いつも興味深いヒュマニエンス、今日のテーマは「犬」。見逃せません。
あなたは犬派?猫派?の質問に織田さんは「どっちでもない」という素っ気ない返事。あなたはどちらですか?
行動と脳の関係を研究する麻布大学獣医学部の菊水健史さんが登場。アメリカに留学中、初めて家の中で犬を飼うという生活をするようになって、犬の持つ能力=コミュニケーション力・癒しの力を実感し、どうしてこんな能力があるのか、と、犬を研究するようになったそうです。長い歴史の中で人類が広がって行く時には必ず犬がそこにいた、といいます。
トークパートナーとして山田五郎さんが登場します。彼は犬派。人も犬も群れで生活する、社会を作る、序列を作る、だから人と犬は仲良くなれるのでは、と。でも彼はお利口な犬は飼ったことがない(飼い主に似るもんね)。
イスラエル北部、アイン・マラッハ遺跡。約1万2000年以上前の人とともに埋葬された老婆の骨。これが犬が人の家族の一員であったという最古の貴重な証、おそらく老婆が亡くなった時に犬を一緒に埋葬したのだといいます。この時期、家畜はいません。人と一緒に暮らしていた動物は犬のみです。(10万年〜3万年の間に狼と犬が分化。約3万3000年前のロシアの遺跡からも狼ではない犬科と思われる骨が発掘されたそうです。)
船木孝美さん、73歳。三頭の狩猟犬を従えて、害獣の見回りをしたり、狩りをしたりします。「こちらの言葉が分かっていると思います。ペットではありません。愛犬です。」猟犬が追う獲物は、本来自分が食うためなのに、襲うこともせず、呼ばれたら遠い山の中からちゃんと走って帰ってくる。この能力は遺伝なんだそうです。ちゃんと待つ事ができ、いうことをきく犬を選んで交配する事で、作られていった能力なんだそうです。
犬が固定の飼い主を持つようになったのはここ50年だそうです。渋谷にいる有名な忠犬ハチ公。実は放し飼いされていて、先生が帰ってくる時間になると家を勝手に出て、先生が帰ってくる時間に渋谷に来ていた・・・実は。皆の餌につられて渋谷に来たという説もあります。
犬はどこまで私たちの気持ちを理解しているのか?2016年ハンガリーで行われた実験。犬の耳にヘッドホンを装着し、この状態で10分間以上じっとしていられるように訓練、その犬をfMRIの中で観察します。女性の飼い主が「素晴らしい(フラットに読む)」といった時は左脳を働かせて言葉の意味を理解し、「そのような(意味がない言葉だけれど褒めるような感情で読む)」と時は右脳が働いて喜びを感じます。そして、素晴らしいという言葉に褒める感情を込めた時、脳の両側が反応し、喜びの感情を抱いた時に反応する場所が強く反応します。犬は人から心のこもった言葉をかけられるとそれを一番嬉しいと思う、人のことを理解している最たる動物なのです。
言葉の理解に言語野、感情を読み取る分野と機能が分かれているのは人だけだろう、と言われていましたが、犬も左右の脳を使い分けている事がこの実験でわかったのです。ドイツの実験では犬は400の言葉を理解し、記憶している事が明らかになったそうです。
犬に教えていない言葉を言い、知っているものを九個、知らないものを一個だけ置いておくとその一個を取ってくると言います。びっくり。ダメな社員より〜〜ぎょっとします。犬は変化にすごく敏感で注意深い。犬と喋ることも可能かも・・・織田さんは否定派。癒されるのは話さないから。喋れないほうがお互い幸せ、と山田五郎さんも。先生も喋りたくない派。
菊水さんの実験により、人と犬が見つめ合う時「オキシトシン=母が子を育てる時に分泌されるホルモン=他者との絆を形成するホルモン=ストレスが軽減するホルモン」が分泌される事がわかりました。人と犬が触れ合う事でオキシトシンが人では3倍、犬では2倍に増えたということです。また飼い主のストレスが犬にもストレスと与えるそうです。
犬との絆は「子どもっぽさ」にあるそうです。「ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた」という本では、ネアンデルタール人の遺跡からは犬を飼っている形跡はなく、それがネアンデルタール人が絶滅した原因だという仮説を立てています。ネアンデルタール人の狩猟は力勝負で狩をしており、ホモ・サピエンスは道具や罠を使って動物の心を読んで狩をした。動物の心を想像する事ができ、道具を使った集団を作ったホモ・サピエンスが生き残れたのです。
狼を祖先に持つ犬、ロシアの研究者ドミトリー・べリャーエフは50年以上にわたって実験を続けました。今もその実験は続いています。銀狐の中でとりわけ人を怖がらない個体同士を交配させると人に甘える仕草を見せるようになり、耳が子犬のように垂れる銀狐が登場しました。
ネオテニー=幼形質成熟。犬も人もネオテニーの入った動物なのです。大人のチンパンジーと子どものチンパンジーを比べると子どもの顔は人間に近いものです。人間はネオテニーなのです。
犬は800種類地球上で一番バリエーションの多い動物だそうです。色々なタイプの犬を掛け合わせて作られて来た。この間、犬は人に守られる存在になってきました。人が飼いやすいように小型化していく中で、小さく無理やりしてしまったものって病気は?「病気は多いです。水頭症の確率が高い。」
出かけようとすると、察して玄関に行ったりする犬。人と犬にあってチンパンジーにないものは目の白目です。白目をみると、相手の視線を読む事ができるのです。人が目を瞑ると犬は我慢できない。人が目を開けると犬は上目遣いに「ごめんね」というような顔をします。犬が上目遣いする時に眼輪筋が動くけれどこれは狼にはない、人間と暮らすことで犬が獲得した筋力なのです。
「これは犬の生存戦略では?」という織田さんの妄想。「犬の整形もできちゃうかも」という山田さんの妄想。
犬のクローンまで作っている人がいる。人の医療文化を犬にコピーする。科学はそこまで行っていいのか?どこで歯止めをかけるのか、共通認識を持つことは難しい。人間がコントロールするって人間の尊大さを表している・・・次の未来は原点に立ち返ることから。
菊水さんは、犬の研究を通して、協力する=共同体が人間の根幹だった、という事がわかった、といいます。
今後犬と人間の関係はどう変わっていくのでしょう?
犬をめぐる様々・・・面白かったです。次は猫?いえいえ「潜在能力」です。
2021・10・21(木) 急に11月の気候となりました。今日は初めて毛物を身につけました。羊さんありがとう。ただ、私は犬に洋服を着せている様子は好きになれないなあ。