詩の世界

大雨の七夕〜雨がやみ精霊流し

今年の新暦7月7日、長い長い梅雨の中、「新暦の七夕は晴れないことが多いし仕方ないね」と言っていたのですが、旧暦7月7日の昨夜も、日本中が大雨の中に包まれ、残念ながら、織姫星ベガも彦星アルタイルも、月も見ることはかないませんでした。

754(天平勝宝6)年の七夕(なぬかのよ)、大伴家持は本来は七夕の宴席で作る和歌を「独り天漢(あまのかわ)を仰ぎて」、8首作りました。その8首め。

青波に 袖さへ濡れて 漕ぐ船の かし降る程に さ夜更けなむか 巻二十 4313

青波を受け、袖まで濡らして漕ぎ渡った船をつなぐ杭を水中に振り下ろして打ち立てている間に、夜は更けてしまうだろうか。

都に戻ってから4年後、家持は卯月に兵部少輔(ひょうぶしょうゆう=つわもののつかさの次官)となりました。親しい人々との宴の機会を持つ一方で独詠も多くのこしています。

「万葉集事典(講談社文庫)」によると、この年「国司ら不正多く百姓困窮し、正倉に米なし。よって収穫の如何を問わず田租を免ず」とあります。家持は11月には巡察使(山陰道使)としてして任にあたります。次の年には、難波(なにわ)で防人の検校(けんぎょう=とりしまり)・監督を行ない、防人たちの歌に触れることとなり、その歌を収集し、防人を想う歌を歌いました。七夕独詠の8首の後、家持の独詠が7首載せられた後、万葉集巻二十には防人の歌が連なることとなります。

今、コロナ禍、様々な不正・政治の闇、に私たちは翻弄され憤りを持っていますが、この時代も同じだったのだ、と感じます。家持は、超エリートの支配者側の人間ではありましたが、辛い思いを抱えた庶民の側に心を寄せる感性の持ち主であったことがその歌からよくわかり、彼の心の揺れは強く私の印象に残ります。

 

旧七夕の翌日、2021年8月15日、恒例の精霊流しに近くの川に行きました。大雨が続く中、ぽっかりと雨が止み涼しい風の吹く心地よい夕方でした。精霊流しに訪れる人、トランペットを吹いている人、犬の散歩をしている人、のんびりと河原にたたづんで語らう人、人々が行き交う中、控えめに作った精霊舟が流れていきます。

私たちは茄子の馬を川の方に向けて、線香を焚き、精霊にこれからの平穏を祈りました。

空には美しい雲が・・

秋風の 吹きたたよはす 白雲は 織女(たなばたつめ)の 天つ領布(ひれ)かも 

万葉集巻10 2041 読み人知らず

秋風が 吹き漂わせる 白い雲は 織姫の首にかける長い布のようだなあ。

 

2021・8・15 旧七夕の次の日、美しい月が見えました。そして七夕についての美しい文章も読みました。「つきのみやこ」さん。素敵です。https://seminohazuki.hatenablog.com/entry/2021/08/13/%E6%98%9F%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%AF%E6%98%8E%E6%97%A5%E9%80%A2%E3%81%88%E3%82%8B%E3%81%A0%E3%82%8D%E3%81%86%E3%81%8B~%E4%B8%83%E5%A4%95%E3%81%AE%E6%AD%8C

https://seminohazuki.hatenablog.com/entry/2021/08/14/%E6%A2%B6%E3%81%AE%E8%91%89%E3%81%AB%E6%9B%B8%E3%81%8F%E9%A1%98%E3%81%84%E4%BA%8B%E3%81%AF~%E4%B8%83%E5%A4%95%E3%81%AE%E6%AD%8C%E3%81%A8%E5%B9%B3%E5%AE%B6%E7%89%A9%E8%AA%9E

 

 

 

 

 

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英語学習・音楽制作・WEBデザイン・体質改善など、色んな『まなび』と『教育』をテーマにnelle*hirbel(通称ねるひる)を中心に学びクリエーターチームで情報を発信しています。 YouTubeチャンネルでは、音楽×英語の動画コンテンツと英語レッスンを生配信しています。

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