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本〜あしなが蜂と暮らした夏  甲斐信枝〜

甲斐信枝さんは、1930年広島生まれの90歳。

これまで美しい絵本をたくさん出版してこられました。「たねがとぶ」「ざっそう」「つくし」「たんぽぽ」など、どの絵本も緻密な絵と文で、植物の生態を細かく、わかりやすく表現しておられます。https://www.ehonnavi.net/author.asp?n=746

2020年10月に発行された「あしなが蜂と暮らした夏」では、40年前の夏、あしなが蜂と暮らした彼女の体験が、生き生きと描かれています。表紙、扉をあけて繰り広げられるスケッチも、とても美しく、続けて繰り広げられる文章もまた美しく紡がれていきます。

自家製のたい肥で育てられたきゃべつ畑で、きゃべつの写生をしていた彼女は、うるさく周りを飛び回るあしなが蜂の女王がもんしろ蝶の幼虫狩りにやってくるのに出会います。

迷わず獲物を仕留め、大顎で肉を切り裂き、噛みに噛んで青むしの肉団子を作る女王蜂に、彼女は顔を近づけて観察し、カメラのシャッターを切ります。

そしてまんまるに作り上げた青むしの肉団子を、しっかりと胸にだき込み、あっという間にどこかに消えていった女王蜂がどこに消えたのか、探し回ります。

比叡山麓近くの一軒家の納屋に、あしなが蜂の巣を見つけた彼女は、その家の女主人の「どうぞどうぞなんぼでも」という了解を得て、早朝から日没まで時間の許す限りあしなが蜂を観察し続けます。そのうちにその家の「おかあ」やその家の近くの喫茶店「あなた」の主人と仲良くなり、泊りがけの観察を行うようになります。

産卵、巣作り、餌探し、幼虫の脱皮、あしなが蜂同士の「こぬすび」(幼虫狩り)、襲ってくるすずめ蜂との決死の戦い、雷雨の中で損傷した巣の再生、、、。

彼女は仕事の関係で東京の仕事場にしばらく行かなければならなくなります。なんと彼女はあしなが蜂の巣を東京に持っていくのです!そして、その旅の途中で女王蜂を失った巣を彼女は母となって育てていくのです!

一年が経ち、新しい女王蜂たちが巣立っていった後、彼女は京都の「おかあ」に会いに行きます。

「あとがき」で彼女はこう書いておられます。「蜂と、おかあと、私が、納屋で過ごした一年足らずの日常は、三者を別々にしては語ることのできない、いわば、生きもの同士の日常でありました。」

あしなが蜂の不思議な(蜂にとっては5千万年続けてきた)生態が、「おかあ」と甲斐信枝さんとの交流の中で、明らかになっていく様子が生き生きと語られている素晴らしい文章でした。ぜひお読みください!!

https://www.chuko.co.jp/tanko/2020/10/005343.html

甲斐信枝さんは2016年「足元の小宇宙〜絵本作家・甲斐信枝と見つける生命のドラマ」という番組で紹介されています。現在はDVDが販売されています。私はこの番組を見ましたが、自然と向き合う甲斐さんの姿がよく描かれている佳作でした。

https://www.nhk-ep.com/products/detail/h22330AA

2021.1.22(金)雨の夜。大寒が過ぎ梅の花もほころび始めました。

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たつこ
たつこ
今でも手元にある「長くつ下のピッピ」「やかまし村のこどもたち」が読書体験の原点。「ギャ〜!」と叫ぶほかない失敗をたび重ねて今に至ります。心理し(士・師〜〜この二つの「し」の違いは何だろう?)です(臨床心理士・公認心理師)。喜びも多かった教員経験の中、一方で、えも言えぬ息苦しさも感じ、心理しの資格をとって、今は相談活動を行なっています。
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