日本を学ぶ

映画 原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち

2014年5月21日 大飯原発3・4号機運転差止請求事件判決において、原子炉の運転を差止める判決を下し、さらに2015年4月14日関西電力高浜原発3・4号機の再稼働差止の仮処分決定(2018年名古屋高等裁判所により取り消し)をだした、当時福井地方裁判所の樋口秀明裁判長。この映画の主人公のひとりです。

2017年に定年退職された後、弁護士登録をせずに、原発の危険性を多くの人に知ってもらうために講演活動を行っておられます。2021年「私が原発を止めた理由(旬報社)」を出版しました。https://www.amazon.co.jp/%E7%A7%81%E3%81%8C%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%82%92%E6%AD%A2%E3%82%81%E3%81%9F%E7%90%86%E7%94%B1-%E6%A8%8B%E5%8F%A3%E8%8B%B1%E6%98%8E/dp/4845116804

経済弁護士として、ダグラス・グラマン事件や、ロッテ対グリコ比較広告事件、スルガ銀行巨大不正融資事件などの大型事件を手がける一方で、中国残留孤児とフィリピン残留日本人の国籍取得支援を行い、全国の原発差止訴訟を「脱原発弁護団全国連絡会」を立ち上げ議論協力する体制を作った、河合弘之弁護士。映画「日本と原発」「日本と原発4年後」「日本と再生」を制作・監督し、全国の原発訴訟の証拠資料として提出しておられます。「この映画で『脱原発と自然エネルギーは車の両輪』を具体的に示した」と言います。

この映画の監督小原浩靖さんは元CMディレクター。河合さんと組んでこれまで8本の映画を作ってきました。

原発の耐震性は一般家庭よりも低い・・・驚きました。そんな耐震性の低い原発を、電力会社が設置する根拠は「この原発敷地に限っては強い地震は来ませんから安心してください」。そんな電力会社の言い分を信用するのかしないのか、が原発訴訟の本質だ、とても簡単なことだ、と樋口さんは言います。

「ガル」で比較する通称・樋口理論グラフはとてもわかりやすいものです。「ガル」とは観測地点での地震の加速度のことをいいます。三井ホームは5115ガル、住友林業は3406ガルを基準として住宅の耐震設計を行っています。3・11東北地方太平洋地域地震は2933ガルだったのに対し、原発の耐震設計では、基準地震動650ガルとなっています。びっくりするほど低い値ですね。

樋口さんは、原発差止判決の理由として「ひとたび深刻な事故が起これば多くの人の生命、身体やその生活基盤に重大な被害を及ぼす」「福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである」と述べています。

地球環境にもよく、コストが一番かからない発電方法として、太陽光発電があります。映画には近藤恵(けい)さんが登場します。

3・11を経験、一旦廃業という辛い目にあった福島市二本松の近藤恵さんは、もうひとりの主人公。近藤さんは過酷な状況の中、樋口さんや河合さんたちの、原発稼働差止運動に連動するように、ソーラシェアリングで兼業農業に復帰しました。太陽光発電を行っているパネルの下で作物を作り、またソーラパネルを垂直に設置し、より農作業のしやすい環境を作り、株式会社Sunshine(農業法人)・二本松営農ソーラ株式会社・二本松ご当地エネルギーをみんなで考える株式会社、を設立しました。

福島原発事故で兵庫に自主避難し、三重県の農業高校を卒業した、塚田晴(はる)さんは高校卒業と同時に福島県二本松の近藤さんの会社「Sunshine」に就職しました。そこで、発電設備、農場担当の菅野雄貴さんと共に、大豆、ホップ、人参、有機エゴマ、ブドウなどの栽培を行っています。

二本松で有機農業の草分けとして活躍した、大内信一さん、その教えを受け、有機農業と発電事業に取り組んでいる大内督(おさむ)さん、ソーラシェアリング発案者長島彬(あきら)さん、クレヨンハウス主宰の落合恵子さん、そしてこの映画作品を企画した飯田哲也さん、などが登場します。今後のエネルギー政策や農業の向かう方向について語ります。

小原浩靖監督は、「わかりやすい映画を作った」と語っています。そう、とてもわかりやすい映画でした。日本の原発は危険極まりなく、政府も電力会社もそれでも「クリーン」と称して原発を稼働させようとしている。自然エネルギー発電への切替を地道に行っていくことが今後の日本にとって必要なことである、ということです。

監督は「この映画を作ることは、樋口さんの分身を創ることでもある」と、日本中を駆け巡り講演会を行う樋口さんの分身を映画という魔術によって創り出す喜びと、原発をとめるという大きな使命を負うという決意を語っています。

とても良い映画を観ました。原発訴訟において国側に立つ裁判官が多く、原発再稼働を政府は宣言しています。3・11から11年が経ち、原発を容認する空気は大きくなっています。しかし、「一人一人の命を守る側」に立つ、という思いを、この映画を観て多くの人が持つようになるといいな、と思いました。そのために自分に何ができるか、まずはできることから少しずつ実行していこう、とも思いました。

2021・9・25(日)映画館を出てするのところにある、ねぎ焼きの店「やまもと」に寄るのも七藝にくる楽しみの一つです。美味しいねぎ焼きでエネルギーを注入して、大阪中之島美術館に向かい、岡本太郎展(10月2日まで)も堪能しました。岡本太郎の思考、エネルギーと同質のものが、今日観た映画に登場した人たちに確実に繋がっていると感じました。良い一日でした。

http://www.negiyaki-yamamoto.com/

https://taro2022.jp/

自画像は戦後すぐに描かれたこれ一枚だそうです。意外でした。鉛筆で描かれた繊細な表情に惹かれました。

撮影可能だったのであちらこちらでバシャバシャ音がしていました。お気に入りの一枚を撮っている人たち幸せそうでした。

 

私のお気に入りはこれ。

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たつこ
たつこ
今でも手元にある「長くつ下のピッピ」「やかまし村のこどもたち」が読書体験の原点。「ギャ〜!」と叫ぶほかない失敗をたび重ねていまに至ります。

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