詩の世界

「ヤカモーチ」いつか世界中で 中西進〜人生の贈り物&古代史で楽しむ万葉集〜

朝日新聞に、中西進さんが〜人生の贈り物〜という連載で語っておられました。楽しい連載でした。丁度「古代史で楽しむ万葉集(角川ソフィア文庫)」https://www.kadokawa.co.jp/product/200910000157/

を買ったところだったので、並行して読みました。

連載の中で印象に残った3編。

1月21日付「魂を乞う 万葉の恋愛と言葉」。中西さんの6畳一間での楽しい新婚生活の話〜〜「恋をして好き合うもの同士はやがて共寝をするようになります」〜〜そして万葉集から共寝を歌う歌を示し、「『恋う』は魂を『乞う』ことであり、二人の魂が合うと共寝をするのです」、そして『心ある生命の交換=性=共寝=結婚』だと美しい歌「淡海の海 沈く白玉知らずして恋せしよりは今こそ益され(琵琶湖の海底に沈む白玉のように知らず=契りを交わさず恋した時より、今こそ恋しさはますことだ)」から導き、「万葉の時代に情の文化はすでに完成をみていたのです」と語っておられます。

2月2日付「『ヤカモーチ』いつか世界中で」では、愛すべき「家持」について。中西さんは、富山県立高志の国文学館館長として「海外の人からも『ヤカモーチ』と親しまれるようにしなければ」と呼びかけ、「大伴家持文学賞(ヤカモチメダル)」が実現しました。2018年第1回の受賞者は北アイルランド出身のマイケル・ロングリーさん。戦争の痛ましさへの感覚をたたえた作品で知られる詩人だそうです。

2月5日付「次はモラル研究 120歳までの課題」。91歳の中西さんは今でも京都市図書館に週一回、富山県立高志の国文学館に週二回通勤しているそうです。この先30年間で研究するテーマを考えておられるそうです。1945年の敗戦を機に始まったのが「『モラル』が問われる時代=個人がそれぞれの規律をもって個性を発揮する時代」だと考えておられます。特にモラルに基づく経済の可能性、特に贈与・交換による経済について考えたいとおっしゃっておられます。

今「資本主義」への疑問が多く提示されています。中西進さんの思考はどう広がり深まっていくのでしょうか。南太平洋の島々での「マナ」と呼ばれる神秘的な力と、日本の物の怪や物忌みの「もの」が繋がるという視点から進んでいくようです。楽しみです。

「古代史で楽しむ万葉集」も勿論絶品でした。万葉集全般についての入門書としておすすめです。

この本の、「十一 無名の人々の歌」の終わりに、無名の人々の歌にあらわされた「真実の人間としてのあり方にもっとも感動したのが大伴家持であった。おそらく巻十四という一巻を作り上げたのも、防人の歌を記しとどめたのも、家持であったと思われる。」とあります。「ヤカモーチ」最高!「ススムッチ」最高!

2021.如月8日(旧暦12月27日)月は細く小さくなっていきます。

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たつこ
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今でも手元にある「長くつ下のピッピ」「やかまし村のこどもたち」が読書体験の原点。「ギャ〜!」と叫ぶほかない失敗をたび重ねていまに至ります。

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