日本を学ぶ

源氏物語を巡って〜色と絵画〜細見美術館と中之島香雪美術館

源氏物語を巡って二つの展覧会に行きました。どちらもとても良かったです。

京都細見美術館の「吉岡幸雄の仕事と蒐集 日本の色」(1月5日〜4月11日)https://www.emuseum.or.jp/exhibition/ex071/index.html

と、中之島香雪美術館「源氏物語の絵画〜伝土佐光信「源氏系図」をめぐって」(前期1月30日〜2月21日まで。後期2月23日〜3月14日まで。)https://www.kosetsu-museum.or.jp/nakanoshima/exhibition/now/

吉岡幸雄さんは古代染を生業とし、古の植物染の奥行きの深さと美しさを人々に伝えた方です。残念ながら昨年秋急逝され、今回の展覧会はその追悼展です。

吉岡さんは、1971(昭和46)年早稲田大学卒業後「紫紅社」という美術図書出版社を設立、美術図書の編集と美術工芸の歴史を研学し多くの美術工芸図書を出版し、アートディレクターとしても活躍しました。1989(昭和63)年生家「染司よしおか」5代目当主を継ぎ、福田伝士氏と二人三脚で日本の伝統色の再現に取り組みました。

展覧会は、まず、伎楽装束や幡、修二会に奉納する染和紙による花など、東大寺、薬師寺、法隆寺に奉納した作品の数々が紹介されます。次に、源氏物語に登場する色を再現した布の展示。2008(平成20)年に源氏物語の色五十四帖を再現した仕事の一旦が垣間見れ圧巻です。何枚かの衣服を重ねて着る、その重ねる色の微妙な変化の美しさを、王朝の人々は季節の自然の草木花に例えて名前をつけているといいます。桜の襲(かさね)と一言に言っても、「薄花桜」「樺桜」などなど多くの名付けがあり、それぞれ重ねる色が違うのです。光源氏や女三宮の「桜の襲」、紫の上や明石の君、花散里、などに源氏が誂えた衣装の色合わせなどの美しさ繊細さに、ため息が出ます。

次の部屋には神々に捧げる造り花や吉岡さんが再現した法隆寺の「四騎獅子狩文錦」など、最後の部屋には吉岡父子の蒐集した古裂が展示されています。一つ一つ、一枚一枚、に見入ってしまいます。何度来てもきっと新しい発見があり、何度きてもその色の持つ深さ、古典的であるはずのデザインの斬新さに魅入られるに違いありません。

紫紅社から出版されている「源氏物語の色辞典」https://www.artbooks-shikosha.com/shop/1101/9784879405944.html

を手にしたいと思いましたが残念ながら近隣の図書館にはなくお取り寄せ中、代わりに「日本の色の十二ヶ月〜古代色の歴史とよしおか工房の仕事〜」(紫紅社)を借りて読んでいます。https://www.artbooks-shikosha.

一年十二ヶ月それぞれに似合う場所の色、例えば三月は東大寺お水取りに捧げる椿の作り花の「深紅」からお話がどんどん広がっていきます。その深紅を引き出す紅花を巡って四川省を訪ねたときのこと、紅花を巡る歴史、美しい赤を作る工程、梅の名所月ヶ瀬の烏梅からつくったクエン酸が鮮麗な赤を生み出すこと、「艶紅(ひかりべに)」の作り方、、、そして三月一日から十四日まで毎夜続く松明行の話。

私は二十年以上前にお水取り見学に行きました。勢いよく走る松明の火が、龍が火を吹きながら地を這うかのように錯覚されたものでした。

四月「襲の衣装」では

光源氏の桜の襲と女三宮の桜の襲の美しい写真の後に、美しい文章が展開されていきます。

何もかもが美しい本です。借りてよかった。

 

さてもう一つの展覧会「源氏物語の絵画」もとてもよかったです。

学生時代、教科書に出てくる源氏物語絵巻にはちっとも心動かされず、「みんな同じ顔になる日本画ってどうよ」「ただ金彩を施せばいいってもんでもないでしょう」などと突っ込んでいた私でした。しかし源氏物語を漫画にした「あさきゆめみし」を読んだとき、「これだってみんな同じ顔だ。でも物語を追っていくと違う顔になる。」ということに(当たり前のことですが)気づきました。

大切に作られ、大切に保管されて残されている多くの写本や絵巻、工芸品の存在は、それだけ源氏物語が多くの人に愛され続けたことの証であり、改めて紫式部の偉大さも感じました。人の姿の真実を醜美含めてあらわしているからこそ(光源氏って嫌なやつです)愛され続けたのだろうと思います。

源氏物語をまた読み直していきたい、いつか源氏物語をイメージしたお皿を作ってみたい、と思いました。

2021・如月〜弥生。 今日は3月2日。朝からの強い雨はやみ、青空が見えます。近所の馬酔木は満開。白モクレンはいよいよ花咲かせ始めました。ジョウビタキとも出会いました。

 

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たつこ
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今でも手元にある「長くつ下のピッピ」「やかまし村のこどもたち」が読書体験の原点。「ギャ〜!」と叫ぶほかない失敗をたび重ねていまに至ります。

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