自分と向き合う技術

兄と奏でるノクターン〜発達障がい 家族の情景(ドキュランドへようこそ)

「セルフポートレイト〜拒食症を生きる」を見てから金曜午後10時NHK「ドキュランドへようこそ」から目が離せなくなりました。https://www.nhk.jp/p/docland/ts/KZGVPVRXZN/

前回11月13日(金)の放送は「兄と奏でるノクターン〜発達障がい 家族の情景」。舞台は韓国です。

ウン家の兄・ソンホは音楽家として活躍していますが、自閉的で、常に母がつききりです。髭を剃るのも自分ではできず、電車の中では、興味のあるところへどんどん行き、周りから顰蹙を買い、母はクタクタになります。

弟・コンギも、音楽が好きですが、音楽学校への入試に失敗してしまいました。コンギは、母がいつもいつも兄もつききりで、兄ばかりを大事にすることに疎外感を感じています。母はどちらも大事にしてしているつもりなのですが、コンギにはそうは思えません。「兄と交代できたらいい、障がいを持っている方が楽に生きられる」とコンギは思います。

父はすでに家族から逃げ、母は一人で二人を育てています。ソンホのことを一生支える気持ちを持っている母にとって同じような子どもを抱える友人たちとの交流は何ものにも代え難いものです。皆「自分が死んだら子どもはどうなるのか」という気持ちに苛まれています。

ショパンの「ノクターン嬰ホ短調」を弾くコンギとソンホ。コンギは家で、ソンホは音楽界で。コンギは荒れます。「兄の代わりに僕にお金をかけてくれていたらきっと僕は成功していた」と母を恨みます。母は兄の面倒を弟に見て欲しいと願います。母から嫌われていると思っていたコンギは、そうではないと母の気持ちを理解しながらも、家族に素直に接することができません。

家を出て暮らし始めたコンギは、「どうせわからない」と兄との会話を拒絶し、「兄のため」を強要する母に苛立ち、「家族を捨てた父のように自分は自分の人生を生きたい」と語ります。

母は嘆きます。その嘆きに追い討ちをかけるように母の姉が亡くなります。そのことがよくわからない兄のことを「母さんが死んでもこうだよ」という弟。母は弟に「だからあなたが必要なのよ」と言います。

演奏会で活躍する兄のことを「兄が自分の人生を生きているのかはわからない」と弟は言います。兄の音楽に賭ける母に弟は「僕は乗りません」。兄のために生きろと言われ続けた弟はとても辛いと思います。彼は「投資する価値があるなら乗ります」と悪ぶるのです。

ロシアへの演奏旅行、初めて母のいない旅行、弟は兄に付き添います。母のようには接しない、ちょっと乱暴な弟に、兄は考え、その言動は変化していきます。髭剃りも自分でできるようになります。そして演奏会の最後、兄のオーボエに合わせてピアノを弾いたコンギは「兄と初めて本物の会話ができたと感じた。初めてコミュニケーションができた、まるでおしゃべりしているように感じた。僕についてこい、と言われているような気がして胸がジーンとした」と語ります。

この作品も無駄な語りは一切なく、コンギの血を吐くような言葉が中心となって進められていきます。アンコールの拍手に包まれた兄弟の姿で番組は終わります。ソンホとコンギ、そして二人のオンマに幸多かれと祈ります。

2020/霜月19日(木)

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たつこ
たつこ
今でも手元にある「長くつ下のピッピ」「やかまし村のこどもたち」が読書体験の原点。「ギャ〜!」と叫ぶほかない失敗をたび重ねて今に至ります。心理し(士・師〜〜この二つの「し」の違いは何だろう?)です(臨床心理士・公認心理師)。喜びも多かった教員経験の中、一方で、えも言えぬ息苦しさも感じ、心理しの資格をとって、今は相談活動を行なっています。
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