このブログで取り上げた「ネガティブ・ケイパビリティ」の考え方がどんどん広がっていますね。いいですねえ。なんと、今日は、「クローズアップ現代」で取り上げていました。
モヤモヤする力の有効性については多くの人が言及しています。そして多くの人がこの考え方により「生きやすく」なっています。
例えば、「雑談ヨガ」インストラクターの尾石晴さん。参加者のモヤモヤに寄り添うことを意識してるそうです。3年前まで外資系企業に勤めていた尾石さん。「いち早く答えを出すこと」を重視して生きてきました。「分刻みのスケジュールを組み、それを消していくことがいい生き方で、話は『結論から言ってほしい』と思っていた」。しかし出産後、子育てと仕事を両立するようになって、うまくいかない日々にジレンマを感じていました。その中で本「ネガティブケイパビリティ 」に出会います。そして「効率性を上げることよりは、モヤモヤを持っておくという意識が大事なんじゃないか、そが豊かな人生につながるなるんじゃないか」という考え方に辿り着き、すぐ答えの出ないモヤモヤを書き出すようになり、「悩むことは当たり前だと思い、人の悩みや考えに寄り添うことができるようになった、ジャッジをすぐするのをやめた、モヤモヤする力がコンパス(羅針盤)のような力になっている」といいます。
モヤモヤする力が生きる希望になった那須かおりさん。生まれつき聴覚に異常があり人工内耳をつけていて、「聞こえる世界」「手話を使う正解」のどちらの世界にも入れない、狭間の世界で苦しんでいました。大学院進学後鬱病になり、30代の時は自殺も考え、絶望の中で「ネガティブケイパビリティ 」に出会いました。「自分はどこにも属さなくていい、狭間でいることが人生の本質だ」と思えることで「生まれ直した」といいます。
世界で〝モヤモヤする力〟の調査研究が世界で相次いでいるそうです。特に進んでいるのがビジネスの分野で、モヤモヤする力を発揮できる人の特徴や強みの分析が進んでいます。
日本でも同様の研究が始まっています。大阪大学医学系研究科助教大達亮さん。調べているのは入院期間が長い患者に向き合う精神科の看護師たち。「モヤモヤする力のある人」への聞き取りを進めています。すぐに成果が出にくい現場で看護を続ける人はモヤモヤする力があると見込んでいます。
「まずは共感しますね共感かな」・・・「自分一人ではどうしようもないけれど色々悩みながら考えながらしていくうちにどうにかなる」・・・これまでに十一人を調査。モヤモヤする力のある人は人と協働する力や自分を変える力ことのできる柔軟性があることが見え始めています。仲間や相談する人を増やして自分が拡張していく、協働感覚があることで自分が変わっていく。
「ビジネスでも教育でも看護でも・・・「この考え方が幅広い分野に広がっている背景に成果主義への疑問がある」と「モヤモヤする力」の本を書いた小説家の帚木蓬生さん。(待っていました!!)「悩み続けて成果を出していないのはダメだという風潮がずっときていたんじゃないか、あらゆる分野において。これではいけないと感じていた人達がいたということでしょうね」。「モヤモヤする力は混迷の時代にこそ真価を発揮する」という帚木さん。
19世紀初頭、イギリスの詩人キーツが「ネガティブケイパビリティ 」という言葉を家族への手紙に書き残していました。当時ナポレオンが各地に侵攻する戦争の時代。先の見えない中で結核や赤痢なども蔓延していました。
そして再び先の見えない苦難の時代に突入した今。「性急な答えを出さなくていいのだという知恵が出てくる。不確実の中で浮遊していてこそ確かな真実が出てくる」と帚木さん。
海外の最新研究に詳しい枝廣淳子さん。「複雑不透明で先行きが見えない時代だが、一方で、即決断即効率が求められる。この二つは両立しないと、人々が、考えるようになっている。私の勤める大学院は次世代の経営者を育てるが、すぐにちゃんと、ということを、ずっとやってきた人たちが、果たしてこのままでいいのだろうか、と思うようになっている。そんなに急がなくていいんだよ、答えはいつか出すけど急がなくていいんだよ、というメッセージが人々に届いているのだと思う」。
番組ではある実験を行いました。モヤモヤする力を測るテスト〝IU〟の結果、度合いが高い人と低い人でそれぞれチームを作って、グループディスカッションをおこない、議論を心理学の専門家(筑波大学准教授藤桂さん)に分析してもらいました。課題は「社会人の学び直しをどう増やすか?」。話し合い、議論して、全員が納得してくれれば終了です。時間は無制限。休憩やスマホの利用は自由です。
開始直後モヤモヤ力低いチームは枠付けからスタート。一方もやもや力の高いチームは自由に議論を進めます。「週休三日制」という言葉が飛び出します、渡された資料には全くない言葉です。
開始後32分。低いチームの人々が全員がスマホを使って情報を調べている。「真っ先に出てきますね、社会人の学び直しを通信制大学で」という言葉。
およそ1時間。「答え出すんですかね?」「アイデアを出すんです、答えはない」「ちょっと軽食します?飲んだほうがいいかも」モヤモヤ力の高いチームは休憩に入ります。
隣の部屋の結論(モヤモヤ力の低いチーム)は議論が一つのアイデアへとまとまっていきます。「リタイアした高齢者などが現役世代に教える場を作る」という結論。「うまいことまとまったんじゃないですか」。1時間2分。「緻密に議論し、結論に向かって収束的に進んでいったように思います」と藤さん。
一方モヤモヤ力の高いチームでは、考えれば考えるほど・・・「アイデアは出てきません。というまとめかたもありうるんですか?」と藤さんが心配なさる・・・ところが2時間過ぎ・・・ついに星印のつくアイデアが次々と溢れ出します。「給付金に紐付ける・大人の予備校・ポイント制・ふるさと納税的なやり方を」などなど。「新しいアイデアばっかりですね、すごいなあ・・」と藤さん。3時間近くも続いた議論でした。
「もし今回の設定が1時間半で終わるものだったらモヤモヤ力の強いチームの結論は出てきませんでした。効率ばかりを追求しないで議論すること迷うことを楽しんでいくこともこれからの時代、重要になると思います」と藤さん。
「モヤモヤする力には創造性やアイデアを伸ばす力があることが見えてきます。でも時間のプレッシャーはきついから難しい?という意見もあります。」と番組に登場している枝廣さん。現代社会において「より良い答えを出すために答えを保留することで思考停止を陥らないでもっと考えてみようとすること」が大事だといいます。「それには、両輪が必要だということなんです。例えば家事などテキパキしないといけないことはたくさんある。でも人生においてテキパキいかないこともありますよね。恋愛・・・効率良く愛されたいですか?また子育て・仕事でもじっくり時間をかけて取り組む必要があること、この両輪をバランスよくしていくことです」。
九州大学大学院経済学研究院教授高田仁(たかためぐみ)さん、忙しい中精神的に苦しんだ中、午前と午後で真逆の働きかたをすることを選択しました。午前中はモヤモヤタイム(すぐに答えの出ない課題について取り組む)。午後は問題解決タイム(会議やメールに特化し、結論を出すことを重視)。仕分けすることでそれぞれに向き合えるようになたそうです。
この割合をどう考えたらいいでしょうか?「1日で分けるやり方、一年で分けるやり方もある」枝廣さんの主催する「モヤモヤ合宿」に来るひとは数年分のモヤモヤを持ってくる人もいるそうです。モヤモヤ力を伸ばすには、「あえて判断保留〜判断を5分後にしよう(5分ならモヤモヤできる)」「結論後もモヤモヤする〜考えることをやめないでモヤモヤすることを続ける」。
個人でモヤモヤすることが意識できるようになったけれど、組織やチームで時間を取る仕組みを作って行くことが大事になってきます。昭和シェル石油では「ネガティブチーム」を作って「やろうと思っている」ことにあえて反対するチームを作ることによって、議論を深めるという体制を作っているそうです。安心して議論できる風土、いいですね。
環境問題はじめ社会の問題は、短期利益主義、効率主義に陥った結果だと思う。あえて、そうではない、いろいろな考え方の中でモヤモヤすること、すぐに答えを出さないで模索して試行錯誤する態度を大事にすることが、そのような問題を解決する=人類のこれからをよくしていくことに繋がると枝廣さんは考えているといいます。
大人だけが参加する積み木教室があります。全てを自分たちで考え3時間かけて積み上げていく。そして出来上がったのはなんとも巨大なタワーを中心として街並みでした。参加した人たちも想像していなかった作品の出来上がり。モヤモヤの中から爽快感を得たと参加者。
モヤモヤする力〜ネガティブケイパビリティ、この考え方を本当の意味で自分の中に取り入れることは、結構難しいことだと感じています。一方で私みたいに歳を経てくると、「やむを得ず」モヤモヤするほかないことが、結構多く出てきます。モヤモヤの中で生きています。そういう自分を非効率、とかダメだとか感じてしまうことも多くありますが、この考え方に触れることで安心できます。安心して、同じことの繰り返し・・・ということも多々あるのですが、その中で少しずつ何かが変わってくることも確かだなあと感じています。まずはこの本を読むことをお勧めします!
https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=18977
2023年9月7日。雨の予報でしたが、私は雨にあわないまま綺麗な夕焼けを見ました。
番組後「広がる女性のひきこもり、孤立をどう防ぐのか(4月19日放送)」についての訂正、お詫びの言葉がありました。過去に引きこもりを経験した女性について「働きたいと思ってもその一歩が踏み出せていません」と伝えたけれど、その女性は放送当時企業などに就職して働きたいという意向は持っていませんでした。「仕事をしていない自分を肯定しようと掃除だけで1日6時間を費やしていました」と伝えたけれど、実際は掃除だけでなく掃除を含めた家事を過去に1日6時間行なっていました。事実と異なる報道を行ったことで、女性がひきこもりから脱しているのにも関わらず、現在でもひきこもりであるかのように伝わった可能性があったとおもいます。とお詫びの言葉がありました。
「モヤモヤする力」を重視する態度の欠如がこのような結果を生んだんだろう・・・なんて言うのは簡単ですが、誰もが「働きたいと思うことがいい」とか「ひきこもりは困ったこと」とかの「常識」に囚われやすいものですね。「ネガティブケイパビリティ 」思考はそう言う常識から私たちを解放してくれるものですね。鍛錬が必要です。