「皇帝を倒せ!」2021年はじめ、ロシア各地で若者たちはプーチン大統領の支配に抗議の声をあげ、デモを行いました。しかし反体制派は排除され、指導者は刑務所に収監され、男性幹部の多くは亡命、残された女性たちが戦いを続けています。大統領に反対するものは「過激派」と認定され、麻薬の密売人の容疑をかけられたり、病院に収容されたり、友人まで調べられます。
弾圧が強まる中、プーチン政権に立ち向かう女性たちの姿を追った番組(2021年イギリス)「 FEARLESS:THE WOMEN FIGHTING PUTIN」。
2021年、政治活動家のルシア・シュテイン(23歳)は、ツィートで2万人を超えるフォロアーに呼びかけ抗議デモに出かけました。彼女は恋人のマーシャと共にデモに参加しようとする途中、連行され、その様子をSSNに投稿しました。
ヴィオレッタ・グルディナ(31歳)は「私は怖くない、自分たちの怒りの声を伝えたい、みんなそう思ったんです。」抗議デモに参加するのが初めてだという人が多くがデモに参加したといいます。
「最初は怯えていた人も恐れず行動する人を見て勇気が湧いたようです」イリーナ・ファイティアノヴァ(32歳)。20年以上のプーチン支配に対する過去最大規模の抗議デモで「何万人もの人を見て何かが変わるんじゃないかと思いました」。
プーチン政権の存続を望む人は3分の1に満たないといいます。多くの人は反体制派の指導者アレクセイ・ナワリヌイの登場を願っています。アレクセイ・ナワリヌイ、プーチン最大の政敵は2020年何者かに化学兵器の神経剤で襲われ、その後刑務所に収監されました。
抗議デモは実力行使で解散させられ、参加者は暴力を振るわれ、身柄を拘束されたりしました。2021年9月のロシア下院選挙を前にナワリヌイの関連団体は全て「過激派」とみなされ非合法化されました。
ブルマンスクの、ヴィオレッタ・グルディナは「当局が私たちの組織を過激派と認定したから、私たちは政治家になったのです」と言います。ナワリヌイの組織が潰された後勇気ある数人のメンバーが残りました。ほとんどは女性です。
イリーナはナワリヌイの組織のサンクトペテルブルグ支部で活動していました。「選挙に出るはずだった人は国外に出たり投獄されたりしたので私がやるしかなかった」と彼女は言います。彼女はSNSを使って人々に語ります。「当局がどのような刑罰を自分たちに課してくるかわからない、当局は人々に政治活動を諦めさせようとしているのです」。
政権による抑圧が強まっている当局は、選挙に立候補しようとするヴィオレッタを、罹っていない新型コロナの療養のために新型コロナの専門病院に入院させました。「ヴィオレッタは人々に新型コロナウィルスを広めようとしている」と新聞はかきたてます。選挙対策本部長ナターシャは、ヴィオレッタが収容されている病院に向かい、携帯で通信します。「入院というけれどここは医療刑務所。拷問と変わりない。私はここを出る方法を考えるからあなたは選挙に出る準備をして。ここでは人間扱いされていない。」とヴィオレッタ。
ルシア・シュテインとマーシャは、「ナワリヌスを支援する集会への参加を呼びかけて新型コロナウィルスを広めようとした」という罪に問われて、自宅に軟禁されています。「こんな国はありますか?」足につけられた追跡装置で行動が監視されています。こうしたやり方で反体制派の活動は抑圧されています。「それがロシアの司法制度」・・・モスクワで突然逮捕されたプッシーライオットに関わった人々の中にルシアもいました。ルシアの弁護人は「法律が公正に適応されている国の人たちにはわからないでしょうけど、プッシーライオットに関わったものは15日間隔離、という奇妙な措置が妥当と考える人がこの国にはいるのです。反体制派の人々への締め付けはますます厳しくなっています」と言います。また警察官にはむかった罪で15日間拘留されました。その日の午後に釈放されたマーシャは、自宅の外で大声をあげたとまた拘留されました。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%83%E3%83%88)
サンクトペテルブルグで選挙候補者として登録するために選挙委員会に向かったイリーナ・ファティハンノアは、胃が捩れそうな思いをして、書類の提出を終えました。しかし立候補するためには4000人以上の署名を集めなければなりません。ボランティアの女性が署名を集めようとすると「警察署へ連行する」と言われたり、たえず妨害されます。イリーナのポスターを傷つけたり、イリーナのボランティアに対し挑発する男、その挑発に乗ったらすぐ警察が来て拘束するのです。それでも警察は、挑発に乗らずに映像を元に訴えたボランティアを、反対に罪に問おうとします。
ブルマンスクではヴィオレッタの選挙活動が行き詰まっていました。「私たちはもうインターネットでしか発信できません。他の道は全て閉ざされてしまいました。」ヴィオレッタは、選挙活動を妨害され、立候補の手続きもできないまま、病院に閉じ込められています。彼女はハンガーストライキを行いました。自分の取れる最も強硬な手段に出た彼女を心配するナターシャ。「ほかに方法がありません。体はゆっくりと確実に死に向かっている」と
ルシアは、来いという警察官に黙ってついて行ったのに「警察官に刃向かった」罪で15日間拘留されました。ルシアとマーシャは同じ罪で別の場所に拘留されました。15日後釈放されたマーシャは、自宅の外で大声をあげたとまた拘留されました。釈放されたルシアは外に出てネイルサロンに行きました。ネイルサロンの近くで警察のワゴン車を見つけた友人の知らせに「身柄を確保されるかも」と裏口から逃げようとするルシア。家に戻ったルシア。プッシーライオットのメンバーは彼女以外全員逮捕されています。ルシアは「一人では大したことができないから放っておこうと思ったのかも」と言います。
サンクトペテルブルグのイリーナは、当局から「どれだけ多くの署名を集めても立候補は認められない」と言われました。憤るイリーナ。5日以内に不服申し立てをして認められれば立候補できる、「諦めずに自由なロシアを求めて闘い続けます。少し怖いけれど」とボランティア。しかし支持者と別れた後、勝ち目のない闘いに力を落とし、疲れ、涙するイリーナ。「力が湧いてこない。もううんざりです。全く不当です。なぜ私たちがこんな扱いを受けなければならないのか。常に強い自分でいるのに疲れました。公正な選挙にいつか立候補したい。」
ブルマンスクでは、ハンガーストライキを始めた8日後ヴィオレッタが退院を許されました。しかし新型コロナ感染違反の罪に問われ、そのまま裁判所へ移送されました。ナターシャはモスクワから現地へ向かい、ヴィオレッタの身に何が起きるか心配します「自宅軟禁か行動制限か」。ブルマンスクの空港でナターシャは警察官に囲まれます。麻薬密売の容疑だというのです。ナターシャは小部屋に連れて行かれ持ち物を全て調べられ服を脱ぐようにと言われました、スーツケースを持っていなかったことが幸いして、無罪放免となりました。なぜ無罪放免になったのか謎。ヴィオレッタも釈放されました。全ては選挙運動を辞めるようにという警告のようですが、二人は怯みません。ハンガーストライキのおかげで外に出ることができたヴィオレッタは、立候補の手続きに向かいます。ナワリヌイ派唯一の候補者です。
サンクトベテルブルグ。候補者として再登録が認められるかどうかイリーナが結果を待ちます。今回の立候補資格停止は、過激派もしくはテロ行為に加わったこと立証されたことが理由です。「人々に選択の機会を与えなければならない、私は過激派やテロ行為に加わったことがない、私の名前が投票用紙に乗ることを希望します。」とイリーナは語りますが判定する人々の表情は固く変わりません。イリーナの立候補は却下されました。「どうすればロシアの政治に合法的に参加できるのかわかりません。悲しいです。私はもう皆に抗議デモを呼びかけることができません。抗議デモを呼びかけたらすぐに訴追されます。」とイリーナ。
ルシアは新型コロナウイルス感染防止法を破ってデモした罪に問われます。ルシアの弁護士は最善を尽くしますが、「判事は大したことだとは思わずに判決を下すでしょう、行動は制限されるでしょう」「これが人権侵害の一つ。権力者はこういうやり方で若者を怖がらせ、でも参加をやめさせます。抑圧、迫害が日常的に行われているのです」。判決は予想通り1年間の行動制限でした。もちろん控訴します。8ヶ月前にデモに参加するためにでたマンションにルシアとマーシャは戻ってきました。「政府は私たちの出国を望んでいるけれど私たちはここに残る。」「政治亡命をしたらロシアに戻ってこられなくなるそれはいや。」「プーチンがいなくなってももっと悪くなるかもしれない。」
ヴィオレッタ・グルディに連絡があり、過激派・テロ組織との関係があったという報告を理由に立候補資格を失う、という決定が下されます。「プーチンはほんの僅かでも政権に影響を及ぼしそうな人間を手当たり次第に潰すのです。一巻の終わりです。これからどうしたらいいでしょうか。権力者はもがき苦しんでいる断末魔です。手当たり次第に自分に反対する人間を潰そうとしている。」「国外移住のことはよく考えます。でもここは私の祖国。圧力を理由に移住はしたくない。なぜ私が出ていかなければならない?ナワリヌイも私も自分の国を愛しすぎているのかも。」
10年の実刑が確定しそうなイリーナ、「ギリギリまで頑張るつもりです。この国を出たくない。何をしても無駄だという人がいるけれど、そんなことはありません。」
しかし
「もう限界です、元気を取りもどすことができません。迫害されますから。心が折れてしまった。彼らの手の届かないところで自分を立て直す必要があります」と涙を流すヴィオレッタ。
その後映像は選挙後の国会の様子を映し出し「2021年9月の下院選挙で与党統一ロシアは議席の3分の2以上を獲得した。投票に不正があったという分析もある。与党以外も全てロシア政府の承認を得た政党である中の選挙。」「ロシア政府は厳しい戦いだったが公正な選挙だったと主張。在英ロシア大使館にコメントを求めたがコメントはなし。」という文字が流れました。イギリスの番組でした。
今起きている恐ろしい出来事の前兆を描いた番組でした。他国のこととは思えないです。長期にわたりウクライナで行われている殺戮行為は、ロシアの人々の言論や自由を弾圧した上で行われているものです。
2022年4月14日(木) この番組は3月21日の「BS世界のドキュメンタリー」で放映されました。色々あって今日やっと録画したものを観ることができました。平和を守るため、穏やかな生活を守るため、自分の人生を犠牲にして闘う女性たちの勇気に心から敬意を表します。この日本に居てさえ、自分の言動が自分の人生にマイナスに響くのではないかと口を閉ざすことは多くある。現在のロシアで政権と闘おうという気持ちを持つ人々、戦う人々に幸あれと願います。
https://www.nhk.jp/p/wdoc/ts/88Z7X45XZY/list/
収監中のナワリヌイ氏に、裁判所は3月22日詐欺や法廷侮辱の罪で禁固9年が言い渡されました。日本政府は「即時かつ無条件の釈放を求めていく」としています。ナワリヌイ氏は、ウクライナへの攻撃に対し抗議する反戦デモをするようSNSを通じてロシア国民に呼びかけています。
https://www.jiji.com/jc/v7?id=202008Navalny