2017年、溢れかえる情報の中から正しいものを見極めることが難しい、そして、選手の生活習慣に目を向けることが第一歩だ、という視点から、JFA栄養ガイドラインは、発信されました。
https://www.jfa.jp/medical/a08.html
素晴らしい内容です。お子さんがスポーツをしている、いない、に関わらず、親として食事に対する考え方の基本をここから学ぶことができます。また、成長して、自分自身で身体のことを考えるときにも良い指針となります。
さて、本には、中澤佑二選手・長友佑都選手(ジョコビッチの食事に触発されたって)・鈴木啓太選手・横浜FC・香川真司選手・などの取り組みが紹介されています。
「第十章 弱さとスポーツ」にも強く心を惹かれました。忖度なく自身の心身の『現在』のありようを発信し続ける、『ただで走らない』陸上選手、新谷仁美さんの言葉はどれも強く印象に残りました。「生理のこと、女性の問題、指導者と選手の関係、試合の時の精神状態などは、ウィキペディアには書かれていない。〜一人ひとり違うから迷うことも多い」と考え、スポンサーの協力もあり2017年からSNSでの発信をするようになりました。
また、バスケットの小磯(濱口)典子さん。「弱音を吐いちゃいけない、他人より自分を責める、生きすぎた礼儀」に縛られていた彼女は、引退直前先輩に対し自分の意見を言うことができたあと、街の風景の色が違っていた、と言います。しかし引退後、自分を受け容れることのできない痛みが深まっていきました。熊谷晋一郎さんによって始められた「当事者研究」のグループに加わり、やっと、自身の経験について語ることができるようになった、けれどもまだ女子バスケットの試合は辛くて見ることができないそうです。
小磯(濱口)さんは、児童虐待をなくすための活動にも尽力したい、と考えています。
良い本でした。全部読むにこしたことはないのでしょうが、自分の好きなスポーツの部分だけ、とか、関心のある会社の部分だけとか、読むのもありかも。相撲・プロレス・陸上・野球・サッカー・バスケットボール・バトミントン・柔道・・・そしてグリコ・タニタ・栄養士など・・・さまざまな切り口から5年にわたる取材の末この本は出来上がりました。
平松さんありがとう。
2025年3月26日 昨日の日の出は5時58分。少し雲があり太陽が顔を出したのは6時過ぎていました赤くて美しい太陽でした。

