自分と向き合う技術

わたしの言葉が輝く〜きつ音のこどもたちの二週間(ドキュランドへようこそ)

「言葉が滑らかに出ないきつ音の人は世界で7000万人以上。幼児の20人に1人。成長にすれ解消する場合もあるが、まだ確実に治す方法はない」という字幕から番組は始まりました。9月3日(金)Eテレ「ドキュランドへようこそ」はきつ音に悩む子どもたちが登場しました。

*素晴らしい歌を歌うジュリアナ。「自分が教科書を読む番になると『あいつ時間かかるんだよな』小学校の時はきつ音は世界でわたし一人だけと思っていました。『わたしなんかいないほうがいい』なんて自分の殻に閉じこもって歌で発散していました。歌は悲しみ痛み不安すべてを忘れさせてくれます。」

ターロ・アレクサンダー(NPO 「SAY」創始者)がきつ音の青少年のための活動を始めた頃、アメリカ各地で講演を行うと「近所でもそういう活動があればいいのに」という声をいつも聞きました。そして、彼は、きつ音の子たちがどこからでも参加できるキャンプをやろうと思いついたのです。彼はキャンプの参加者に語りかけます。「私は5歳の頃からきつ音があります。26歳まで同じ仲間に会ったことがなかったので、きつ音は自分だけの問題だと思ったいました。子供の頃憧れていたのはこんな場所でした。同じ辛さを知る仲間と過ごせる場所です。出そうとする言葉を遮られたり、先に言われたり、奇異に見られる。うんざりです。でも君たちの言葉は輝いている。今のありのままでいいんです。みんないろいろな場所から来ています。話し方も歩き方も来ているものもみんな違います。でも誰もが人間として話を聞いてほしいと願います。話すのに必要な時間を誰もが与えられるべきです。」

ノースカロライナ州ヘンダーソンビルの美しい森の中でキャンプは今年(2020)も開かれました。参加した子どもたちの声。

*「キャンプ初日に配られたアンケートで『自分に自信がある?』に対して『全くない』と答えた。

*「『教室や人前で話すのがどれだけ怖いか知らないんだ』と、とうさんに言いました。『そうだねごめん』ととうさんは僕を見て言いました。」

*「ここは自分らしくいられる唯一の場所です。ターロは素晴らしい場所を作ってくれました。独りぼっちだと感じていた私はどれだけ救われたか」

*マルコムが4歳の時に父が母に発砲したあと自殺するのを目撃しました。彼は心を閉ざしてしまいました。学校で発表するのを嫌がりました、学校の先生はきつ音があの子のせいみたいに、「なんとかしてくれ」と言いました。マルコムは沢山の場所でいじめられました。

*サラは「みんなきつ音のことを知らないのです」と言います。彼女が父に「遊ぼう」と言った時父は彼女のきつ音に気づきました。学校から帰ると心を閉ざした様子でした。ある日「わたしは学校から帰るとくたくたなの。限界なの。」と言いました。

*ウィルは「いつも人に笑われないかと心配だったので最初にキャンプに参加した時は妙な感じでした。言葉に詰まっても変だと思われないのです。」と言います。彼の先生はウィルのことを「堂々とクラスのために活躍し、独創的で素晴らしい文章を書きます。」と紹介します。きつ音が自分に与えた影響を彼はこう書きました。「僕の人格形成はまさに悲劇的アイロニー。美しい文章が心に響くその音が好きだ。また書くことでことで美を創造することが好きだ。言葉が喉で抑えられ出てこない、あのいつもの感覚・・・僕の最大の特徴は198センチの身長ではない。僕を僕たらしめる特徴は声を発する時に現れる、切れ切れで美しくも不恰好な言葉たちこそ、僕なんだ。」

ターロ・アレクサンダー:「多くの子どもたちが亀みたいに固い殻に閉じこもっている。世の中を生き延びるため殻をかぶり箱に閉じこもっている。だからここではみんなが話に耳を傾けるんだ、とか、きつ音を気にせず急かさず待つよ、と言っても、すぐにはピンとこないんです。固い甲羅を手放すのは難しいんです。」

キャンプでは、水泳やボルタリングやゲームやいろいろなことが行われています。ゲームに参加できない子どもに語りかけるスタッフの姿。ターロ・アレクサンダー:「ここに来る子どもたちの中には暗い闇の中にいて、自分を肯定できない子、自殺しようとした子、劣等感に苛まれている子もいます。キャンプが一人一人にとって意義のある体験、人生を少しでも変えるものであってほしい。人生の転換点になってほしいと思います。」

キャンプでは、年長と年少に分けて一人ずつペアを作ります。最初のペアが発表されます。ウィルとマルコムがペアになりました。他にも沢山のペアができ、会話を重ねて行きます。そして、披露するときがきました。テーマは「チームワーク」。披露したいと思うチームから前に出てマイクを持ちます。

**「友情とは何かを知りたい」・・・「強い絆は目に見えない」・「友達とはいつでも何でも話していい」・「言葉に詰まってもあざ笑わない」

**僕たちは詩を作ったので披露します。「友情は最高 輝いている相棒 友情はクール のんびりプール ふざけすぎはフール 友情は楽しい 太陽みたいにまぶしい」小さい子が大きい子に耳打ちします・・「友情はすごい フクロネズミみたい」美しい言葉が紡がれ歓声が湧きます。

*座って心を落ち着けて語ろうとするガイ。*肩を抱いてもらって自己紹介するケンドル。

**彼にとって最後のキャンプだと年長者を紹介して涙する少年、抱き合う二人。

ターロ・アレクサンダー:この場所の目的は子どもたちに希望を与え、自分が素晴らしい存在であるという認識を与えることです。本当の自分でいいんだと自信をつけて日常生活に送り出すんです。きつ音があるゆえの悲しみがあり、涙を流さなければなりません。でも思いをみんなと共有できれば、虹の向こう側に、自分の別の一面が、新しい自分が発見できるかもしれません。私の3歳の娘もきつ音です。彼女がありのままの自分を受け入れる準備を私はしています。

親たちも話し合います。きつ音を改善できない子どもに無力感を抱き、悩み、迷う、親たち。ボストンでプログラムを受けてきつ音を治したメラニーに対して父親は迷います。きつ音の改善を望むが、それは続かないかもしれない。メラニー:「わたしはどん底にいて頂上など知るよしもない」〜〜〜「わたしは居場所を見つけた。SAYのキャンプはわたしの家。孤独は永遠に去った」

主催者側と参加者側のバスケットボールの試合はとても盛り上がります。真剣勝負。見事参加者側の勝利。「今日はチャンピオンシップデイ、それは一人一人がチャンピオンだから。大変な集団生活の中、一人一人が輝いてチャンピオンになった。君達はいつでもチャンピオンになれる力を持っている。」というターロ・アレクサンダー。

ターロ・アレクサンダー:きつ音の悩みを話せる相手がいなかった辛さを自覚した時、隠していたことが間違いだと気付いたのです。何を決めるのにも恐怖心が私を支配していた。あの子たちには恐怖心に日々の生活を奪われて欲しくないのです。

最終日。マルコムとウィルは理解しあい心を通わせています。「マルコムは僕には想像もできないような辛い体験をしてきた。でも笑顔を見せてくれる。感謝しかありません。」ターロ・アレクサンダーは皆に語ります。「明日の夜どこにいても空を見上げよう、そして空をみよう。私たちも空を見ている。そして『君ならできる』とささやく。『ひとりぼっちじゃない』とささやく。」と

キャンプの仲間から離れるのは心配だ、と、ジュリアナの母。ジュリアナは歌のリハーサルに挑んでいます。「変わろうと思うなら最高の自分になって♫」とジュリアナは歌い、ターロと抱き合います。彼女が8歳の時ターロは彼女の能力に気づき母に告げました。

卒業の式典が始まります。「人生はレンガを積んでいくようなものです。今夜は彼らの人生を作る大事なレンガの一片となるでしょう。」卒業生一人一人が700人を超える観客の前で自分の決意を語ります。ウィルも登場。そして、ジュリアナ:「自信という言葉は私の語彙にはありませんでした。なぜ私なの?私は生きていていいの?でもSAYのおかげで自分の声を得ました。今は自分にはこの世界で生きる目的と理由があると感じています。ご静聴ありがとうございました。」拍手!卒業生たちが「私に話をさせて」という横断幕を掲げます。そして「楽しもう楽しもう、自由に言おう、盛り上がろう、話そう、愛、さあ楽しくやろう」♫

サラは高校の卒業式で、卒業生代表に選ばれスピーチ。マルコムは大リーグ機構の「困難の克服作文コンテスト」で優勝。ウィルはジョージタウン大学でアメリカ研究と政治を専攻。きつ音の青少年を支援するSAYのプログラムは卓越した課外活動として表彰された。

「My Beautiful Stuter」きつ音の子たちの二週間  学ぶことの多い番組でした。「治す」ことに注力するよりもまずはそのままの自分でいいんだ、と思える気持ちを育むことの大切さ、困難さ。一人ではできない、でもチームを組めば出来る。悩みを分かち合い、お互いに理解しあい、そして自分を理解して受け入れたら、前を向くことができる。

https://www.nhk.jp/p/docland/ts/KZGVPVRXZN/episode/te/ZY8929V3X8/

2021・9・5(日)

 

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たつこ
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今でも手元にある「長くつ下のピッピ」「やかまし村のこどもたち」が読書体験の原点。「ギャ〜!」と叫ぶほかない失敗をたび重ねていまに至ります。

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