自分と向き合う技術

ハートネットTV 「好きを心の支えに」発達障害と共に〜

「好きなことをしていた。それが自信に積み上がった。」

ハートネットTV・MCを務める菊田有祐(すいません祐の編は旧字体になっていましたが恥ずかしながら私は変換できず・・・)さん。魅力的な若者。緊張の面持ちで番組が始まります。

「僕は発達障害です。小さい頃から周りと違うこと、周りが周りが出来ることが僕には出来ないことで良く悩んでいました。ですが、母から、『好きなことを追いかけていいんだよ、出来ないことはあきらめていいんだよ』と言われてから、夢中になって好きなことを追いかけてきました。その結果、教室から飛び出た僕の周りに人が集まるようになっていました。今日は好きなことを夢中で追いかけている人がきらきらした日常を教えてくれることでしょう。それではハートネットTV、スタートです。」

3人の発達障害の若者が登場します。3人に共通すること、どん底を支えてくれたことは「夢中になれる好きなこと」。菊田さん「勉強が好き」。有松さん「好きなことをずっとしてた。それが少しずつ積み重なって自信に結びついた。」渡邊さん「嫌なことがあって作品にすることができるんで、悩みがあるから絵とか作品が濃くなっていく。」

本田秀夫先生(信州大学教授)も登場。「どこにその人が生きていく、活躍していく芽があるかと考えると、得意なこと好きなものからなんですね。そういったことに目を向けることで生きがいや人生の目標を持つことが可能になる。この3人のこれまでの生活と今のあり方が示していると思う。」

有松啓太郎さん24歳、「好きなことはアニメ。機動戦士ガンダムシリーズが大好き、その世界観がすごいです。」模型を前に熱く語る有松さんがガンダムに深くハマっていったのは中学生の頃。辛い思いをして不登校を繰り返していました。無意識に緊張状態が続いちゃったりして、完全に家に引きこもっていた。生活リズムもぐちゃぐちゃで、基本的に自分の部屋の布団の上で横になっている無気力な状態だった。そんな時自宅でガンダムを見てすっかり夢中になったのです。「現実逃避かもしれないがあの時の自分には必要なリラックスタイムだった。」

18歳の時転機を迎えます。東京港区にある発達障害の支援をするNPO法人ネスト・ジャパンへ足を運んだ時、アニメやゲーム好きの人が集う会に参加。ガンダムの話が出来たのです。「外に行けた」「楽しかった」ことが自信となり、「次またいけた」ことが積み重なって、徐々に変わっていきました。「ガンダムなんて無駄、という思いが自分の中にもあったけれど、そうじゃないんだ、という認識が出来て良かったなと思います。」今は、NPO法人でアルバイトをして発達障害の人の支援に関わっています。

「え?自分でいいの?と思いましたが、、自信が積み重なることでなんとかやって行っている。今だとエストジャパンでガンダムの話をできる、あっという間に時間がすぎていく。ガンダムは心の支えにもなっていますし、他にも好きな子が居て、話すことが出来て色々研究しておいてよかったな、と思います。」

渡辺結月さん。絵を書くことが好き。話を振られた時に「ごめんなさい、別のことを考えていた」(笑)。有松さんの「ガンダムを語れる場所」の話と聞いて、「そういう場を作ってくれる機会を設けることって大事なことだと思う。わたしも拠り所があったからこそ今ここにいる。そこがあるからこそ未来へ、人のためや自分のために活躍できる基盤ができていく。」

有松さんは今の仕事について「初めは僕でいいの?と思ったけれど、慣れてきて仕事の量が増えていって、達成感を持ってやっていくことが出来ています。」悩んでいる人に対して有松さんは「僕の中にはどうにかしなきゃという思いはずっとあった。今落ち込んじゃっている人にも絶対あると思うんで、好きなことを中心に体調を戻して進んでいったほうがいいと思います。」菊川さん「辛いときこそ、子どもから好きなことを取りあげないでいてほしいなと僕は思います。」

渡邊結月さん。小学校高学年から不登校の状態、発達障害の特性で空気が読めず辛い思いをしていました。引きこもっていた中学2年生の時、「底が見えるほど落ち込んで一週間ほど部屋に籠り、1・2回死のうと思って夜中に包丁を腹に突き刺そうとするんだけれど、振りかざす瞬間に腹の前で止まってしまう。Tシャツを裂いて終わりていう感じだったんですけど、ただただ苦しんで。」美術科のある高校へ進学したことが転機になりました。灰路(かいろ)という絵が映し出されます。2019年の作。「行かなきゃいけないのに立ち止まってしまった、軽くいうとそんな感じの絵です。」モノトーン、線路?下水路?のような奥行き、天井には雲のような羽のような物体が漂い、手前には頭を抱えてうずくまっている人のような存在、そしてたおやかな花が描かれています。「嫌なことがあっても作品につながる、悩みがあるからこそ作品が濃くなっていく。」絵を描き続けたいという目標を持つことができた彼女は、今は親元を離れて芸術大学在学中、です。

有松さん「死にたいと思ったことは僕もある。解放されて楽になるかと思うけれどそれが出来なくてただただ苦しいだけで、という部分はすごく共感できる。」

今苦しんでいる人に渡邊さんから。「あなたの今やっていることは絶対に間違っていない」「これまで散々だったとしてもしても酷くなったとしても、絶対に先に繋がって行くから、新しい縁や気づきになって太い芯になるから、今の自分を肯定して行ってほしい。自分を諦めないでほしい。わたしは諦めなかったからこそ今があると思っています。」

菊田さん「頑張れない時ってあるし、そういう期間に少しでも支えがあることって大事だなと思う。作品があることで死ぬことから心が変わっていったのかな、と思ってそこが聞きたい。」

渡邊さん「作品はザルみたいなものだから、落ちたものは落ちたなと思って、残ったものを大事にしていく。断捨離みたいなもの、これからやりたいことがザルに残って行くのでそれを大事にして行く。負の感情を仕分けする作業が、ザルにかけていく作業。」

有松さん「それで、何が残った?」

渡邊さん「絵が描きたい。」

有松さん「やっぱりそうか。」

菊田さん「向き合うことで結局好きなことが最後に残る感覚って大切な感覚だなと思う。」

 

発達障がいの専門家、3人の師でもある本田秀夫先生に質問が寄せられています。

親の代表的な願い①「役立つものを好きになってほしい」・・・目の前の好きなものに夢中になることの方が大事、それを何かの利益に結び付けない方がいい。辛い時こそ好きなものを子供から取り上げないでほしい。本当に好きなものに向けてこそエネルギーが出る。

親からの質問②「好きなことを仕事にした方がいい?」・・・仕事にすると好きなものでも締め切りがあったり、本当に好きなことをできない時がある、そういうことを踏まえた上で、趣味にしておくか仕事にするか、楽しいと思える方を選ぶこと。

こどもからの質問「夢中になれるものがありません」

ここで菊田さんのエピソードが登場。菊田さんには夢中になれるものがありませんでした。学校はただ辛い場所。学校へ行きたくない原因には「学習障害」がありました。文字や数字を書くことがとても苦手で毎日が苦痛でした。学校では1〜6限まで「書くことばかり」。「行っても何も楽しくない、自己肯定感がズタボロ、自分に自信が持てず毎日が苦しかった。」劣等感から周りとも上手く接することができなくて、いじめられるようになった。友達に「死ね」って言われて「ついに死ねって言われたよ、いる価値ねえなあ、と思った。」

小学校5年生の時転機が訪れます。キーボードを使えば、書きたいことが簡単に文字にすることが出来ました。たったこれだけのことで大嫌いだった勉強が大好きになりました。「できるようになってからはずっと勉強にハマっていったと思います。」知的好奇心がどんどん広がり、新しいもの、自分で調べて💻づくりやアクセサリー作りに挑戦していった菊田さん。今年4月慶應大学環境情報学部に進学。「自分の中で自分に自信が持てるから周りにも自信を持って接していける。周りの評価もそれに伴って上がって行くから、そういうのを糧にして、起業家になりたいと思っています。結構自信があります。これだけ学ぶものがあればいけるんじゃないかな。」

渡邊さん「自信ありまくりですね」(笑)。「わたしは狭いところでずっと深く掘り下げて行くタイプなので、幅広いところで自信を広げて行くのってすごいなと思います。」

菊田さん「興味があれば学んでいくこと=勉強、それは学校の勉強とか塾の勉強とはは違う」有松さん「僕も同じように受け止めていて、僕も自作PCを作っていきたいと思います。ただ買うのはあんまりよくないんですよね。」菊田さん「そうです!」

本田先生「狭いところに没頭する人もいるし、ある程度やれば次に興味が広がっていく場合もある。とにかく自分の心が満たされていけばそれでいいんです。何でもありなんですよね。本当はね。」

菊田さん「改めて『十人十色』という言葉がぴったりだと思った。」今苦しんでいる人に「今夢中になるものがない人、もう少しだけ、もう少しだけ、辛抱して我慢して。必ず見つかるから。」

彼らの言葉、実感が、今悩んでいる多くの人々に届け!とおもいます。彼らの言葉には普遍性があり、発達障がいであるかどうかはあまり関係ないようにも思います。

7月5日(月)午後1時5分から再放送があります。

https://www.nhk.or.jp/heart-net/program/heart-net/1783/

2021・6・29

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たつこ
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今でも手元にある「長くつ下のピッピ」「やかまし村のこどもたち」が読書体験の原点。「ギャ〜!」と叫ぶほかない失敗をたび重ねていまに至ります。

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