自分と向き合う技術

貧困の連鎖を断て〜大阪府立西成高校の挑戦・逆転劇〜逆転人生(NHK)

本日のNHK「逆転人生」、大阪府立西成高校が登場しました。https://www.nhk.jp/p/gyakuten-j/ts/JYL878GRKG/

2012年の中退は92人を超えた荒れた学校でした。その学校が就職率100%の学校に変身するまでの軌跡が、当時赴任した山田教頭先生の語りを通して描かれていきます。

堀田賢(すぐる)君が登場。小さい時から育児放棄されて上本町駅近くのステージやステージ前のベンチで寝ていた。辛くなることが多くて、みんなと顔を合わせたくない、将来なんかなかった。

担任の先生が家庭訪問して初めて、母はすでに家におらず彼が一人で暮らしていること、がわかりました。先生たちが学校に来ない生徒たちの家庭訪問をし、生徒たちの生活の実態を把握すればするほど、先生たちは無力感を持ちます。貧困問題をなんとかしないと、結局は貧困の再生産が起きるだけだ。経済だけではなく人間関係の貧困が彼らを蝕んでいる。

例えば、親が精神疾患でダウンして、誰に頼ることもできない時、子どもが家事全般を受け持たなければならない・・・そういうことが家庭訪問でわかれば、その生徒が遅刻して学校に来た時にかける声が変わる。「なんで遅刻したんや」から「ようきたね」。

そして先生方の話し合いの中で、ある先生から「反貧困学習」というアイデアが浮かび、採用されます。『生徒たちは「貧困」の意味を知らない、だから「虐待」「不当解雇」されてもそれが悪いことだと彼らは思わない。「貧困」に対峙する学習が必要なのだ。』

例えば、具体的に、実際のケースを元に「不当解雇」について教えることをしました。『真面目に働いていたが、ある日風邪をひいてしまって、休みをとったら、その穴埋めに別の日に来てくれと言われ、「行けません」と言ったら、「もういい」と解雇された。職場に駆けつけると「わしが決めたことや、はよ帰れ!」と言われます。』どうする?〜〜〜生徒たちは「バイトやからしゃあないわ」「結局は泣き寝入りやね」という反応。〜〜〜ノンノン、「労働基準署に相談したらいい」というのが正解です。

『相談したら、「それは不当解雇です。30日前に予告しないで解雇した場合、30日分の給料を払わないといけないから、請求できます。」という返事が来て、請求したら実際に支払われた。』実際に西成高校の生徒の体験です。そんな先輩たちの体験を基にした授業を通じて生徒たちは色々なことを考え学びます。授業にそっぽを向いていた生徒たちが変わっていきます。

担任のカツコ先生の声かけにより、堀田賢君は学校に通うようになりましたが、なんと親は彼を捨ててどこかに引っ越してしまいます。その時先生方は、彼が学校に通えない遠い施設に入らなくて良いように、市役所と掛け合い、生活保護を受け一人暮らしできるようにします。カツコ先生は、毎朝堀田君を起こしに行き、朝ごはんを届けました。

反貧困学習のテーマは、「ネットカフェ難民、ワーキングプア、貧困ビジネス、日雇い派遣、シングルマザーファミリー」などです。取り上げた話題に関連して、必ず当事者がいる、その当事者から周りが学ぶことになるのです。当事者がいるから避けるのではなく当事者がいるからこそ向き合うのです。

山田先生は『「福祉政策」はあるけれど、まず「申請」ありき、なので、「申請」ができないことが大きな問題だ。』とおっしゃいます。

上田円(まどか)さん。高校2年生の時に出産し、シングルマザーとして、親に頼らず娘を育てながら頑張って学校に通っていました(親から育児放棄されていたからです)が、「先のことは全く考えることができなかった」と言います。そんな彼女は、学校で受けた「反貧困学習」がきっかけで変わって行きます。

母子家庭の平均収入は283万円・・・様々な困難が実際にある・・・誰も助けてくれない?「違うよ」・・・授業では、その支援政策を自分たちで調べて学んで行きます。就きたい仕事や、やりたいことを考え、人生の設計図を作っていきます。そんな授業を受けて「困ったら役所を頼っていいいんや」「助けてくれる人は必ずいる」と確信する。そんな気持ちが、彼ら彼女らの将来を明るく照らし始めます。

貧困の連鎖を断ち切るためには、良い就職先に繋ぐことが大事だと、先生たちは就職活動にも力を入れます。シングルマザーになり就職を諦めていた上田さんを、先生たちはいろんな会社に連れて行きました。そこで色々な人と出会って、彼女の気持ちは変わって行きます。彼女は先生たちに、子育てをサポートしてくれる施設にも連れて行ってもらいました。

その年99人の就職希望者に次々と内定が決まって行きます。上田さんも希望する介護施設への就職を決めました。全員が就職を決めて西成高校を卒業して行きました。その後も就職100%が続きます。

『「ここから先はあなたの力で生きなさいね」と放り出すのは簡単なのです、でも「伴走することは大事なのです」』と山田先生はおっしゃいます。ゲストの前田さんは「彼らに、起業の仕方を授業で教えたい」と言います。「行っていいですか?」『もちろん』

27歳、堀田賢(すぐる)君は建築資材を扱う会社で正社員として働く傍ら、バンドのボーカルをして、人生を目一杯楽しんでいる。同じく27歳、上田円さんは小学生になった娘さんと笑いの絶えない毎日を送りながら、心理カウンセラーの勉強をしている。

西成高校では今も様々な改革が進んでいます。「邪険にされるとかそういうことはない」「皆平等にしてくれる」という生徒の言葉が嬉しいです。

とてもよく構成された番組だったと思います。世の中は困難に満ちているけれど、善意にも満ちている、ということが伝わってきました。

一方で割り切れない気持ちも残りました。

大阪府では教育庁がこういう取り組みを積極的にバックアップしていることも事実です。「進学・スポーツ・超一流」一辺倒に校名を上げることに躍起になり、辛い思いをしている生徒を切り捨てる方向に傾く学校がある中で、大阪府の公立高校では「生徒たちの気持ちを大切にする」という方向を何より大事にしている先生たちが沢山いることも事実です。

一方で、例えばこの西成高校の取り組み、あまりにも先生方へ負担が重くのしかかっており、辛い気持ちになっていた先生もいるに違いない、と簡単に想像できます。同じように、小学校や中学校で、生徒が育児放棄されていることが見えても、そこに丁寧に関わることのできない現場の状況があります。教育にもっと予算を!と強く願います。

2020/1/25(月) 穏やかな一日でした。梅の花も随分ほころんできています。

ABOUT ME
たつこ
たつこ
今でも手元にある「長くつ下のピッピ」「やかまし村のこどもたち」が読書体験の原点。「ギャ〜!」と叫ぶほかない失敗をたび重ねて今に至ります。心理し(士・師〜〜この二つの「し」の違いは何だろう?)です(臨床心理士・公認心理師)。喜びも多かった教員経験の中、一方で、えも言えぬ息苦しさも感じ、心理しの資格をとって、今は相談活動を行なっています。
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