2022年めでたいことやらコロナ騒ぎやらいろいろなことがあって、落ち着かないまま半年がすぎました。退職して、少し時間ができたので撮りためていたテレビ番組を見たりしました。その中の一つ、BS世界のドキュメンタリー「アレルギー警報!免疫システムを防げ」(原題:Allergy Alert:Paranoia in Our Immune System フランス 2021年)を紹介します。
https://www.nhk.jp/p/wdoc/ts/88Z7X45XZY/episode/te/LRZ9RGWMR6/
我が家でも、花粉症やアトピー性皮膚炎や蓄膿症などというアレルギー症状に悩んできた経緯があります。今も完治というわけにはいきませんが、摂取する小麦粉の量を減らしたり、洗剤を少なくしたり、シャンプーリンスをほぼ無しにしたり、という中で少しずつ症状が軽減してきました。
花粉症については日本独自のもの、という風に思わされていたのですが、以前ここでも書いたようにイギリスに牧草病というものがあるということを「ためしてガッテン」によって知り、イギリス流の、ワセリンを鼻に塗り込むやり方で辛い鼻水くしゃみ症状が大幅に軽減した経験があります。
さて、この番組は2022年4月26日に放映されたものです。番組ではまず、2011年11月、オーストラリアのメルボルン西部の牧草地で強い北風が吹き花粉が飛び散り、喘息で救急搬送された人が爆発的に増え(8800人)10人の方が亡くなった、という出来事が紹介されました。このとき、欧米や中東で同じようなこと(無害なはずの花粉で人々が死にかけるということ)が起きていることも明らかになりました。
1810年ロンドンで花粉症の症状が報告されています。この症状は1960年代に急増し、人口の30%の人に症状が起こるようになったといいます。
私たちホモ・サピエンスはアフリカを出てヨーロッパなどに移動する中でネアンデルタール人と交配したことがわかっています。今のヨーロッパ・アジア人のゲノムにはネアンデルタール人のものがありそのうちの三種のゲノムが特定のアレルギー疾患と関係があるのだそうです。
ベルギーの若い研究者たちによると、アレルギーは生き物を様々な毒から守るためのシステムだといいます。少量の蜂の毒を注射したマウスのうちアレルギー反応を起こしたものにその次に致死量の蜂の毒を注射すると生き残ったといいいます。いきなり初めて致死量の鉢の毒を注射されたマウスは当然皆死んでしまいました。アレルギー反応とは免疫システムが警報を発しており、この反応により、生物はたくさんの抗体を作り出した命を守っている、ということなんだそうです。
ところが太古人を守ったこのシステムが、近年暴走するようになり、アレルギー反応によりアナフィラキシーショックを起こして最悪の場合死に至るようになってしまったのです。スイスの温泉療養地ダボスにあるアレルギー研究の拠点の研究者たちによると、1960年以後住環境が大きく変化したことがこの暴走の原因だといいます。化学物質を使った洗剤の普及により、きちんとすすがれなかった洗剤が体内に入り、細胞の壁を破壊し、免疫システムが大混乱に陥った、というのです。
アメリカ・日本・スペインなど世界中で「花粉の黙示録」と言われる状況が生じました。工場などから排出されるススの粒子と、花粉がひっつくことで、細胞に炎症を起こす物質が生じるということもわかってきています。
一方で150年以上前の暮らしを続けているアーミッシュの村の人々の協力を得た研究の結果、家畜小屋を家の近くに持つアーミッシュの人々にはアレルギーがとても少ない、ということがわかりました。(ミュンヘン〜45%、アーミッシュ〜7%)
牛や馬を飼う小屋のすぐ近くに棲家のあるアーミッシュの人々は多様な微生物に囲まれた生活をしており、これを「農場効果」と呼んでいます。スイスで農場で育った子を16年間調査した結果、1歳6歳14歳16歳の検査でアレルギーが見られなかった。この秘密はアーミッシュ同様家畜小屋にあったのです。
近年、炎症反応を防ぐシアル酸があるとアレルギー体質がないのではなく、あっても症状が出ないという発見がありました。この考え方から免疫療法が生まれました。アレルゲンを経口から少量ずつ入れていくことで免疫システムを少しずつ変えるというものです。またアメリカでは炎症を未然に防ぐ新薬が発見され、効果をあげているといいます。
イギリスでは、これまでアレル源との接触を避ける、というやり方で対処していましたが、今は生後早くからアレル源を与えた方が良いのかもしれない、小さいうちに免疫システムを作るという考え方が主流になりつつあります。
また、都市の設計を考え直し、大量に花粉が出ないようにする(例えば雌の株を植えるなど)、や、洗剤や体に有害な物質を野放しにしない、などの対策も必要であり、今こそ行動を起こさなければ、2050年には全人口の半分以上がアレルギーを発症するようになる、と警告を発して番組は終わります。
改めて、不要な洗剤の多用や、清潔すぎる環境づくりが恐ろしい結果に結びつくということを実感した番組でした。最新のアレルギーに対する知見も散りばめられていました。本当に健康的な生活とは何か、よく考えていきたいと思いました。
2022年7月27日・・・ 今日、ローマ法皇がカナダを訪問し、先住民同化政策のためにカトリック教会が運営していた寄宿学校で、子どもたちへの虐待が日常化しており、死に至る子どもたちもいたことに対して、先住民の人たちに謝罪したというニュースが報じられました。https://www.bbc.com/japanese/6230
私は「アンという名の少女」でその事実を知り、まなびもんで取り上げましたが、当時の子どもたちで生き残った人々にローマ法皇が直接謝罪したことは大きな出来事でよかったと素直に思います。