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伊勢物語(100分de名著)〜男の友情と生き方(友への心の寄せ方)〜京都

100分de名著〜2011年から10年続くロングランの名番組。ご覧になっておられる方も多いと思います。私は「アンネの日記(アンネ・フランク)」「ファーブル昆虫記(アンリ・ファーブル)」「力なき者たちの力(ヴァーツラフ・ハヴェル)」「モモ(ミヒャエル・エンデ)」そして、河合隼雄特集が特に印象に残っています。

2020年11月の100分de名著は「伊勢物語」です。講師は高樹のぶ子さん、朗読は野村萬斎さん、お二人の表情たっぷりのお話、朗読にプラスしていつもの伊集院さんの鋭いコメントがとても面白いシリーズです。https://www.nhk.or.jp/meicho/

特に、先日放送された第三回「男の友情と生き方」では、主人公在原業平(825〜880)の三人の友人との友情が生き生きと描かれていました。

一人目、紀有常。素直でピュアな心根の有常は、藤原氏と政治的に対抗する立場にありながら全く力を発揮しません。有常の浮世離れした生真面目さは、天皇に娘を嫁がせた家柄なのに、のちに経済的な困窮を彼にもたらします。彼の高雅な心を愛していた業平は、時にその生真面目さを茶化しながらも、有常を助けます。

二人目、源融。源氏物語の主人公光源氏のモデルと言われる彼は、嵯峨天皇の皇子から臣籍降下し左大臣となります。彼は、自宅(河原院)の池に、なんと、海水を入れて海の魚を泳がせる程の、贅沢な家づくりをしますが、心満たされることはありません。その融の家にみすぼらしい老人の仮面を被ってやってきた業平は賛辞の歌を送ります。融は業平には自分の満たされない心を告げることができただろう、と高樹さんは分析します。

三人目、惟喬親王。彼も文徳天皇の第一皇子(紀有常の孫になります)ですが、祖父が藤原氏の台頭を受け入れたがために(本当に競争心のない紀有常)、29歳で自身の身を守るために(藤原氏に殺されるかもしれない)雪深い小野の地で出家します。業平は山奥に訪れて「思へども身をしわけねば目離れせぬ雪の積もるぞわが心なる(大切に思い慕っていても私の体は二つに分けることができないので、目も離せないぐらい降りしきる雪が積もって帰れなくなってしまったことこそ君の側にとどまる口実ができて私の本心が望むところです)」という歌を送ります。

自身も、平城天皇の直系ながら臣籍降下し、権力の座から離れたところで風雅の道を歩むと決めた業平は、世俗的な友情ではなく、真の友情を男性とも、おそらく女性とも結んだのだ、だから伊勢物語は長い時を経て今尚私たちを惹きつけるのでしょうね。高樹さんの、泉鏡花受賞作も読まねば・・・。https://books.rakuten.co.jp/rb/16306816/

友達が先日「鴨川の源流」に行ったところ、「惟喬親王ゆかりの地」で惟喬神社があったと写真を送ってくれました。とんでもない山の中だそうです。(バスが日に二本)

「鴨川の源」は惟喬神社から20分くらい歩いたとことの志明院の中。

山門から中は撮影禁止で、手前の駐車場でスケッチをしていた友人たちは「絵の具をつかった汚れた水は持ち帰るように」と厳しく言われたそうです。「水源を守る心がすごい!!」

丁度同じ日、私は別の友人と、京都国立博物館「皇室の名宝展」に行きました。展示には、伝紀貫之筆の万葉集があり、丁度、筑紫での、大伴旅人、百代、坂上郎女の歌のところでした。私は三枝和子さんの「万葉の華・小説坂上郎女」を読んだ直後だったので嬉しかったです。また、若冲の絵はやはり迫力がありました。他にも見どころ満点でした。予約制ですが割と空いていますので平日ならば飛び込みでオッケーだと思います。

https://www.kyohaku.go.jp/jp/

帰り美しい二日の月が京都の空に。

星も綺麗でした。2020.霜月

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たつこ
たつこ
今でも手元にある「長くつ下のピッピ」「やかまし村のこどもたち」が読書体験の原点。「ギャ〜!」と叫ぶほかない失敗をたび重ねていまに至ります。

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