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逆転人生・日本初のセクハラ裁判が教えてくれる15のこと〜とアンという名の少女

今日は、NHK逆転人生「日本初のセクハラ裁判が教えてくれる15のこと」https://www.nhk.jp/p/gyakuten-j/ts/JYL878GRKG/

に目が止まりました。セクハラ、受けたことのある女性は多いと思います。私にも経験があります。でも声を上げるのはとても難しいこと。嫌な思いを封印してなかったことにして、そして、歳を経て、声を上げる女性に対して偏見の目を向けたことさえ、恥ずかしながら、ありました。

福岡県の出版社でライターをしていた春野まゆみさん。編集長は家庭第一定刻には帰る男。彼の3分の1の給料でしたが、春野さんは猛烈に働きました。専務はそんな彼女を高く評価し「給料をあげてやろう」と言ってくれるようになりました。

しかし彼女は子宮筋腫で入院を余儀なくされます。編集長に報告したとき「ゆっくり休め」の言葉の次の瞬間、編集長は彼女の目前で上司に電話をかけ、こう言いました。「あれですあれ、女のあれ、あっちの病気。まあ夜がお盛んだからあっちが疲れちゃったというか・・・」。衝撃を受け信じがたい状況に彼女は何も言えなくなってしまいました。

無事手術が終わり復職すると、春野さんは「〇〇さんと不倫しているって本当ですか?編集長が言っていました」「〇〇課長とできてるってほんとうですか?編集長が言っていました」「デザイナーの〇〇とできてるって本当ですか?編集長が言っていました」とあちらこちらから砲弾を浴びます。

そして編集長に呼び出された春野さん。「正直言って君は色々と男女関係が派手で会社に迷惑をかけている」と言われます。「ありもしないことを言われたら迷惑です」という彼女に対して「不倫の経験があるよね、他人には言われたくないだろう。」彼女が取引先の妻子持ちの男と男女の関係にあったことを樋口は知っていたのです。なぜ知っているのか・・・しかし彼女は「それで私が辞めると思っているのですか?過去の古傷に土足で入り込み脅しをかける。あなたがどれだけ卑劣な顔をしているか、恥ずかしいと思わないの?」と反論、専務に訴えました。「話をする」と言った専務でしたが、その後彼女は専務から「明日から会社にこなくていい。女は仕事を辞めても結婚がある。男はそうはいかない。君は仕事は優秀だが、男を立てることを学びなさい。これは会社の決定だ。」と言われたのです。

反論し、負けない、と言える春野さんを「カッコいい」とSHELLY。

15のこと⑴「セクハラ上司は家庭を大切にする温厚で柔和な男、子育てを協力する男。ただ悪い男ではない。」15のこと⑵「誰でも加害者になる可能性がある。」15のこと⑶「セクハラしやすい人=共感力が欠如し、伝統的な性別の役割分担を信じている、権威主義、そして周囲がセクハラを許す風土がある時にセクハラが起こる。」15のこと⑷「セクハラに対して笑わない、セクハラ上司をスベらせる。」15のこと⑸「あなたのリアクションで職場環境は変えられる。」15のこと⑹「男はこうでなければいけない、という、男らしさ、に男もまた苦しめられている」

春野さんは裁判所に相談することにしました。当時「セクハラ」という言葉もなかった中、諦めかけた春野さんは「最後」と思って1989年1月法律事務所に相談します。弁護士の辻本育子さん、立場の弱い女性のための法律事務所を立ち上げたばかりでした。「女であることを理由にあなたを切ったことは会社があなたを性差別したことになる。だから会社を使用者責任で訴えるの。」民法には女性差別に関する法律がなく、日本国憲法第14条「全ての国民は性別により差別されない」のみが根拠でした。日本国憲法違反に問うたのです。

前代未聞の裁判をメディアも大きく報道しました。1989年福岡地方裁判所初公判には傍聴人が列を作りました。

法廷で、自分の言った言葉に対して「そんなことは言っていない」とシラを切る編集長。そして「何時までどれくらいの酒の量を何回飲みに行っていたか?」としつこく春野さんに聞いてくる弁護士は「お酒を女性が飲むことを世間的に恥ずかしいと思いませんか?」と問いただします。「思っていません。」と答える彼女を、「だらしなく信用できない」と印象付ける作戦です。また一部のメディアは「バカめその前に自分の顔をみよ」「女は被害者ヅラするな」と批判を浴びせかけ、容赦なく攻撃してきました。裁判長も年配の男性、男性優位の日本社会で女性が声を上げる難しさを感じたと言います。

しかし元アルバイトの女子学生たちが勇気を持って証言しました。「『春野さんてスポーツ新聞の大野記者と不倫しているの知ってる?編集長がそう言っている。』と聞きました。」「編集長が自分のコーヒーカップを春野さんの机の上に上に置きかけたとき『おっと』と置くのをやめ『卵巣腫瘍で入院しているあいつの病気の原因は男遊び、汚い女なんだ』と言いました。」

さらに、多くの女性たちが声をあげました。自分も被害にあったのだ、と。「9年間性的な中傷を車内で受けてきた」「社員旅行中に裸を覗かれ言いふらされた」「娘が上司から暴行を受けた」・・・春野さんの裁判を支援する会が作られ女性たちが集まりました。春野さんは「みんなが我慢しているんだ。だからこそ私は声をあげなきゃ」と思います。

しかし、編集長の親しい友人松永の証言「安岡さんとの不倫とのことも聞かされていました。絶対に彼の奧さんに渡さないと言っていました」によって法廷の雰囲気は変わり、春野さんは奈落の底に突き落とされます。酒に酔った彼女を介抱するといって家に上がり込もうと、卑劣な松永がした時彼女は「やめて、私安岡さんと付き合っているのです」と言ってしまったのです。松永は、法廷で話を誇張し春野さんを「ふしだらな女だ」と言いたてました。衆人環視の中で性的暴行を受けているような痛みと怒りを感じ、松永をビンタしてしまった春野さんは逆に略式起訴され、さしもの弁護団も負けを覚悟したといいます。

15のこと⑺「性的な噂はNG、本当か嘘は関係ない。」15のこと⑻ 「あまりに攻撃されると被害者は自分が悪いと思ってしまう。」15のこと⑼「やる方が悪い。やられる方は悪くない。」15のこと⑽・・・すいません見逃した・・・15のこと(11)「立場のあるところに女性がいない。ジェンダーギャップ120位/156カ国の日本。」

1992年4月判決がおりました。川本隆裁判長「被告は、原告に対して連帯して165万円を支払え。」勝訴でした。「働く女性にとって異性関係や性的関係を巡る私生活上の性向についての噂や悪評を流布されることはその職場において異端児され、その職場において、心情の不安定ひいては勤労意欲の低下をもたらし、原告は生き甲斐を感じて働いていた職場を失ったこと、その違法性は軽視しうるものではなく、原告が被告らの行為により被った精神的苦痛は相当なものであったとうかがえる。」判決文には日本で初めてセクシャラハラスメントという概念が盛り込まれました。「専務らの行為についても男女を平等にとり扱うべきであるにも関わらず、主として女性である原告の譲歩・犠牲において職場関係を調整しようとした点において不法行為性が認められるから、被告会社はこの不法行為についても使用者責任を負うものというべきである。」=会社にもセクハラに対する責任がある。のちの法改正につながる画期的な判決でした。

30年前、判決を出した、現在84歳の川本さん。当時、ご自身の中にも女性に対するステレオタイプの考えがあったと言います。春野さんに対しての「繁華街を飲み歩いていることを恥ずかしいと思いませんか」というような追及に対して「なぜだめなのか」と反論した春野さんに、川本さんは「ハッとした」「男は良くて女はダメなのはちょっと変だなと思った」「それから視点を変えた」と言います。凄い人ですね。川本さんは海外のセクハラの裁判資料を読み込み判決文を書いたと言います。「場合によっては反対の判決をしたかもしれない、今、春野さんを勝たせてよかったなと思います。」と川本さん。

春野さんは感無量。「相手の証人を殴ったことに対して裁判長にお詫びの手紙を書き、背景も書きたいと思ったけれど、それを書いたら私が言い訳していることになってしまうから書かなかった。33年が経って今このビデオを見て本当に感謝しています。」「働く女性の代表としてありがとう」と SHELLYさんが言いました。私も同感です。

15のこと(12)「偏見を指摘されても恥ずかしがらずハッとしていいんだ。」

判決の影響は1997年の男女雇用機会均等法の法改正に大きな影響を与えました。法改正により会社はセクハラ対策を義務付けられました。それでも、去年2021年実施のアンケートで、セクハラ行為を受けた後の行動として、約4割が「何も言えない」と答えています。それが現実です。それでも変化は確実に起きています。

15のこと(13)「セクハラを見逃さず被害者の味方になる」15のこと(14)「言えない空気を変えていこう!」

30年前に比べたら変わってきた。少しずつでも変わっていくために声を上げる、バトンを繋ぐことが大事、そしたら時代は変わっていく、と春野さん。15のこと(15)次のあなたにバトンを渡せば時代はきっと変わっていく」

24日(日)11時から放映された、「アンという名の少女3・7話・正義を信じる行い」で、アンは、「女」は「男」に従属するべきだ、という価値観に反旗を翻しました。やり方を少し誤ったアンに、しかし、友たちは彼女の主張の正しさを支持します。そんな風に、物事の「本筋」を見失わないようにしたいものだと思います。自分自身の中にある囚われを解き放つことが大事ですね。(しかしそんな彼女たちに大きな暴力が振るわれる予感があります。この予感に私たちは怯えてしまいます・・・。)学校評議会の男性メンバーに対して、唯一の女性リンド夫人が反論しようとした時、神父をはじめとする男たちは「ヒステリーをおこすな」とリンド夫人を封じ込め発言させませんでした。「女=ヒステリック」とステレオタイプに決めつけ貶めその一言でねじ伏せようとする男の暴力です。しかし、自分自身の中に「ヒステリック」と言われたくない、という思いが強くあるのも事実です。そんな思いが物事の本質を見失わせてしまうのです。https://www.nhk.jp/p/anne3/ts/L532PR48ZY/

2022年1月24日(月)怯えてはならない・・・春野さんの証言はこちらにもhttps://www2.nhk.or.jp/archives/shogenarchives/postwar/shogen/movie.cgi?das_id=D0001810343_00000

追記 25日(火)日付をはじめ間違いだらけの文章を公開してしまいすいません。m(_ _)m。書き直しました。m(._.)m。

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たつこ
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今でも手元にある「長くつ下のピッピ」「やかまし村のこどもたち」が読書体験の原点。「ギャ〜!」と叫ぶほかない失敗をたび重ねていまに至ります。

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