自分と向き合う技術

言葉の使い方「こうある〝べき〟をなくしたら」〜高橋源一郎「飛ぶ教室」より

先週のNHKラジオ「高橋源一郎の飛ぶ教室」の「秘密の本棚」コーナーでは『82年生まれ、キムジヨン』を取り上げていました。男性中心社会の韓国で生まれた女性が傷つき、そこから回復していく過程を書いた本です。 https://www.chikumashobo.co.jp/special/kimjiyoung/

このブログでは映画について取り上げました。

82年生まれ、キム・ジヨン〜と〜桜木紫乃さん〜上野千鶴子さん「82年生まれ、キム・ジヨン」佳い映画でした。偶然見た桜木紫乃さんのインタビュー、この映画と重なる部分がありました。またちょうど読んでいた上野千鶴子さんの本も。 私たちは男女関係なく、皆平等です。考え、思い、口にし、対話することを大切にしていきたいものです。...

今週の「秘密の本棚」コーナーは、1977年ナイジェリア生まれの作家、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ著『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』。 http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309207278/

彼女は、2013年小説『アメリカーナ』で全米批評家協会賞を受賞して、今はアメリカとナイジェリアを行き来しながら活躍しています。2012年12月TED https://www.ted.com/talks?language=ja&page=1でのトークが世界的に話題になった(ビヨンセが歌の中で取り上げたり、ディオールがTシャツを作ったり)そうで、その時のトークに加筆して書かれ発表されたのが、『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』です。アナウンサーの小野文恵さんは「先週の『82年生まれ、キムジヨン』を読んだ時にわいた疑問をこの本がスパッと答えてくれました」と読後の感想を述べています。

社会的なメッセージは「硬くて強くて抵抗を受けて伝わらない」ので「柔らかい表現」で人々に伝わるように彼女は考えてトークしているといいます。「フェミニズム」という言葉に対する人々の「ネガティブ」な表現に出会うたびに、「ハッピーフェミニスト」「ハッピーなアフリカ的フェミニスト」「男嫌いではないハッピーなアフリカ的フェミニスト」「男嫌いではなく、男性のためではなくて自分のためにリップグロスを塗りハイヒールを履く、ハッピーなアフリカ的フェミニスト」になっていったという彼女の言葉の変遷は、「正しいかもしれないけれどうっとおしい」「胡散臭い」と「フェミニスト」という言葉を忌み嫌う世の中をよく表し、人々に伝わるものとなっています。

「女の子がテストで一番をとっても、先生は認めない」キムジヨンと同様の経験を彼女はします。そして、「結婚生活の平安のために、女性が〝敬意〟を行うときは、「仕事やキャリアをあきらめる」時です」と言います(キムジヨンもそうでした)。人間関係ではどちらかというと女性が妥協するものと教えているのです。

ジェンダーについて話し合うのは容易なことではありません。そこにいる人が落ち着かなくなったり居心地が悪くなるからです。現状を変えることは落ち着かないのです。「なんで女性の権利の問題でなく、人間の権利の問題ではないの?」という問いに対して、彼女は「人間であることでなく、具体的に、女という人間であること、によって起こる、個別の体験、だから。」と答えます。

「私のひいおばあさんはフェミニストでした。結婚したくなかった男性の家から逃げ出して、自分の選んだ男性と結婚しました。ひいおばあさんは、フェミニストという言葉を知らなかったが、それは彼女がフェミニストでないということにはなりません。もっと多くの人が、フェミニストという言葉をリフレッシュさせなければいけないのです。〜〜男性であれ女性であれ、ジェンダーについては問題があるから改善しなきゃね、という人がフェミニストでせす。」とあとがきに書かれたこの本について、源一郎さんは、「言葉の使い方をリフレッシュして優しく人々に伝わるようにすることがいいのでは。」と語ります。

わたしも言葉のつかいかたにはできるだけ気をつけようと思います、ついつい、直裁的な言葉遣いになってしまいがちですので。

ふたコマ目は、石川直樹さんがゲストです。1977年東京生まれの写真家。写真集「コロナ」著書「最後の写真家」が代表作。新刊は「地上に星座をつくる」です。https://www.shinchosha.co.jp/book/353691/

石川さんは学校でのワークショップをたくさんなさっているそうで、それがとても楽しい、小学生〜高校生たちに写真を撮ってもらった時の「驚き・幸せ」感は素晴らしかった、また詩人の吉増剛造さんの、ワークショップで子どもたちがみるみる生き生きしてくるという様子がとても面白かった、というエピソードが語られます。また、いつも撮っているフィルムカメラを忘れてしまった、ベトナムでの旅のエピソード。1本のフィルムで10枚しか撮れない、入国時にも検査されてしまうような、不便なカメラで、ズームレンズも使わないことが、「僕の旅の仕方に似合っている」のだそうです。

コロナ禍で旅ができなくなってしまった旅人石川さんは「家の中で未知な風景を探そうと、カメラオブスキュラ=部屋を暗室にして暗箱の中に一点だけ穴を開けるとそこから光が入って内側に映る、その風景を見ること」とか「渋谷でネズミが出ているのでネズミを追いかけて使い捨てカメラで渋谷を撮ること」をしていたそうです。「酎ハイの残りを飲んで酔っ払っているネズミなどのいる渋谷の写真集」が発行されるのが楽しみですね。

今回もとても楽しい時間でした。金曜夜の「飛ぶ教室」、聞き逃しても「らじるらじる」で聞くことができます。お正月には瀬戸内寂聴さんとの対談も聞くことができるようです。https://www4.nhk.or.jp/gentobu/

2020.12.8.真珠湾攻撃の日。ジョンレノンが殺された日。(ねるひるのHappyXmasぜひお聞きください。)

PS)今夜8時から、Eテレ・ハートネットTVで「ひきこもりVR親子対談」があります。ぜひご視聴を!!

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たつこ
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今でも手元にある「長くつ下のピッピ」「やかまし村のこどもたち」が読書体験の原点。「ギャ〜!」と叫ぶほかない失敗をたび重ねていまに至ります。

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