与那国島、石垣島、宮古島、沖縄本島、奄美大島 〜 美しい島々が「要塞化」していく。「要塞」恐ろしい響きです。
映画は、山里節子さんの歌から始まります。「また戦雲が湧き出してくるよ。恐ろしくて眠れない。」節子さんの歌は、強い力を持って広がり響きます。そして、それぞれの島に暮らす人々の日常が画面に映し出されていきます。決して楽ではない、過酷な歴史に翻弄されてきた暮らし、ですが、自然(海、魚、山羊、牛)と共にくらす人々の、前を向く強い眼差しが印象に残ります。
中国、北朝鮮の脅威が盛んに喧伝され、そこに「要塞」を作ることは日本の国のため、島の人々のためでもある、という人々がいます。自分の家の前に「要塞」が現れたら誰しも嫌なものですが見えないどこかに「要塞」ができて守ってもらうことには躊躇がありません。私もその一人なんだろうと思います。
2015年から8年間の取材記録を、三上智恵監督はまとめることができなかった、、、民意はNO、それでも米軍の基地建設を止めることはできない無力感から、、、といいます。しかし撮り溜めた映像のスピンオフを貸し出したところ、全国1300カ所で上映され、「平和のサテライト」が生まれ、それに後押しだされてこの映画が制作されたそうです。
沖縄本島では、島々意配備されたミサイル基地統括本部が間も無く完成し、本来は使われるはずのなかった民間の港が次々と軍事訓練に使われています。宮古島では、集落の程近くにミサイル基地、射撃訓練場を備えた弾薬庫が完成しました。石垣島では島の真ん中、島の人々が神宿ると信じていた山の中に、ミサイル基地が作られました。与那国島では町に何も知らされないまま、ミサイル基地建設が決まり、戦車やPAC積載車が公道を走ることになりました。
いずれの場所にも、その近くに住む人々の暮らしがあります。その暮らしの積み重ねの歴史があります。人々は分断され、自身の意見を言うことを躊躇い、躊躇っている間にどんどんことは進みます。
特に、衝撃だったのは、石垣島で、若者たち主導で始めた「石垣市平得大俣への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票を求める」運動が、1万4263筆を集めながら無視され、それどころか、議会が住民投票自体を条例から削除したという出来事です。
そもそも、石垣市自治基本条例では住民投票を求める多くの署名(有権者の1/4以上)が集まった時に市長には住民投票を実施する義務が生じることが明記されています。2018年、有権者の3分の1以上の署名を集めたのに、しかし「議会で否決されたことなので署名効力は消滅した」という見解により、住民投票は行われないままとなっています。人々はは、裁判所に判断を委ねましたが、現在、「棄却」が続いています。
2022年12月石垣市議会は、「敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を容認できない」という意見書を出しました。「軍拡に反対する地元の思いを発信すべきだと考え、腰を上げた」(花谷市議)結果のことでした。
映画を観ただけでは何も変わらないです。でも映画を観ること(や本を読むこと)で、現実に起きていることを知ることができ、映画制作に携わった人々への応援をすることができる、そう思って、次は『沖縄スパイ戦史』を読もうと思っています。
2024年4月22日(月)今日は「決断 運命を変えた3・11母子避難」と2本続けて観ました。「国は私たちを守ってくれない」とヒシヒシと感じましたが、一方で、「人との繋がりが人を守るのだ」とも感じました。